上皇上皇后両陛下の朝の日課「国語の教科書を声に出して読まれる」”音読”健康法を専門家が解説
では、具体的に何をどう読めばいいのだろうか。
「音読するコンテンツは、実は何でもいいんです」
そう語るのは川島さん。
「極端な話、無意味な記号を声に出して読むだけでも脳を活性化することが研究でわかっています。ただし、ポイントは音読を習慣にすることです。読みづらいものや意味のないものは続けるのが難しいので、自分になじんだ本や趣味に合う本を選びましょう」(川島さん)
一方で、上皇陛下が学習院初等科時代の国語の教科書を音読されることは、認知症を予防する観点からも理にかなっているという。
「昔の懐かしいことを思い出して話す心理療法は『回想法』と呼ばれ、ノスタルジックな気分を喚起して脳を活性化する可能性があります。初等科の教科書を音読して子供時代に思いをはせられたり、懐かしい気分になられることは、精神的な安らぎにもつながるはずです」(鈴木さん)
上皇上皇后両陛下のように、一冊の本を交互に音読することも大きな意味を持つ。
「相手がいると、ひとりで読むよりも相手に伝わるように読もうと心がけ、自分の置かれた状況を客観的にとらえるようになります。そうした客観性は、人が社会生活を送るために重要な認知機能です。また、相手がいると声の調子などで互いの健康をチェックできますし、コミュニケーションにもなります。こうした親密な交流が認知症の発症を防ぐという研究もあります。さらに相手がいるから、できるだけ上手に読もうとして話の筋を覚えたり、事前に練習することも脳を効果的に刺激します」(鈴木さん)
いつ、どれだけ読むかもポイントだ。川島さんは「午前中、最低2分」を提唱する。
「多くの人は午前中に脳が最もよく働くので、上皇上皇后両陛下のように朝食後に音読を行うのが理想です。私たちの研究では最低2分行うと効果が出るので、楽しめる範囲で少なくとも2分は行ってほしい」(川島さん)
読み方については、「少し速め」を心がけたい。
「早口で読むと、情報を処理するために脳に大きな負荷がかかり、前頭前野が活性化します。速く行う音読は脳の機能をアップグレードする最適の方法なので、ぜひトライしてみてほしい」(川島さん)
教えてくれた人
川島隆太さん/東北大学加齢医学研究所所長、鈴木宏幸さん/東京都健康長寿医療センター研究所「社会参加と地域保健研究チーム」専門副部長
文/池田道大 取材/進藤大郎、平田淳、三好洋輝、村上力 撮影/平野哲郎
※女性セブン2022年12月8日号
https://josei7.com/