のどを鍛えて病気を防ぐ|『のどピコ体操』で若さをキープ!
加齢とともに外出や人と会う機会が減り、気づけば、声をろくに出していない…。なんてことはありませんか? のどから忍び寄る老化をカンタンに防ぐ方法を教えます───
下記チェックリストで1つでも思い当たる項目があったら、ものを飲み込む「嚥下(えんげ)運動」の機能が低下していたり、声帯筋が萎縮しているかもしれません。そして、それはのどの老化が始まっているサインでもあります。人生最後の日まで口からおいしくものを食べ、声で意思を伝えるために、のどのアンチエイジングに取り組もう。
●のどの老化状態をチェック!
□声がかれてきた
□食事中にむせたり、咳き込んだりするようになった
□以前より声が低くなった
□自分の話したことを、相手からよく聞き返される
□裏声を出せなくなった
□息継ぎせずに声を長く出せない
※ロングトーンで声帯をチェック!
出しやすい高さで「あー」と息継ぎなしで発声する。息が続く長さが、女性は12秒、男性は15秒未満の場合は、声帯が萎縮している可能性がある。
のどが衰えるとどうなるの?
「会社を定年退職した」「友人に会う機会が減った」「家族構成が変わり、話し相手が減った」などの理由で、60才前後から声を出す機会が減る人が増えてくる。「これが、のどの虚弱につながります」と言うのは、声楽家で音痴矯正を行う高牧康さんだ。
「誤嚥性肺炎が日本人の死亡原因の上位に上がるようになったのは、この、のどの虚弱(フレイル)に気づかない人が多いからだと思います。でも、のどの虚弱は歌うことで防ぐことができるのです」(高牧さん・以下同)
→死を招く誤嚥性肺炎を防ぐ のみ込む力を鍛えるトレーニング法
歌は娯楽のイメージが高く、カラオケ好きでもない限り、大きな声を出して歌う機会は年齢が上がるほど少なくなる。10年ほど前に誤嚥性肺炎が増加していることを知った高牧さんは、歌う代わりにのどの虚弱を改善する方法はないかと考え、「のどピコ体操」を考案したという。
「アンチエイジングというと、脳トレや足腰の衰えを防ぐ運動をすべきと思いがちで、のどを鍛えている人はまだ多くありません。声帯の役割について尋ねると、ほとんどの人が声を出すためのものと答えますが、声帯には、食べたものが誤って肺に入り込むのを防ぐという大きな役割もあるのです」
下の図のように、気管の入口にある声帯は2枚の弁になっており、食べ物が通過する際、互いの弁がくっついて、異物の侵入を防ぐ。ところが、老化によりのどが萎縮していると弁と弁の間に隙間ができ、食べ物や細菌が食道ではなく気管から肺に入ってしまい、それが肺炎の原因になる。
「さらに、加齢により、ものを“ごっくん”と飲み込む力が弱まってくることも要因です。嚥下運動の低下は誤嚥でむせる、咳き込むといった症状にも現れます」
裏声や高い声がのどの若さを保つ
のどピコ体操の「のどピコ」は「のどちんこ」のこと。
「正式名は口蓋垂(こうがいすい)といい、通称・喉彦(のどひこ)とも呼ばれることから、のどピコと命名しました。ここを動かしたり、声帯を伸び縮みさせたりする運動です」
声帯は目視できないが、のどピコが動く時に声帯も動くため、ここを動かせばいいのだが…。
「のどピコは普通にしゃべっている時は、ほとんど動きません。ですが、裏声のような高い声を出すと動きます。そして声帯が伸びたり縮んだりすることで、声帯筋やその周辺が柔軟になるのです」
のどピコの動き
◆地声の時
のどピコはほとんど動かず、ぶらさがったまま。この時、声帯は縮んでいる。
◆裏声の時
のどピコが緊張して、うしろにそり返っている。この時、声帯は長く伸びている。
以下で紹介する基本ののどピコ体操から、すぐに始めて声帯を鍛えよう!
今すぐチャレンジ! のどを鍛える「のどピコ体操」
●『早口ことば』 声帯の伸び縮みと鼻腔(びくう)閉鎖運動
下の言葉を地声で早口で読む。次に、裏声で早口で読んでみよう。
●『読しょう』 腹式呼吸を身につけ、のど、口、表情などの筋肉を鍛える運動
次の10個の元号を、歌うようにひと息でリズミカルに読んでみよう。
●『ロングストーン』 声門の閉鎖筋を鍛える運動
下に挙げた“いちご”の銘柄を声高らかにひと息で、できるだけ長く伸ばして発音しよう(銘柄1つずつでOK)
●『笑い声』 声帯の伸び縮みと声門の閉鎖筋を鍛える運動
下の笑い声を、裏声で文字の大きさ通り、強弱をつけて読んでみよう。
うひっひっひっひっ、
いへっへっへっへっへっ
イヤ~ン、いはっはっはっ、
ヤダ~はっはっ、ヤメテ~
うほっ、うほっ、
うほっほっほっほっ
●舌打ち、舌鼓(したつづみ)で三三七拍子
舌打ちは舌の先端を上の前歯のすぐ裏側に押しつけるようにくっつけ、その舌先を吸うように弾く。舌鼓は舌の先端を前歯の裏側のさらに奥の上あごに巻き込むようにくっつけ、舌先を吸うように弾く。それぞれの方法で下の三三七拍子に挑戦しよう。
・舌打ち
・舌鼓
教えてくれた人
高牧康さん/声楽家。国立音楽大学音楽学部声楽学科卒業後、信州大学教育学部音楽科にて音声生理、発声指導法を研究し、音痴矯正、吃音矯正などのメソッドを開発。また、東京ベルズの理事長として「のどピコ体操」コンサートなどを通じ、声帯を鍛えることの大切さを伝えている。
イラスト /あきばさやか
参考資料/『60歳からはじめる「のどピコ体操」』PHP研究所)
※女性セブン2019年9月12日号