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離婚寸前の夫婦がまさかの復縁?「孫がかすがいになった」実例に専門家がアドバイス

「どうせあの人は、いまさら何を言っても変わらない」。そう思い込んで、夫婦関係の改善を諦めていませんか?「夫婦間の亀裂を修復するには、試練事件が必要です」とは夫婦関係コンサルタントの川崎貴子さん。そのセオリーを実証するリアルエピソードを紹介する。

【エピソード1】「週末婚」で程よい距離感に

 私たち夫婦は、お互いが28才のときに結婚しました。新婚のときは記念日のサプライズを欠かさないなど、夫は常に私を気遣ってくれましたが、1年後に息子が生まれてからは、家に帰ってこなくなりました。たまに帰っても家事や育児を手伝うことなく、不機嫌そうに、

「おれの晩飯まだ?」と。ワンオペ育児でフラフラの私は、夫に手伝ってくれないかと相談したのですが、

「疲れて帰ってきたおれよりコイツ(息子)が大切なのか」と怒鳴って出ていく始末。それからほとんど家に帰ってこなくなりました。

 義父母の話によると、仕事が忙しいから職場近くにアパートを借りているとのこと。離婚も考えましたが、やはりお金の面が心配ですし、手続きも面倒。別居することで顔を合わせないで済むならこのままでもいいかと思っていたのですが耐えられなくなったのが結婚18年目のこと。息子の大学受験の費用のことで相談すると、

「おれに懐いてない息子の学費はこれ以上払わない」と

 その頃には私も仕事を始めていたので、「だったら」と離婚を切り出したところ、なんと、「絶対に嫌だ」と泣き出す始末。別居のせいでほとんど話すことがなかったのですが、子供に私を取られて悲しかったのだと。幼稚な理屈にあきれましたが、少しかわいそうに

 そこで私たちが出した結論は、息子の学費を出してもらう代わりに、私も週末は夫の家を訪れるということ。すると夫はごちそうを作って待っていることも。息子から手が離れた代わりにもっと大きな息子ができた感じですが、いまがいちばん仲よくしています。(47才・派遣社員)

専門家からのアドバイス

「別居は関係改善に一役買うがコミュニケーション不足の一因にも」

「物理的に距離がおける別居は、お互い冷静になれるので、関係改善に一役買いますが、このケースでは、別居のせいでコミュニケーションが圧倒的に不足してしまい、もっと早く話せていれば解決できたことが先延ばしになってしまいました。別居はあくまで冷静に話し合う手段。コミュニケーションはとり続けて」(川崎さん・以下同)

【エピソード2】「孫の不登校」で夫婦が共闘!

 高学歴が自慢の夫(65才)は、大手企業に勤務しており、一方の私は、結婚と同時に夫の希望で会社を退職。専業主婦となりました。私としては続けたかったのですが、

「どうせおまえの仕事なんて、代わりはいくらでもいるだろう」と言われ、渋々了承しました。結婚後、子供ができると、

「専業主婦で一日中家にいさせてやっているのに、掃除ひとつまともにできないのか」などと、私へのマウントはエスカレート。ひどかったのは、息子が中学受験に失敗したときです。

 夫は私に、「低学歴なおまえの遺伝子を濃く継いだんだな」と言ったのです

 心底離婚を考えましたが息子から、「高校受験で親父を見返すから、母さんも一緒に闘って」と言われ、踏みとどまりました。その後息子は見事、志望校に合格。さらに大学からはひとり暮らしを始めたので、私たちは自然に家庭内別居となりました。

 そんな私たちが歩み寄るきっかけとなったのも、息子の一言でした。大学卒業後に地元に戻って就職した息子は、すぐに結婚。かわいい孫も授かりました。しかし、夫婦共働きで、小学校に上がった子供になかなか手料理を食べさせてあげられないと相談されたのです。

「母さんがよかったら、息子に手料理を食べさせてくれないかな。あいつ、食が細くって心配なんだ」

 夫とふたりの生活は息苦しかったので、私としても渡りに船でした。ところが、預かってみてわかったのは、孫が学校に行きたがらないということ。どうやら、同級生から嫌がらせを受けており、両親の手前、がまんして学校に行っていたのですが、つらくて食欲がなかったそう。事情を聞いた私は息子夫婦と相談し、学校は休ませ、昼間はうちで預かることにしたのです。

 そうなると孫の手前、夫を無視できません。夫に孫を預かると伝えると意外にもすんなり受け入れ、食事のときは、

「うまいか? おばあちゃんは料理が上手なんだ」

 などとほめてくれるように。その後も、キャッチボールの相手をするなど、面倒を見てくれるようになったのです。定年後、再雇用の声がかからず、自信がなくなったのでしょう。それに、自分の息子からは嫌われていたので、罪滅ぼしもあったのかも。私も意地を張ってはいられないので、

「おじいちゃんは勉強ができるのよ。教えてもらったら?」

 などと、孫を介しておだてるうちに、わだかまりが解けていくように感じました。孫が保健室登校できるようになったときは、夫と手を取り合って涙しました。「子はかすがい」といいますが、わが家の場合は、孫がかすがいになってくれました。(65才・パート)

専門家からのアドバイス

「共通の困難が関係を対等に」

「大手企業に勤めている人ほど定年を迎え何者でもない自分になると、途端に自信をなくすケースが多いんです。そんなとき、この夫婦のように共通の困難に立ち向かう機会があると、夫婦の距離は縮まりやすくなります」

教えてくれた人

川崎貴子さん/夫婦関係コンサルタント。2児の母。女性のキャリア支援事業を展開し、講演や執筆活動も行う。共著に『やっぱり結婚しなきゃ!と思ったら読む本~35歳からのナチュ婚のすすめ』(河出書房新社)がある。

取材・文/前川亜紀 イラスト/香川尚子

※女性セブン2022121日号
https://josei7.com/

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