漫画家・久保田順子さんが29才で直面した甲状腺の病気「見つけるまでがいちばんつらい」
甲状腺にかかわる病気は別の病気に間違われやすいため、適切な治療を受けるまでに時間がかかることが多い。漫画家の久保田順子さんは20代で甲状腺低下症になり、闘病した経験を持つ。「病名がわかるまで半年、ひとりの闘病はつらかった」という。現在、久保田さんが自身の経験とアドバイスを語ってくれた。
29才で更年期?私の体はどこかおかしい
橋本病・バセドウ病の闘病生活を漫画『ある日突然、起きられなくなりました~甲状腺低下症との闘い~』に描くのが漫画家の久保田順子さんだ。
彼女が“何かおかしい”と気づいたのは、いまから16年前の29才のときだった。
「まだ20代なのに、もの忘れがひどくなって、電話を切った途端に、何を話したかまったく思い出せないほど。それに、漫画家なのに、定規を使っても真っ直ぐに線が引けない。手が震えるんですよね。あとはしょっちゅう、イライラしていました」
最初は漫画家としてスランプに陥ったと思った。このままでは漫画が描けなくなるかもという恐怖が頭をよぎり、知人にも相談した。
その過程で、早期の更年期障害の可能性があがり、婦人科を受診。すると医師から意外な返答が…。
「“更年期?ないない!きみ、まだ20代やろ?疲れているだけ”と笑われてしまい…。医師がそう言うなら大丈夫かと思ったのですが、症状は悪化していくんです。髪の毛が抜け、眉毛もなくなりました。夏でも寒気がするし、体重は2週間で7kg急増。靴下を脱ぐと、その拍子に足の爪がポロッと剥がれて…不思議と痛くはないのですが、まいりました」
内科も2所で受診したが、異常なし。確実に具合は悪いのに、“健康”の太鼓判を押され、近所の人からは、
「丸々太って健康そう」
とまで言われる始末。
病名がわからないまま、症状は悪化の一途をたどり、周囲からの理解は得られない。たったひとり、不安な日々を送った。
見つけるまでがいちばんつらい病気
そこで、徹底的に体を検査してもらおうと、人間ドックを予約。するとそこの医師が、久保田さんを見るなりこう言った。
「甲状腺をやられているね。こんなにのどが腫れて、いままでつらかったでしょう」
たまたま、甲状腺の専門医だったのだ。
「甲状腺の病気は決まった症状がないから、見つけるまでがいちばんつらいんだとおっしゃって…。理解してくれる人がいるだけでこんなに救われるんだと涙が出ました」
検査の結果、橋本病だと判明。病名がわかれば、対処法もある。がんばって治そうという気になったという。ところが…。
「投薬を始めて3週間ほどで体重は減り、冷え症も改善。よくなったかなと感じていた矢先、今度はホットフラッシュのように急に顔が熱くなり、動悸が激しくなったんです。医師に相談すると、バセドウ病を併発していることがわかりました」
橋本病の薬の効果で、ホルモン値が高くなり、バセドウ病を発症したのだ。
「踏んだり蹴ったりでしたが、それでも、病名がわからずもがいていたときの不安に比べると、いまは一緒に闘ってくれる医師がいる。精神的な負担は感じませんでした」
結局、症状が安定するまで2年ほどかかったが、的確な治療のおかげで、現在は病気をコントロールできるようになり、2人の子供にも恵まれた。
「甲状腺疾患があると流産しやすいといわれているのですが、信頼できる医師のサポートで乗り越えられました」
いまでも橋本病の薬は服用している。海藻類は食べられないし、走ることもできない。しかし、病気とつきあう術は身についたので、以前ほどの不安はないと、久保田さんは笑う。
教えてくれた人
漫画家 久保田順子さん
京都府出身。著書に『京都子育てさんぽ』『スマイルユウミさん! 京都はんなりカフェ物語』(ともにぶんか社コミックス)など多数。「comicタント」(電子書籍 ぶんか社)で『ある日突然、起きられなくなりました~甲状腺低下症との闘い~』を連載中。
取材・文/土田由佳
※女性セブン2022年10月13日号
https://josei7.com/
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