たんぱく質は体重×1gが必要!食材別たんぱく質含有量とおいしく摂れるアイデアレシピ
野菜をたっぷり摂ってカロリーは控えめ。栄養バランスには気を使っているつもり。それなのに、今の食生活には“ある栄養”が不足しているかもしれない?
そんな意外な可能性が、味の素株式会社(以下味の素)主催のメディアセミナー(2018年10月31日)で紹介された食卓写真調査の結果から見えてきた。食卓写真調査とは、首都圏在住の20〜80歳代女性150名を対象に味の素が実施したもの。
その結果について、家庭料理研究家の浜内千波先生と、国立健康・栄養研究所の高田和子先生に意見や改善するためのアイデアを聞いた。
夕食と野菜重視で、たんぱく質はどこに?
ある50代主婦の食事を見ると、朝食はパンと牛乳であっさり、昼食も前日の残り物のおかずとシュークリームで軽めに済ませていた。その代わり、夕食は大学生の息子のために肉料理とサラダなど、ボリュームのあるメニューに。どこの家庭でもよくあるパターンだろう。
浜内先生:「とても現実的で、私にもよくわかります。朝は忙しいからバタバタ済ませて、夕食はお子さんのためにがんばって準備するのでしょうね。昼はご自分1人だから簡単で、夜に向かってゴーゴー! なのよね」
高田先生:「栄養をとるために牛乳を飲むなど、忙しい中でも工夫していますね。それでもたんぱく質をちゃんと摂っているのは夜だけ。朝と昼はまったく足りていません」
一方、別の70代主婦の食卓には朝昼晩、野菜たっぷりの皿がいくつも並んでいた。
浜内先生:「これはすごいわ。健康を意識して、野菜をたくさん摂ろうと努力されているのですね」
高田先生:「食事にとても注意している様子は見えますが、肉や魚、卵などのたんぱく源はあまり摂れていません。これまで私たち栄養の専門家がたんぱく質の重要性を十分に伝えていなかったせいかも、と反省しています」
日本人の約半数がたんぱく質不足かも?
日本人は本当にたんぱく質を十分に摂れていないのだろうか? その可能性を示すデータを高田先生が紹介してくれた。
「日本人のたんぱく質の推定平均必要量は、成人では体重1kgあたり0.72g、高齢者では0.94gとされています。この基準でみると、ほとんどの人がたんぱく質を十分摂れていることになります。
しかし、この数値はあくまで『欠乏を起こさない』ことを基準にしたもの。海外の研究によると、高齢化社会を迎えた今、問題になっているサルコペニア(※1)やフレイル(※2)にならないためには、体重1kgあたり少なくとも1g以上のたんぱく質が必要です。『筋肉を維持するためには、体重1kgあたり1.2〜1.5gとるべきだ』というデータもあるほどです」
この基準に照らし合わせてみると、たんぱく質を十分に摂れていない人の割合はぐっと高くなる。例えば、体重あたり1gに満たない人の割合は、30〜64歳男性では3割近く。体重あたり1.2gで見てみると、30代以上の男女ともに、半数近くがたんぱく質不足という結果となる。
「この調査をしてみて驚いたのが、30〜64歳の若い世代のほうがたんぱく質を十分に摂れていないということ。この状態が続くと、高齢になってから筋肉不足になりやすく、サルコペニアやフレイルの割合が今よりももっと増える可能性があります」(高田先生)
※1 サルコペニア……加齢や疾患により筋肉量が減少することで、全身の筋力低下および身体機能の低下が起こることを指す。
※2 フレイル……加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能など)が低下した状態。健常な状態と要介護状態の間。
肉や魚100gから、たんぱく質は何g摂れる?
筋肉不足に陥らないために、十分なたんぱく質を補給するためのポイントは、朝食と昼食にあると高田先生は言う。
「海外の研究からは、サルコペニアにならないためには1食あたり最低20〜25gのたんぱく質が必要とも言われています。この基準で日本人の食事を見てみると、30歳以上の男女ともに、十分なたんぱく質を摂れているのは夕食だけ。朝食と昼食では平均5gも不足しています」(高田先生)
浜内先生は、たんぱく質の取り方については誤解されやすいポイントがあるという。
「例えば『1日60gのたんぱく質が必要です』というと、肉や魚を60g食べればOKと勘違いされることが多いんです。でも、肉や魚ではたんぱく質の含有量はだいたい2割程度。1食で肉や魚を100g食べたら、たんぱく質が20g摂れたと考えるのが目安です」
おおよそ1食分の食材と、それに含まれるたんぱく質の量は次の通り(日本食品標準成分表2015年版・七訂)。
【魚】
・さんま 1尾(100g):17.2g
・さけ 1切れ(80g):17.9g
・しらす干し 大さじ1:(7g)1.6g
・まぐろ刺身 5〜6切れ(100g):24.2g
・かつお刺身 5〜6切れ(100g:)25.8g
・ちくわ 1本(30g):3.7g
【肉】
・牛肩ロース 薄切り2枚(100g):13.8g
・豚こま 5枚(100g:18.3g
・鶏胸肉 2/5枚(100g):19.5g
・鶏もも肉 2/5枚(100g):17.3g
・ひき肉(100g):17.4g
・ベーコン3枚、ウィンナー3本(60g):7.4g
【牛乳・乳製品】
・牛乳 コップ1杯(200ml):6.6g
・ヨーグルト(100g):3.6g
・プロセスチーズ 1個(18g):4.1g
【卵】
・卵 1個(55g):6.5g
【豆製品】
・木綿豆腐 1/2丁(150g):9.9g
・充填豆腐 1丁(150g):7.5g
・生揚げ 1/2丁(100g):10.7g
・油揚げ 1枚(30g):5.5g
・納豆 1パック(40g):6.6g
・調製豆乳 コップ1杯(200ml):6.4g
朝食では牛乳や卵、雑穀を活用
1日のうちで、もっともたんぱく質の摂取量が少ないのが朝食。うまく補うためにはどうすればよいのだろうか。
「朝は体温が下がっていますし、内臓もまだ活発に動いていませんから、固いものや消化に悪いものは避け、栄養を吸収しやすいメニューがいいですね。
例えば、野菜や果物のジュースに牛乳を加えたり、みそ汁やスープに豆腐や半熟卵を入れたりしてみては? 準備の手間はかかりませんし、おなかにするっと収まって胃腸に負担をかけずにたんぱく質を摂ることができます。
また、朝食におすすめなのが“雑穀”です。たんぱく質というと肉や魚、乳製品、卵、豆と考えがちですが、実は雑穀もたんぱく質が豊富。主食の白米や白いパンを雑穀米やライ麦パンに代えるだけでも、たんぱく質の補給ができます」(浜内先生、以下「」内同)
昼食にたんぱく源と野菜をワンプレートで
つい簡単に済ませてしまいがちな昼食には、フライパン一つで調理できる「ワンパンレシピ」がおすすめ。
「生野菜は手でちぎってお皿にのせ、加熱が必要な野菜は、肉や魚と一緒にフライパンで焼くだけ。味付けはしょうゆやマヨネーズなどをお好きな油と混ぜるだけ。油1:調味料2の割合にすれば、味がまとまって素材となじみやすくなります。手持ちのドレッシングをかけてもいいですね」
【ワンパンレシピ1 鶏肉バージョン】 たんぱく質28.5g
【1】 しめじ50gは大ぶりにほぐし、にんじん50g、玉ねぎ100gは大きめに切る。
【2】フライパンにオリーブオイル大さじ1を熱し、鶏むね肉(皮なし)100gと【1】を一緒に焼く。
【3】キャベツ、レタス各50gを手でちぎり、トマト50gはざく切りし、【2】とともに皿に盛る。好みのドレッシングなど(使用したのはトッピング入りサラダシーズニング『Toss Sala(R)<サラダチキンとレタスの京風ゆずサラダ用>』)をかけ、食べる前によく混ぜる。
【ワンパンレシピ2 豚肉バージョン】 たんぱく質26.5g
【1】パプリカ50g、じゃがいも100gは大きめに切る。
【2】フライパンにごま油大さじ1/2を熱し、豚ロース肉1枚(100g)と【1】を一緒に焼く。
【3】白菜120gを手でちぎり、ベビーリーフ30g、【2】とともに皿に盛る。食べる前にしょうゆ大さじ1強とごま油大さじ1を混ぜてかける。
【ワンパンレシピ3 さばバージョン】 たんぱく質29.1g
【1】ブロッコリー・ねぎ各50gは大きめに切る。
【2】フライパンにオリーブオイル大さじ1/2を熱し、さば1切れ(100g)と【1】を一緒に焼く。
【3】きゅうり50gは食べやすい大きさに切り、春菊30gとレタス70gを手でちぎり、【2】とともに皿に盛る。
【4】とうもろこし50gとアーモンド10gを【3】にかけ、マヨネーズなど(使用したのは『ピュアセレクト(R)コクうま(R)65%カロリーカット』)大さじ2に塩小さじ1/3強、こしょう少々を混ぜてかける。
撮影/政川慎治 取材・文/市原淳子
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