健康を増進しメタボ・認知症予防!良いことだらけの「家事エクササイズ」
人間は加齢とともに運動機能や認知機能が低下する。だからこそ、手をこまねいていては介護が必要な状態へ進むことになりかねない。
「そうならないためには体を動かすことが大切で、特に家事がおすすめです」
と言うのは、昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーションセンター認定作業療法士の渡部喬之さん。
「脳卒中などを発症した患者さんのリハビリを行う中で、家であまり活動をしない男性に比べて、家事をする女性の方がリハビリ効果が高く、回復も早いことに気づきました。それで調べたところ、意外と家事の活動量は多いことがわかったのです」(渡部さん・以下同)
その活動量の指標となるのが“メッツ”。これは厚生労働省が定めた、メタボリックシンドロームをはじめとする、生活習慣病を予防するための身体活動量の基準値で、身体活動の強度を示す。
目指せ!1週間で23メッツ
各活動のメッツは以下の通り。60分安静にしている時の運動エネルギー消費量が基準となる1メッツなのだが、例えば、「食事をする」が1.5メッツに対し「掃除機がけ」は3.3メッツ、「階段を上がる」は4メッツと、活動量が高くなる。
●安静に座っている時が基準:1メッツ
●ウオーキング:3メッツ
●早歩き:4.3メッツ
●ジョギング:7メッツ
●買い物:3メッツ
●ペットと遊ぶ:4メッツ
●庭掃除:4メッツ
●草むしり:3.5メッツ
●掃除機がけ:3.3メッツ
●床磨き:3.5メッツ
●階段を上がる:4メッツ
●階段を下りる:3.5メッツ
●風呂掃除:3.5メッツ
●入浴:1.5メッツ
●料理:2メッツ
●皿洗い:1.8メッツ
●食事をする:1.5メッツ
●洗濯干し:2メッツ
●ゴミ捨て:2.5メッツ
ただ1時間立っているのは大変でも料理しながらなら平気なはず
「ペンシルベニア大学のフィッシュマン教授の研究で、座っている時間が短く、アクティブな人ほど寿命が長く、最も活動量の低い人は、最も高い人に比べて、死亡率が5倍高いことがわかっています。その活動量は運動に限らず、家事でも効果は同じです」
運動よりも家事をすすめる理由を、渡部さんは以下のように解説する。
「家事は“皿がきれいになった”“部屋が片付いた”“料理ができた”などと、成果が目に見えるので、モチベーションを上げやすい。1時間ただ立っているのは大変ですが、料理を作っていれば1時間くらい平気ですよね。そのように、無理なく続けられるのも利点です」
また、家事ではないが、日常の中で積極的に階段を使うと、転倒防止効果も上がる。
「階段を上る時は前脛骨筋という、すねの筋肉を使いますが、この筋肉が弱くなると1cm程度の段差でもつまずきやすくなります。転倒すると手首を骨折して家事もできなくなります。できるだけ、階段を使いましょう」
どうすれば家事をエクササイズに変えられるのか?
年齢を重ねると運動機能は低下してしまうもの。運動機能が低下すると認知症のリスクも高まってしまう。
厚生労働省が発表した『健康づくりのための身体活動基準』によると、10~64才は「3メッツ以上の強度の身体活動を毎日60分で1週間に23メッツ」が必要とされ、65才以上の場合は「強度を問わず、身体活動を毎日40分以上で1週間に10メッツ」が必要とされている。
ちなみに、70才の夫婦のよくある1日を見てみると、週に6回ほどウォーキングをしている夫よりも、日々家事をこなしている妻の方が、活動量が多いといったこともあるという。日々の家事といっても、それなりの活動量はあるのだ。
自分の1日を書き出してみると、自分の現在の活動量がわかるのでおすすめだ。前出の渡部喬之さんはこう話す。
「活動量が足りている人は、そのまま続ければよいですし、足りない人は積極的に家事をプラスして活動量を増やしましょう」