介護費用を100%親のお金でまかなうには?親子の経済的負担を軽くする制度一覧
親の介護のためにと、無理して費用や時間、体力を捻出する必要はないのだ。解決策は必ずある。行政をはじめ各サービスを有効に活用しよう。
介護保険の介護サービス
行政の審査を経て要介護認定を受けると、ホームヘルパーによる訪問介護やデイサービスなど、さまざまな介護保険サービスが1~3割負担で使える。介護が必要になったらすぐに申請を。
介護サービスには支給上限額があり、要支援1・2、要介護1~5の7段階に応じて、1か月あたりの支給限度額は5万320円(要支援1)~36万2170円(要介護5)。
たとえば、要支援1で6万円分のサービスを利用する場合、1割負担で5032円に。そこに、支給限度額(5万320円)を超えた分の9680円を加えて1万4712円を自腹で支払うことになる。
高額療養費制度
所得に応じて、1か月にかかった医療費が一定額を超えた分は戻ってくる制度。
たとえば、課税所得が145万円未満(世帯)の75才以上は、1か月の自己負担上限額が、外来で1万8000円(個人)、世帯ごとの外来と入院で5万7600円。これを超えた分は戻ってくる。
高額介護サービス費制度
高額療養費制度と同様に、所得に応じて支払額の上限を設定した制度。
たとえば、課税所得が380万円未満の場合、1か月の上限は4万4400円(世帯)。夫婦合わせて5万円の介護保険サービスを利用した場合、差額の5600円が戻ってくる。
ただし、介護保険の利用限度額を超えてサービスを利用した超過料金や、デイサービス利用時の食費、日常生活費、介護保険の給付対象外の自己負担分などは対象外。
高額医療・高額介護合算療養制度
毎年8月1日から翌年7月31日までの医療保険と介護保険の自己負担分を医療保険上の世帯単位で合算し、所得に応じた上限額を超えるとお金が戻ってくる制度。
たとえば、70才以上のみの世帯で課税所得が145万円未満の場合、年間の上限は56万円。両親の年間の医療保険と介護保険の自己負担額の合計が64万円の場合、8万円が戻ってくる。
特定入所者介護サービス費制度
ショートステイや特別養護老人ホームなどに入所した際に、収入や預貯金の額によっては食費や部屋代が安くなる制度。主に非課税世帯や低所得者世帯が対象。
たとえば、単身の親が非課税世帯で年間の年金収入が80万円以下、預貯金額が650万円以下の場合、通常1日あたりの部屋代は2006円、食費は1445円の負担になるところ、部屋代は820円、食費は390円まで軽減され、1か月あたり6万円以上安くなる。
自治体独自のサポートサービス
配食サービスや緊急通報サービスなど、自治体が独自に展開するサービス。
たとえば東京都目黒区の場合、自宅までゴミを取りに来てくれるサービス、週1~3回安否確認の電話をしてくれるサービスが無料。銭湯への送迎、入浴前後の着替え、体を洗うなどの銭湯介助サービスや、理美容室へ行く際の送迎サポートは1時間400円(実費は別途)。※条件あり。
社会福祉協議会で受けられるサービス
買い物代行や病院の付き添い、家事援助などを割安な料金でサポートしてくれる。
たとえば東京都目黒区の社会福祉協議会の場合、掃除、洗濯、買い物、食事作り、入院時の洗濯といった家事援助、通院や外出、食事、排泄などの介護援助、窓ふき、荷物の整理などを、年会費500円、1時間800~1000円で行ってくれる。
代理人カードの作成
預金者本人に代わって、家族などの代理人がATMなどで預金を入出金できる代理人カード(代理人キャッシュカード)を作れる。預金者本人が事前に窓口で手続きする必要がある。
成年後見制度
認知症などで判断能力が衰え、契約などの法律行為を行えない場合、後見人などが代理で契約を締結したり、財産を管理できる制度。
「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類あり、前者は、本人に判断能力があるうちに、自ら選んだ人(任意後見人)と、代わりにしてもらいたいことを契約しておける。後者は、本人が認知症などになり判断能力がないとき、家庭裁判所によって成年後見人などが選定される。
家族信託
信託とは、親などの委託者が、子供など信頼できる人(受託者)に、お金や土地、建物などの財産を移転すること。受託者は委託者が設定した信託目的(老後の生活や介護など)に従って、その財産の管理や処分などを行う。
委託者と受託者が契約書を交わせば契約が成立し、家庭裁判所などでの手続きや報酬は不要。親の財産を管理するため、活用が増えてきている。
教えてくれた人
介護・暮らしジャーナリスト・太田差惠子さん、弁護士・外岡潤さん
※女性セブン2022年9月1日号
https://josei7.com/
取材・文/桜田容子
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