認知症の母が要介護2から3へ!遠距離介護にかかる月額費用と内訳の実例を公開
岩手・盛岡に暮らす認知症の母を遠距離介護している作家でブロガーの工藤広伸さん。母の認知症が徐々に進行し、要介護2から3に上がってしまった。介護度が上がると介護費用にも変化はあるのだろうか? 工藤家の毎月の介護費用はいくらかかっているのか――実例に学ぶ、遠距離介護とお金の話。
認知症とシャルコー・マリー・トゥース病という手と足の筋肉が萎縮する難病を持つ要介護3の母(78才)の、在宅介護でかかっている1か月の費用をご紹介します。
介護費用の1か月あたりの平均額はいくら?
公益財団法人生命保険文化センターが2021年に行った調査※で、過去3年間に介護経験がある人に1か月あたりどのくらい介護費用がかかったのかを聞いたところ、8.3万円でした。また住宅改修や介護ベッド購入など、一時的にかかった介護費用の平均額は74万円でした。
さらに介護を行った場所別で1か月あたりの介護費用をみると、在宅で8.3万円、施設で12.2万円となり、在宅介護のほうが費用はかかりません。では、わが家はどうでしょう?
※生命保険文化センター2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf
我が家の1か月の介護費用を公開!
2022年1月に、母の要介護度は要介護2から要介護3へ上がりました。そのことで使える介護保険サービスの枠が増えたので、さらに介護のプロに頼る機会が増えた結果が下記になります。
科目/費用
交通費(東北新幹線、通院タクシー等)/48,000円
認知症の薬、健康食品 /13,000円
訪問介護(週6回:デイサービス送り出し、買い物、料理、ゴミ捨て)/7,200円
訪問リハビリ(週1回)/4,000円
訪問看護(隔週1回)/3,000円
デイサービス(週3回)/20,000円
訪問薬剤師(週1回:服薬管理)/2,000円
手すりレンタル(4台)/1,400円
合計 98,600円
介護費用の解説
交通費
わが家の介護費用の大きな特徴は、交通費です。東京と岩手の遠距離在宅介護を続けているので、どうしても交通費が多くかかります。
上記は、
東北新幹線のチケットは、JR東日本のネットサービス『えきねっと』で入手しているので、最大25%割引になっています。実家には車がないため通院は近場ならタクシー、遠い場合は格安レンタカーを使っていて、半日借りて4千円程度で済みます。
訪問介護
わたしが東京に居るときは、週5~6回ほどヘルパーさんが家に来ます。主にデイサービスの送り出しをお願いしていて、例えばお風呂に入るタオルや下着の準備、寝室にあるポータブルトイレの排泄物の処理などを行います。
デイサービスに行かない日は、料理ができない母のために夕食を準備してもらったり、買い物に行ってもらったり、家の掃除などもお願いしています。
訪問リハビリ
訪問リハビリは週1回、作業療法士さんが家に来ます。主に歩行を維持するための訓練を行っていますが、料理を通じて心身の機能や強化を行う認知症のリハビリも含まれています。
母はひとりでは調理できませんが、作業療法士さんのサポートがあれば、材料を切ったり、炒めたりはできます。リハビリというと体を動かすイメージがありますが、料理が好きだった母にとっては、料理を通じたリハビリにも大きな意味があります。
デイサービス
デイサービスは、週3回利用しています。要介護3になった際に、担当のケアマネジャーさんやデイサービスから、家族として今後どのような介護の方針を考えているかを改めて質問されました。
わたしも母も初めから方針は変わっておらず、できるだけ長く住み慣れた自宅で暮らしたいという思いで介護を続けてきました。
しかし認知症が進行して、母がひとりで居る時間が長くなると、昼寝の時間が長くなってしまい、夜中に起きて活動する昼夜逆転が起きやすくなります。さらに寝てばかりいると、筋力が衰えてしまいます。
訪問リハビリを週2回に増やすか、デイサービスを週3回に増やすか悩みましたが、リハビリは週1時間しか増えません。対してデイサービスは、準備する時間から移動する時間まで含めると、7時間くらいは体を動かします。日常生活の中で活動量を増やしたほうがいいと考え、デイサービスの回数を増やしました。
1か月の介護費用のまとめ
要介護2の時と比較すると、1か月あたり合計で11,100円ほど増えました。
それでも1か月の介護施設にかかる費用の平均額以下で収まっていますし、何より母が望んでいる自宅での生活ができています。わたしも自分の生活を守りながら、自分のペースで介護ができています。
もうすぐこの遠距離介護生活は丸10年を迎えますが、たくさんの介護職の皆さんの力を借りたおかげで、なんとか在宅で介護を続けられています。最初から介護保険サービスをしっかり使ってなければ、おそらく在宅での介護は続いてなかったかもしれません。
この先さらにデイサービスの回数が増えるかもしれませんし、ひょっとしたら介護施設への入居が現実になるかもしれません。母もわたしもこの遠距離介護のカタチが理想だと思っているので、力を抜きつつ現状を維持できたらいいなと思っています。
今日もしれっと、しれっと。
工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(78歳・要介護3)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442。