介護は1人で抱えない!頼れるアウトソーシング相談先・サービス一覧【専門家監修】
「子供は親の介護をどこまですべきなのだろうか?」このことを取り上げた記事に多くの反響が寄せられた。親の介護を親だけ、子供だけでやるのは“危険”。家族にしかできないこと、外部に任せるべきことを見極めることが幸せな介護につながる。何から始める?める? 何を決める? どこに頼む? 親も子も幸せになれる「介護アウトソーシング」について、専門家に教えてもらった。
子供がすべき介護の第一歩は情報収集
介護は心の準備がないまま、突然始まると、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは言う。
「お盆に久しぶりに帰省したところ、足腰が弱って外出できなくなっていた、同じ話を何度も繰り返すようになっていたなど、親の衰えや異変を目の当たりにしたり、けがや病気で入院するなどして、介護は始まります」(太田さん・以下同)
→介護が始まるときに慌てない!要介護認定の申請、介護保険サービス利用の基礎知識
介護をするかしないかはさておき、そうなったときにまず何をしたらいいのか?
「親の住む地域にある地域包括支援センターに連絡を取ることが第一歩となります。ここは、高齢者の医療・介護についての無料の総合相談窓口で、社会福祉士や保健師、介護計画を一緒に考えてくれるケアマネジャーなどの有資格者が常駐しています。遠方に住んでいても電話で相談でき、何をすべきか、どういうサービスが使えるかなどを教えてくれるはずです」
地元の行政とつながっておけば、自分が実家に行けなくても、代わりに行政が動いてくれて、親の孤立を防いでもらえるケースもある。そういう意味でも、連絡を入れておく価値があるのだ。
「たとえば、“コロナ禍で帰省できないが、親が弱っているようだ”と地域包括支援センターに電話で相談してきた人に代わって職員が親の家へ出向き、様子を確認したうえで、介護保険の申請を代行してくれたケースもありました」
介護ができない場合も、それを恥と思わず正直に伝えれば、よりよい対処法を教えてくれるのだ。
何ができて何ができないかを明確に
次に、地域包括支援センターで収集した情報をもとに、自分には何ができて何ができないかを明確にする必要がある。全部をひとりでやろうとする必要はないし、むしろやってはいけない。
元気な方の親(配偶者)がひとりで抱え込もうとするのもやめさせた方がいい。介護は長ければ数十年続くため、老老介護では必ず破綻するからだ。
「親やきょうだい、親せきたちと、それらの意思や情報、役割分担を共有することが大切です」
と話すのは、介護問題に詳しいジャーナリストの石川結貴(ゆうき)さんだ。
「たとえば、“遠方に住んでいるから実家に行って身体介助はできないが、手続きならできる”“経済的な支援はできないが、無料や格安で使えるサービスは探せる”“病院への送迎に車は出せる”などです。この線引きがあいまいだと、ひとりだけ負担が増えたり、介護離職に追い込まれるほど介護にハマる危険性があります」(石川さん)
線引きを考える際、もう1つ大切なことがある。それは、「自分はなぜできないのか、やりたくないのか」、その理由を考え、気持ちを整理しておくことだ。
「介護をホームヘルパーやデイサービス、高齢者施設などにアウトソーシングしていると、周囲から“冷たい”などと非難され、思い悩む人が非常に多いんです。手を出さずに口だけ出すような人の声は無視していいと思いますが、自分はこういう事情があって“しない”と決めたからやらない、といった確固たる理由があると、そんな声に惑わされなくて済みます」
周囲の声だけでなく自らの罪悪感も和らげられる。コラムニストの吉田潮さんの場合、
「自分たちだけで介護をせず、施設に入れてプロに任せた方が、両親にとって納得のいく介護をしてあげられる」
という理由が、彼女の心を支えていた。
極端な話、手続きも含めて一切介護をしない人もなかにはいる。その場合、市町村長が成年後見人の申し立てをして、子供に代わる介護の“責任者”を立ててくれることもある。
子供は、必ず親の介護をやらなければならないと考えず、やれることをやればいい。何をすべきか迷ったら、まずは、自分の生活を守るための選択をしよう。助けてくれる公的・民間サービスは山ほどある。大切なのはその存在を知り、使いこなすことだ。
→突然始まる介護で慌てないための「介護のロードマップ」4つのステップを解説
困ったときの相談先一覧
【総合的な窓口】
・地域包括支援センター「まずはここへ!」
高齢者やその家族からのさまざまな相談に対応。相談内容に応じた各種保健、介護、福祉サービスが受けられるよう、市区町村、関係機関と連絡調整を行う。介護保険の認定審査の申請を代行でしてくれることも。また、介護に関する知識や技術などを学べる「家族介護者教室」を設けたり、介護者同士で交流して情報交換を行う懇談会を実施するところも。相談や対応は無料。拠点は、親が住む地域の市役所・町村役場に問い合わせれば教えてくれる。
・市区町村の相談窓口
保健・医療・福祉に関する相談に応じる。ホームヘルプサービスやデイサービス、日常生活用具のレンタル、保健師などによる訪問指導など、各種福祉サービスを利用するときの申請窓口でもある。相談や対応は無料。
・福祉事務所
生活保護の相談・申請、生活福祉資金の貸し付けや自治体独自の貸し付け相談、老人ホームへの入所についての相談などを行う。906の自治体が設置しており、福祉事務所の数は全国で1250か所ある。相談や対応は無料。
【認知症について】
・保健所・精神保健福祉センター
認知症や介護に関する相談に保健師や医師などの専門職が対応してくれる。相談者の要望によって、保健師が家庭訪問をして相談対応することも。相談や対応は無料。 ・公益社団法人認知症の人と家族の会 認知症患者の家族からの悩み事や相談、介護方法の助言を無料で行う。介護家族が集まり情報交換や相談ができる集いも随時開催し、ホームページに情報を載せている。
【福祉サービスについて】
・社会福祉協議会
社会福祉法に基づき、各自治体に設置されている民間組織。認知症などで判断能力に不安がある人などを対象に、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理などを行う「日常生活自立支援事業」も実施している。
【消費生活トラブル】
・各自治体の消費生活センター
老親が詐欺などの被害に遭った可能性があれば、まずはここに電話を。商品やサービスなど消費生活全般に関するトラブルについて、専門の相談員が対応する。最寄りの消費生活センターなどの相談先がわからない場合は「消費者ホットライン」(電話:188)に連絡すると、近くの消費生活相談窓口を案内してくれる。
【ボランティア活動】
・ボランティアセンター
ボランティアとして活動したい人と、ボランティアの助けを借りたい人をつなぐ窓口。市区町村単位で社会福祉協議会と連携して設置されることが多い。
【身近な相談先】
・民生委員
地域住民の立場から生活や福祉全般に関する相談・援助活動を行う。その地域の住民で、地域の実情をよく知り、福祉活動やボランティア活動などに理解と熱意がある人が委員に選ばれる。親の住む地域で困り事があったり、情報収集をしたいときは、活用できる。相談したいときは親が住む地域の市役所・町村役場に問い合わせを。