長寿研究第一人者が明かす「最強の長寿食」|老化のスピードを遅らせるのは「豆類」「全粒穀物」「ナッツ」
寿命研究の第一人者である南カリフォルニア大学長寿研究所の教授、ヴァルター・D・ロンゴさんらの研究(以下、ロンゴ研究)により、人間の老化を止める食品や、逆に老化を進める食品が明らかになったという。その研究結果や日本の専門家の知見をもとに「最強の長寿食」を紹介する。
豆類 全粒穀物 ナッツが老化を遅らせるという研究結果が!
《汝の食を薬とし、汝の薬を食とせよ》
「医学の父」と称される古代ギリシャの医師・ヒポクラテスは「食べ物で治せない病気は医者でも治せない」と語り、食が人間の健康にいかに大切かを説いた。それから約2400年の時代が流れ今年4月、「医学の父」が正しいことを証明する論文が、世界最高峰の学術雑誌『CELL』に発表された。
この研究を主導した、南カリフォルニア大学長寿研究所の教授、ヴァルター・D・ロンゴさんが
「長寿食を支持するエビデンスを提供している」
と高く評価するのが、ノルウェーのベルゲン大学の研究成果だ。
同研究は老化を止める食品として、「豆類」「全粒穀物」「ナッツ」の3種類を挙げる。これらを豊富に摂取し、同時に赤身肉や加工肉を減らす食事に切り替えると、20才から始めた場合は女性で10.7年、男性で13年も寿命が延びるというのだ。
60才過ぎてからでも8年以上寿命が延ばせる
「もう若くないからムリね」とあきらめることはない。同研究によれば、40才の女性が豆類、全粒穀物、ナッツを豊富に含む食事に切り替えると10年、60才を過ぎた女性でも8年以上寿命を延ばせることがわかっている。
1日の目安は豆類200g、全粒穀物225g、ナッツ25g
なかでも“最強の食品”はえんどう豆や大豆、グリーンピースなどの豆類で、60才女性で日常的に200g摂取すると、寿命が1.6年延びる。一方、全粒穀物を1日225g、ナッツを1日25g食べることでも寿命が延びるという。
ロンゴ研究は、豆類の摂取が加齢を促すインスリン様成長因子(IGF-1)などのレベルを下げると指摘する。同大学教授で研究リーダーのファドネスさんも、この食事法で心臓病や糖尿病、がんのリスクが減る可能性があると報告している。
「オーツ麦」で心臓疾患による死亡リスクが軽減
「最強の長寿食の1つである全粒穀物を食べやすくしたのがオートミールです」
そう指摘するのは、食糧学院副学院長で医師の馬渕知子さんだ。
「オートミールは脱穀したオーツ麦を加工した食べ物で、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランスよく含まれます。白米や食パンに比べると血糖値が上がりにくく結構な満腹感があるので、朝食か昼食のメニューに最適です」(馬渕さん)
米ハーバード大学公衆衛生学研究チームが10万人を14年以上追跡した調査では、ボウル1杯分(33g)のオーツ麦を摂取するグループは、全粒穀物を一切食べないグループよりも9%長生きしている。特に心臓疾患による死亡リスクは15%も低い。
「りんご」の摂取で脳卒中が40%減少
「日本人に適した長寿食」として、松生クリニック院長の松生恒夫さんが指摘するのは野菜と果物だ。
「日本有数の長寿県である長野県は、白菜やレタスなど野菜の摂取量が全国1位で、りんごやぶどうなど果物の生産量も非常に多い。野菜や果物には豊富なポリフェノールが含まれており、フィンランドの疫学研究ではりんごの摂取で脳卒中が40%減少しています。また熟した果物ほど増える水溶性食物繊維のペクチンは、大腸内の胆汁酸濃度を減少させ、大腸がんの発生を抑制します」(松生さん)