長寿研究第一人者が明かす「最強の長寿食」|老化のスピードを遅らせるのは「豆類」「全粒穀物」「ナッツ」
ロンゴ研究が特に注目するのは「たんぱく質」が健康に与えるマイナスの影響だ。ロンゴさんが指摘する。
「65才未満の被験者は、カロリーの20%以上をたんぱく質で摂取すると、カロリーの10%未満をたんぱく質で摂取した場合と比べて、総死亡リスクが75%上昇しました。また、がんの死亡リスクは400%も増加しました。65才未満の人は、たんぱく質を控えめに摂取すべきです」
なかでも特筆すべきは「赤身肉」とソーセージやハムなどの「加工肉」だ。前出のファドネスさんらの最新研究では、60才のアメリカ人女性が1日当たりの赤身肉摂取を100gからにすると、寿命が1.2年延びた。同様に加工肉を50gから0gにしても寿命が1.2年延びている。
松生さんも赤身肉と加工肉は確実に大腸がんを促進する因子だと指摘する。
「特に赤身肉はコレステロール値を上げる飽和脂肪酸が多く、摂取量が増えるとメタボリックシンドロームを引き起こしやすい。また赤身肉には多くの鉄分が含まれ、脂質と組み合わさると活性酸素が生成されて、体内の細胞や組織がダメージを被って老化やがんの引き金になります」(松生さん)
表に「老化を止める食品」と「老化を進める食品」の全リストを掲載するので参考にしてほしい。
■各食品品目の摂取量を変えたときの平均寿命への影響
ロンゴさんらがハーバード大学やベンゲル大学の研究などを解析した結果。 被験者は男女ともにアメリカ人。
■食品名と1日当たりの摂取量/60才女性の平均余命延び幅/60才男性の平均余命延び幅
●豆類 0g→200g 1.6年 1.6年
0g→100g 0.8年 0.8年
●全粒穀物 50g→225g 1.4年 1.5年
50g→137.5g 0.9年 0.9年
●ナッツ類 0g→25g 1.2年 1.3年
0g→12.5g 0.6年 0.6年
●魚類 50g→200g 0.4年 0.4年
50g→125g 0.2年 0.2年
●果物 200g→400g 0.3年 0.3年
200g→300g 0.2年 0.2年
●野菜類 250g→400g 0.2年 0.2年
250g→325g 0.2年 0.2年
●白身肉 75g→50g 0年 0年
75g→62.5g 0年 0年
●乳製品 300g→200g 0.1年 0.1年
300g→250g 0年 0年
●卵 50g→25g 0.5年 0.5年
50g→37.5g 0.2年 0.3年
●精製穀物 150g→50g 0.7年 0.7年
150g→100g 0.4年 0.4年
●甘味飲料 500g→0g 0.8年 0.8年
500g→250g 0.3年 0.3年
●赤身肉 100g→0g 1.2年 1.2年
100g→50g 0.6年 0.6年
●加工肉 50g→0g 1.2年 1.2年
50g→25g 0.5年 0.5年
たんぱく質の摂取量は65才が境目
ロンゴ研究によると、たんぱく質とメチオニン(硫黄を含んだ含硫アミノ酸)を含む食事を与えられたマウスは、短命に終わっている。国際未病ケア医学研究センター長の一石英一郎さんは、この研究は人間に応用できると推測する。
「これらの食事は、老化を促すインスリンシグナルを活性化すると考えられます。人間の食事に置き換えると、鶏肉や牛肉、羊肉などの肉類や、まぐろなどの魚介類、牛乳やチーズなどの乳製品が該当します」(一石さん)
気をつけたいのは、たんぱく質が寿命を縮めるのは「65才未満」であることだ。
「65才以上では、たんぱく質の摂取と寿命に関連性は認められませんでした。この世代はむしろたんぱく質が少ないと、筋肉量の減少や虚弱につながる恐れがあります。栄養失調を防ぐためにも、65才以上の人はたんぱく質の摂取をやや増やす必要があります。筋肉量を維持するために、たんぱく源として魚や卵、白身肉、ヤギ、羊由来の食品を摂取しましょう。またその際は、筋肉を落とさないように日常的にウエートトレーニングなどの運動をすることも求められます」(ロンゴさん)
たんぱく質を摂る場合、肉よりも魚がおすすめ
「肉と魚は脂の種類が違います。肉類に含まれる飽和脂肪酸は炎症を増強する作用があり、体内の細胞にダメージを与えます。一方で魚類に含まれる不飽和脂肪酸(EPA、DHAなど)は炎症作用が弱く、動物実験では大腸の炎症を抑制する作用が報告されています。
不飽和脂肪酸には脳神経を保護して認知症を防ぐ効果や、血液をサラサラにして心筋梗塞や脳梗塞を防ぐ効果もあるので、EPAやDHAが多く含まれる青魚を食べることが大切です」(松生さん)
魚中心の食事は肉中心の食事に比べて、大腸の発がんを促進する胆汁酸の分泌が少ないともいわれている。