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話し方コンサルタントが教える好感度を上げる会話実例12選|おしゃべりスキルCheck

 一生懸命話しているのに、「何度も聞き返される」「わかりにくい」「最後まで話を聞いてもらえない」など、こんな悩みを抱えていませんか? もしかすると長い自粛で人と話す機会が減り、“話す力”が落ちたせいかも…。話し方のプロが教える、うまい話し方・実践会話集をヒントに会話力を鍛え直していきましょう。

「会話力」落ちていませんか?話は整理して伝える

 会話の内容は、感情と事実、過去と現在を整理して伝えるといいと、話し方コンサルタントの神原智己さんは言う。

「家族や友人と話していて、“何が言いたいの?”と言われる場合、感情も事実も過去も現在も、ごちゃまぜにして話している可能性があります」(神原さん・以下同)

 これは女性に多い傾向だという。たとえば、

「子供が車で8時間かけて帰省したものの、実家では寝てばかり。疲れているとはいえ、久しぶりに会えたのに寂しい」

という内容を伝えたいとする。

 話の内容を整理できない人は、感情が沸き起こる順番で話してしまうので、

「腹立つでしょ? やっと帰省して、うちの子が、8時間よ。飛行機が怖いから車にしたって。寝てばっかりいるの」

 などと発言しがちだ。

「まずは事実を伝え、次に感情を伝えるようにすると、内容は整理されます」

 これができるようになったら、次は相手の言ってほしそうなことを想像し、言葉にするといいという。たとえば、相手が新しいバッグを持っていたら、「高そうね」ではなく、「似合いますね」と言った方が会話は弾む。

 自分は大丈夫だと思っていても、意外と落ちている会話能力。衰えれば、認知機能の低下にもつながる。この機会に一緒に鍛え直しませんか?

話を飽きずに聞いてもらう2つのテク

 話し方コンサルタント・神原さんが伝授! 「同じ話でも、聞き手の反応は変えられます」と神原さん。その具体的な方法を紹介する。

■ポイントは「語尾」と「間」

 会話には、語彙力や予測力などが必要だと前述したが、それは積み重ねがものをいう。一朝一夕には鍛えられないが、「すぐに人を引き付ける話し方ができる裏ワザもある」と、神原さんは言う。その方法とは、「語尾と間を工夫すること」

 さて、まずは例文の【A】【B】を声に出して読んでみてほしい。同じ内容だが、【B】の方が親しみやすく頭に入ってきやすいのではないだろうか。

【A】「このスープには、肉、じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、セロリが入っています(間)。つまり1杯で5種類の食材が食べられるのです」

【B】「このスープには「ね」、肉、じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、セロリが入っています。つまり(間)、1杯で「もね」、5種類の食材が食べられるのです」

◆語尾を入れる

「【A】と【B】の違いの1つは、名詞の後に“○○ってね”や“○○はね”という語尾を入れていること。これにより相手の気を引き、これからどのような話が続くのか興味を持ってもらえます」(神原さん・以下同)

 ただし、くだけた表現になってしまうので、目上の人に使うときは注意が必要だ。一方、誰が相手でも効果的なのが「間」だ。これは接続詞(つまり、だから、また、そしてなど)の後に、2秒程度の間を置くこと。これにより、後に来る言葉が印象付けられる。実際に声に出して読むと、緩急が生まれて話に引き込まれてしまう。

◆一文字を強調

「さらに相手の関心を引くためには、接続詞の最後の一文字を強調して発音してみることをおすすめします。例文だと、つまりの“り”を強く言ってみてください」

 やりすぎると耳障りになってしまうのでこちらも注意が必要。頼みごとなど、どうしても話を聞いてほしいときに使ってみよう。

おしゃべりスキルをCheck!

 こんな悩みがあったらおしゃべりスキルが落ちているかも?

□ なんだか気まずい。お互いが居心地よく感じる距離感で話せない

□ 何度も聞き返される

□ 発言に説得力がなく、自分の意見が通りにくい

□ 話が長い、わかりにくいと言われたことがある

□ 感情を込めて話しているつもりだが、淡々と聞こえてしまう

□ 人前で説明するとき、メモや資料ばかり見てしまい、自分の言葉で臨機応変に話せない

□ 最後まで話を聞いてもらえないことが多い

うまい話し方・実践会話集12選

 トラブルを避け、好感度を上げる話し方を、「職場」「家族」「友人」別に神原さんが教えてくれました。

【職場】の人との話し方

【ケース1】遅刻したとき

Before「電車が遅れて遅刻してしまいました。すみません」

After「申し訳ございません。電車の遅れが原因ですが私の責任です。これからは余裕をもって行動します」

●言い逃れせず、反省と今後の目標を伝える

 遅刻の際は、「謝罪→理由→責任の自覚→改善点」の順で伝えよう。相手に「この人は反省しており、言い逃れをしていない」という印象を与えることが大切。

「特に"改善点"は見落としがち。これは相手のためだけでなく、自分の決意表明にもなります」(神原さん・以下同)。

【ケース2】上司のミスを指摘

Before「この発注数、間違っています」

After「○○さんが書かれたこの発注数、もう一度ご確認いただけますか?」

●決定は相手に委ねて逆恨みを回避

 立場が上の人にミスを指摘するのは気まずいもの。

「ミスを発見したら相手に気づかせるように誘導を。それでも気づかなければ、“100ケースでは多いような気がしますが”などと遠回しに伝えて。ミスかどうかの決定権を相手に委ねると逆恨みを買うことも防げますよ」。

【ケース3】愚痴の対応

Before「本当にそうよね」

After「あなたは仕事をがんばっているから、えらいな~って思うわ」

●愚痴の原因を想像し、そこをほめる

 愚痴は同意していてもきりがない。

「原因を想像し、それに対してプラスの言葉を送るのがおすすめ。たとえば、“疲れた”と言われたら、その原因は“仕事をがんばった”ことにあります。その人はどう仕事をがんばり、あなたはどう思ったかを伝えると、相手の気持ちも晴れるでしょう」。

【ケース4】怒りへの対応

Before「‥‥(黙る)」or「申し訳ありません」

After「問題点をお聞かせください。今後、改善します」

●相手の意をくみつつ冷静に“理由”を聞く

 相手の怒りのエネルギーに押され、黙ったり、謝ったりすると、非が自分にあると認めることになり、立場が悪くなることも。

「相手の感情を受け止めつつ、冷静に怒りの理由を聞くこと。これにより、相手も論理的に考えられ、改善点を見つけられます」。

実践2:【家族】との話し方

【ケース1】家事のお願い

Before「ちょっと! さっき頼んだでしょ!! 何でやっておいてくれないのよ!」

After「19時までに皿洗いをしてもらえる? よろしくね! 頼りにしているよ」

●「頼りにしている」の一言が人を動かす

怒りのパワーで相手を屈服させようとしても逆効果。「大切なのは、具体的な作業内容と期限を伝えること。すべきことを明確にしたうえで“頼んだよ”の後に“いつも助かっているよ”などとつけ加えると、相手にやりがいと責任感が生まれます。やり終えたら“ありがとう”と感謝の気持ちを必ず伝えて」。

【ケース2】反対の意思を伝える

Before「やめておきなさい」or「ダメなものはダメ!」

After「私だったらこうするかな」

●主語を“私”にして参考意見として伝える

 「やりたい」と思ったことを反対されると、子供は自分を否定されたように受け取るもの。

「反対意見を伝えるときは、主語を“私”にしましょう。参考意見として相手に提案すれば、子供も"否定された"とは受け取りません。お互いに冷静に考えて話し合うと、着地点が見つかるはず」。

【ケース3】子供へのしつけ

Before「何やってたのよ‼」

After「残念だったね。どうしてこういう結果になったのか、考えてみよう」

●気持ちに寄り添いつつ「結果」について考えさせる

「何やってたの」などと言われると、子供は自分の怠慢を責められていると萎縮しがち。また、反省を通り越して、やる気をなくしたり反発する可能性も。「子供を責めるのではなく、結果にフォーカスを当てて、改善点を自ら考えさせるように導くことが大切です」。

【ケース4】不安要素を確認する

Before「仕事が大変なの? 大丈夫?」

After「仕事はどう? 何かできることはある?」

●イエスかノーでしか答えられない質問はしない!

 落ち込んでいる相手に対して「大丈夫?」と質問すれば、イエスかノーでしか答えられない。場合によっては、「大丈夫だよ」という答えを要求されているように感じ、問題を隠される可能性も。

「悪い予感や不安な要素があるときほど、相手が話せる状況を作ることが大切です」。

実践3:【友達】との話し方

【ケース1】ドタキャンの謝罪

Before「ごめんね。行けなくなってしまったの。この埋め合わせは必ずするから!」

After「ごめんね。せっかく時間を作ってくれたのに、○○で行けなくなってしまったの。でも、ぜひあなたに会いたいの。スケジュールを相談させてくれる?」

●相手に感謝し、会いたい気持ちを伝える

 ドタキャンは、貴重な時間を作って待っていた相手に対して失礼な行為。謝り方によっては絶交されることも。

「まずは謝罪をし、相手が自分のために割いてくれた労力に感謝しましょう。理由を伝え、“あなたに会いたい”という思いを伝えることが大切です」。余裕があれば再約束を。

【ケース2】悩み相談

Before「そうよね、わかるわ~…」

After「結果が出ないと悩み続けちゃうからつらいよね」

●「悩んでいる状態」に共感する

「悩みに対して共感し、言葉にして伝えることは、信頼につながる大切なことです。ただし、自分と相手の状況があまりに違うと不自然にとられる場合も。返答に困ったときは、何に悩んでいるかに着目し、“悩むこと自体がつらい”などと伝えるのもおすすめです」。

【ケース3】再会時のあいさつ

Before「久しぶり! 元気だった?」

After「元気そうね! 会えてうれしいわ!!」

●相手の「いま」に着目して話す

 「元気だった?」と聞くと、「実は病気をして」「悩みがあって」など、返答が難しい話題になることも。

「楽しい会話へつなげるには、相手の“いま”に着目。目の前にいる人の印象と、自分の感情をセットで伝えるのがおすすめ。身につけているモノを“素敵だね”とほめるのも◎」。

【ケース4】知らない話題の続け方

Before「ふ~ん、そうなんだ…」

After「知らなかったから私もチャレンジしたい。何がおすすめ?」

●知らなくても興味があると伝える  

 知らないことに対して「ふ~ん」「知らないんだよね」などと答えると、相手は自分を否定されたように受け取ってしまう。かといって知ったかぶりをしても、話は続かない。

「そんなときは、知らないなりに興味を持っているので、教えてほしいという意図を伝えるのがおすすめです」。

教えてくれた人

神原智己さん/話し方コンサルタント

取材・文/前川亜紀 漫画・イラスト/なとみみわ

※女性セブン2022年6月30日号
https://josei7.com/

●人に好かれる会話術|不快表現を言い換えて好感度アップする実例12

●ユマニチュードはなぜ、効果があるのか? ケアではない「人間関係」を築く技術

●60代女性が注意すべきメンタル不調 心の健康を保つ8つの方法を精神科医師が指南

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