「リハビリ」環境が充実している高齢者向けの住まい【まとめ】
オープン間近の話題の施設や評判の高いホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」。
高齢者向けの施設に期待される役割の1つに「リハビリ」がある。マシンを使ったパワーリハビリ、日常生活を通じて機能だけではなく生活行為全般を改善していく生活リハビリなど、高齢者のリハビリには様々な種類がある。今回はリハビリに力を入れている施設をピックアップしてご紹介していく。
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自立支援介護に実績のある介護付有料老人ホーム「ウェルケアガーデン久が原」
「ウェルケアガーデン久が原」を運営する株式会社サンケイビルウェルケアは「昨日より今日を元気に 今日より明日を元気に」をテーマに高齢者向け施設を運営し、お世話型の介護ではなく、自立支援介護を提供している。「入居時は車椅子だった入居者が歩けるようになった」「徘徊など認知症の周辺症状がなくなり、豊かな表情を取り戻した」など目に見える成果をあげているという。
同社はそうした自立支援介護の取り組みの一つとして、「パワーリハビリテーション」を導入している。パワーリハビリテーションは、専用のトレーニングマシンを用いて低負荷の動作を繰り返す運動のことだ。
機能訓練指導員の新木基之さんによると、高齢者が体をうまく動かせない原因として、脳から筋肉への指令がうまく出ていないことがあるという。「1、2、3…」のように一定のリズムで声を出しながら動作を繰り返すと、全身の眠っている神経や筋肉が呼び覚まされ、協調的な動きができるようになる。それが歩くこと、立つこと、座ること、寝返り…など日常生活での身のこなしや姿勢の改善につながるのだそう。
マシンを使ったトレーニングというと尻込みしてしまう高齢者もいるが、パワーリハビリは入浴よりも心臓への負荷が軽いのだそう。筋肉量を増やすのではなく、使われなくなった筋肉をうまく動かせるようにすることに主眼がおかれている。導入しているトレーニングマシンは、医療用として設計された専用のものだ。また、パワーリハビリのマシンではないが、脳卒中や脊髄損傷などで歩行が難しくなった場合や関節の負担を軽減する必要がある症例でも歩行訓練ができる「アンウェイシステム」も導入している。
「ベッドで寝ている時間が長くなると、だんだんと歩けなくなってしまう可能性があります。歩けるようになるためには、歩くことそのものをして、脳からの指令が正しく出るように運動学習することが必要です」(新木さん)
運営会社の理念、「昨日より今日を元気に 今日より明日を元気に」は想いだけではない。会社全体で改善実績を数値化して、チェックしているのだ。2014年4月から2016年10月の社内集計によると、要介護5から要支援2に5段階改善した入居者が2名いるという。他にも4段階改善が7名、3段階改善が4名、2段階改善が14名、1段階改善が65名という実績が出ている。
→自立支援介護に実績のある介護付有料老人ホーム<前編>を読む
→自立支援介護に実績のある介護付有料老人ホーム<後編>を読む
音楽療法に力を入れる小規模介護付有料老人ホーム「せらび有栖川」
「せらび有栖川」はリハビリに力を入れており、その一環として、音楽療法にも力を入れている。音楽療法には、心身機能や認知機能、社会性の維持・向上に効果があると言われている。
携わるスタッフは全員が専門の学校で学び、「音楽療法士」の資格を取得している。さらに介護士の資格も持っており、まさに音楽療法のプロが担当している。セッションには大きく分けて2つのパターンがある。1つは2~20数名向けのものだ。この場合は、複数のスタッフが分担して対応する。歌を歌ったり、様々な楽器を使ったりと音楽療法は楽しさも重要な要素だ。
そして、1対1の個人セッションも行っていて、居室でもできるのがうれしい。身体的、認知的な理由で集団への参加が難しい、特別な音楽の嗜好があるなどの場合に行っているという。実際、ピアノレッスンやジャズ、外国音楽といった限定されたジャンルの音楽を演奏したいというリクエストにも応じるなど手厚い個別対応をしている。また、発声や発語を促すプログラム、身体機能訓練に音楽を活用するなど、他にも様々なプログラムが用意されている。
「音楽療法士は外部から招くのではなく、社員として採用され仕事をしています。各ホームを飛び回っていますね」(ホーム長の小川健さん)
実際に音楽療法は入居者に人気があり、希望者も多いという。入居者が若い時の曲を聞くと、その頃の話が自然に出てくることもあるそうだ。クリスマス会などでは、入居者が日頃の練習の成果を見せる機会にもなっている。
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生活リハビリに力を入れた介護付有料老人ホーム「アズハイム光が丘」
「アズハイム光が丘」は健やかな生活の提案と機能訓練サービスの質の向上のためにセントラルスポーツ株式会社とパートナーシップを結んでいる。介護予防プログラムを取り入れた心地良い運動、リハビリテーションを通じて入居者の生活の質を高めているのだ。
オリジナル健康イス体操「チェアアクティブ」はアズハイムの全施設で提供されているもの。イスに座ったままで行うため、ひざや腰に不安がある方でも負担をかけずに、音楽に合わせながら、足腰の筋力を中心にバランスよく全身運動をすることができる。
アズハイムはリハビリにも力を入れており、柔道整復師の資格を持っている機能訓練指導員の佐藤正男さんが常勤で入居者のリハビリにあたっている。個別機能訓練で予定表はびっしりだという。
「生活リハビリにも力を入れています。車椅子の方にも食後に廊下を自走していただいたり、歩ける方は廊下を歩くなど自主トレーニングをしてもらっています」(佐藤さん)
スタッフが介助をしたほうが早くて効率的なことも多いが、生活リハビリを重視するために残っている能力を使ってもらっているのだという。
「何でもかんでもする介護ではなく、介助の際に手をつける方には手をついてもらったり、その方の残存能力を活かすようにしています。自分でできることは自分でしていただくことが重要なんです」(佐藤さん)
適切な生活リハビリができるのも、専門の資格を持った機能訓練指導員が常勤配置されているからだ。常に入居者の様子を見ていることで、より充実したリハビリ環境を作っていける。
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リハビリと食事が充実したサービス付き高齢者向け住宅「ドーミー亀有Levi」
昔から変わらぬ商店街や大規模な商業施設がある暮らしやすい亀有の街。共立メンテナンスが運営するドーミーシニアシリーズのサービス付き高齢者向け住宅「ドーミー亀有Levi」はJR常磐線亀有駅から徒歩12分、小学校や保育園にも程近い落ち着いた住宅街に2016年4月に開設された。
最も力を入れているというリハビリへの取り組みについて聞いてみた。リハビリには五感への刺激や自然・遊び・役割を取り入れたアクティビティケアを導入し、体を適度に動かすエクササイズを含め自由参加で”できる喜び”を感じてもらうことを大切にしているという。
併設のデイサービスもリハビリ強化型で、機能訓練指導員による個別リハビリや集団リハビリなどその人にあった機能訓練を行っている。身体機能の維持・向上に効果があるホグレルマシーンのゾーン、作業療法ゾーン、マッサージゾーン、小集団訓練ゾーン、フリーゾーンの6つのゾーンに分かれている。
→リハビリと食事が充実したサービス付き高齢者向け住宅<前編>を読む
→リハビリと食事が充実したサービス付き高齢者向け住宅<後編>を読む
いかがだっただろうか。リハビリといっても、施設によって設備や人員、取り入れている手法もそれぞれ違う。入居者自身がどのような生活を送りたいかを明確にし、それぞれの心身の状況に合わせて施設を選ぶことが必要そうだ。
撮影/津野貴生
※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
※過去の記事を元に再構成しています。サービス内容等が変わっていることもありますので、詳細については各施設にお問合せください。
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