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健康

80代高齢者が見る見る元気になったストレッチ「首伸ばし」を健康運動指導士が指南

 気づいたらいつも背中が丸まっている。ハッとして姿勢を正すも知らない間にまた猫背に。専門家曰く、悪い姿勢は健康面に多大な影響を及ぼすという。さらに、ハーバード大学の研究では、ネガティブな気持ちを引き起こしやすいという研究結果も出ている。悪い姿勢が少しでも改善するためにおすすめしたいのが、医学博士が教える2種類のストレッチだ。80代後半の背中にも変化が見られたというこのストレッチ、是非続けてやってみて欲しい。

悪い姿勢になる理由とデメリット

 高齢者に運動指導を行う健康運動指導士の鵜野俊哉さんはこう指摘する。

「高齢になると背中の筋力が衰え、肩が前に出て、前かがみの姿勢になりやすい。前重心になり、転倒しやすくなります。また、姿勢が悪くなると股関節の可動域が狭くなり、歩幅も狭くなる。すると動きも小さくなっていき、さらに筋力が衰え『ロコモティブシンドローム』になってしまうのです」

 ロコモティブシンドロームとは、身体運動にかかわる骨、筋肉、関節、神経などが衰え、立ち上がったり、歩いたりする能力が低下する状態のことを指す。最悪の場合は寝たきりになる可能性もある。胃酸や食べ物が逆流し食道が炎症を起こす「逆流性食道炎」も姿勢が悪い人に起こりやすいと言われている。

 また、姿勢の悪さが原因で首の位置がゆがむと、血液の流れが悪くなり、脳が活性化されにくくなる。それが認知症へつながる恐れもあります。こうした問題は、高齢者に限った話ではない。ロコモティブシンドロームは、“予備軍”と呼ばれる人々が40代から存在するといわれる。

★正しい姿勢の基準

胸を開いて立ち、耳たぶの下と、肩甲骨の先端である「肩峰」と呼ばれる肩先部分、「大転子」という股関節の横の出っ張り、くるぶしの4点が横から見たときに一直線になるのが理想的な姿勢とされる。

 

 

2種類の姿勢改善ストレッチ

 鵜野さんは、首の横を伸ばすだけでも姿勢の改善に充分効果があると話す。

「胸の前で両手をクロスさせたら、あごを上げ首の後ろを反らせる。これだけです。首の筋が伸びると、頭が正しい位置で安定するため、自然と姿勢がよくなります。さらに、首のこりが改善されることによって血流もよくなり、顔色が明るくなる。首のしわ予防にもなりますし、ほうれい線やあご回りもスッキリします。肩こりに悩んでいる人にもおすすめです」(鵜野さん)

【健康運動指導士おすすめ1】 首を伸ばすだけストレッチ

 首がこり固まって前に出ている状態を改善するストレッチ。このストレッチをした後に腰に手をあて、腰を後ろに反らせると楽に反るようになる。体が温まった風呂上がりなどに行うのがおすすめ。

【1】胸の前に両手をあてる。手を置く位置などは細かく気にしなくて構わない。手を胸の前にあてることで、より首の筋が伸びやすくなる。

【2】あごを上げて、首の前面の筋を伸ばす。気持ちいいと感じるところまであごを上げ、無理をしないこと。あまり長くやりすぎるとめまいがするので、5秒程度を目安に。

【3】顔を正面に戻して、首を左右に傾け、首の左右の筋を伸ばす。無理に伸ばそうとせず、気持ちいいと感じるところで止めること。片方につき5秒程度伸ばす。【2】、【3】を3回程度繰り返す。

肩を回すだけでも効果あり

 いすに座ったままでも行えるので、デスクワークの最中に取り入れたり、テレビを見ながらでもできる。山下さんによると、肩を回すだけでもいいという。

「腕を高く上げて、背中の方へぐるりと回して肩甲骨を動かします。両手を同時に回してもいいですし、背泳ぎのように交互に腕を回しても構いません。腕を回すとき、自然と姿勢がよくなる上、肩回りの筋肉がほぐれて肩こり解消になります」(山下さん)

上体を反らすストレッチで猫背解消へ

 うつ伏せになり、上体を反らすストレッチは、「マッケンジー体操」とも呼ばれ、世界で注目されている。

 医学博士の山下あきこさんは、

「理学療法に基づき、運動で腰痛や首の痛みに対処する『マッケンジー法(R)』という治療法があります。『魔法の治療』とも呼ばれていて、特に腰痛の改善に効果が期待できます。やり方は、うつ伏せに寝て、腕を使って上体を反らすだけ。体が痛ければ、腕は伸ばさず、ひじを立てるだけでもいい。猫背解消に効果的です」

【健康運動指導士おすすめ2】上体を反らすだけストレッチ

 猫背の解消、腰痛の軽減などに効果的とされるストレッチ。お腹、胸、背中など上半身全体の柔軟性が養われる。反らしすぎると腰を痛める危険があるので、無理なくできる範囲で行うこと。

【1】うつ伏せになり、両手を床につく。できる人は、指先が肩より前に出ないように後ろへ引いて手をつく。脇をしめて、しっかり肩甲骨を寄せると猫背や肩こり解消にも効果的。

【2】肩甲骨を寄せ、脇をしめたまま手で床を押して、胸が浮く程度まで体を持ち上げる。この段階で腰に痛みや違和感を感じる人は、この状態をキープするか、ひじを床についてもよい。

【3】無理なくできる人は、ゆっくりとひじを伸ばしきって上体を反らせる。視線は前を向いて首の後ろを上に伸ばすこと。心地よく伸びたところで10秒程度キープしたら、ゆっくりと【1】の体勢に戻る。

★上体が反らない人は、体の柔軟性が低下し、腰痛などのリスクが高くなっている。

 ジムへ通ったり、ジョギングを始めるのは億劫だが、これならば日課にするのも苦痛ではない。運動嫌いな人も、気軽に行えるはずだ。

80代後半の人もストレッチ効果で背筋に変化が!

 鵜野さんが言う。

「普段、私は80代後半の人の運動指導もしていますが、最初は背中が丸まって前かがみだった高齢の人も、ストレッチを続けることで全身がほぐれ、背筋が伸びていきます。背筋が伸びると、使われていなかった筋肉が使われるようになる。何才になっても筋肉は使えば使うほど鍛えられるので、背筋が伸びて筋力が上がった人は、見る見る元気になっていきます」

 ネガティブになることが増えた、なんとなく体調が悪い、老化を感じるという人は、姿勢の悪さが問題かもしれない。正しい姿勢は将来もずっと役に立つと信じて、難しいことは考えずに肩を回して首を伸ばそう!

教えてくれた人

鵜野俊哉さん/健康運動指導士、山下あきこさん/医学博士

イラスト/おしろゆうこ

※女性セブン2022年6月2日号
https://josei7.com/

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