日野原重明さん105才まで現役を支えた食事は「ビフテキ・うな重」 百寿者の健康術
人口あたりの100才の割合が全国で最も高く、自立している人も多いという島根県。その秘密は土地柄と仕事にあった。
・百寿者は農業のエキスパート
島根在住の百寿者は子供の頃から親を手伝って農作業をしてきた人が多く、足腰が鍛えられているうえ、知識と経験が豊富。100才を超えても自分で作った野菜を売ったり、土の作り方を近所の人に聞かれる人も。生きがいや役割づくりにつながっている。
・自然の多い道路
自然が多いゆえに舗装されていない道も。そういった場所を歩くのは、ジムのウオーキングマシン以上のトレーニングに。
・魚と野菜
暖流に乗ってさまざまな魚がやってくるうえ、自然が多く農作物も豊富。健康の根幹を成す魚と野菜がたっぷりの食事を摂っている人が多い。
日野原さんの日課はストレッチや体幹トレーニング
最期まで仕事に奔走していた日野原さんも医師という仕事柄、体を動かす重要性をよく理解していたようだ。
「病院経営はトラブルと隣り合わせでストレスも多いうえ忙しくて運動をする時間がとれなかったため、自宅でご家族の指導のもと、ストレッチをしていたそうです。バランスボールにも乗って体幹を鍛えていたとも聞いています」(久代さん)
室内でのトレーニングに加え、日野原さんは自分の足で移動することも意識しており、病院や地下鉄などのエスカレーターを駆け上がっていたとのエピソードが伝えられる。病院内で小走りしていたという目撃談も多い。佐々木さんは日常的に体を動かすことと健康長寿の相関関係は世界共通だと説明する。
「米国で行われた100才以上の人を対象とする研究では、長寿の人たちは身体機能や認知機能の衰えるスピードが遅く、がんや心血管疾患、脳卒中や認知症といった加齢に伴い発症する病気の発症も高齢になってから、という特徴が報告されています。つまり、身体・認知機能を保つために体を動かし、フレイルを予防することは寿命を延ばすための必須事項だといえます」(佐々木さん・以下同)
島根県民の自立せざるを得ない状況や日野原さんがさらされていたストレスも、健康長寿をつくる要素となる。
「社会的な役割や義務が課されていたり生活するうえで少し負荷がかかっているなど“適度なストレス”を感じている人の方が長生きできるという論文もあります。ストレス耐性がある人が長生きするという側面もありますが、まったく負荷のない完全に自由な生活よりも人から頼られたり果たすべき義務がある方が人生に張り合いが出るのは間違いありません」
藤井さんも「高齢になっても他人からあれこれ頼まれる人は長寿」と笑う。
「島根の100才は現役で働いている人が非常に多い。ひとり暮らしをしながら自ら作った野菜の販売まで手がける人や、娘さんから『料理の腕と、田畑の作り方はお母さんの経験にかなわないから』と言われていまも台所に立ち、田んぼで農家を指導する役割を担っている人もいます。近所の人が土の作り方を聞きに訪ねてくることも多いようです。そうなったらもう、周囲の人のためにも死ぬに死ねませんよね(笑い)」(藤井さん)