3代続く料理研究家・堀江家に学ぶ健康長寿の食事術12選「父は106才で亡くなる3日前まで夕食を完食」
料理研究家・堀江ひろ子さんのお父様は106才で亡くなる3日前まで自分の足で歩きご飯も完食していたという。そこで、100才まで元気に生きるための食事方法を堀江ひろ子さん&ほりえさわこさんと、専門家に伺った。
健康長寿一家、堀江家の食事の秘密
3代続く料理研究家一家の堀江家。初代・堀江泰子さんも、亡くなる94才まで病気知らずだったという。食にこだわってきたせいか、家族もみんな長寿。一体どんな食事を摂っているのだろうか。
家族全員同じものを食べる
「父は先日、106才9か月で急逝しましたが、亡くなる3日前まで自分の足で1000歩を歩き、夕食も完食していました。2年前に誤嚥(ごえん)性肺炎を発症してからペースト食でしたが、それまでは “ひ孫の手前、残せない”と、好き嫌いせず3食しっかり食べていました」(堀江ひろ子さん)
もちろん、硬いものは小さく切るなど、食べやすいよう工夫はしていたが、「野菜をたっぷり摂る」「満腹まで食べる」「無理して作らない」といった“マイルール”のもと、老いも若きも家族全員同じものを食べてきたのだという。
とろみをつけて食べやすく
「祖父の場合、ひき肉はボロボロして食べにくく、入れ歯に挟まるので、とろみをつけていました。高齢者の食事は、やわらかければいいというわけではなく、とろみが重要。とろみがあると飲み込みやすく、誤嚥もしにくくなります。
片栗粉でとろみをつけたり、納豆、とろろ、めかぶなどのネバネバ食材と合わせるのもおすすめです。チーズも、食材をまとめるつなぎの役割をしてくれるので便利ですよ」(ほりえさわこさん)
調理を工夫して、100才でも普通食を楽しむ、というのが堀江流だ。
家族全員一緒に食事を摂って見守り合う
「高齢になると、食べづらかったり、噛みにくかったりするだけで、一気に食事量が減ってしまいます。ですから、なるべくなら家族全員一緒に食事を摂り、異変がないか、不満や不安はないかなど、お互いに見守り合うのも、大切だと思います」(ひろ子さん)
食事がおいしくて、たくさん食べられれば、生きる気力もわいてくる。運動ができるのもしっかり食事を摂っているからといえる。とはいえ、作る側の負担になっては続かない。早いうちから夫や子供たちと料理を分担することも心がけよう。
100才まで元気に生きるための食事メソッド12
【メソッド1】さつまいもを食べよう!
「食物繊維には、腸内の不要物を絡めとって排出する役割があります。さらに、酪酸産生菌が酪酸を作るには食物繊維が必要。酪酸は有害な菌の増殖を抑制したり、肥満予防、炎症予防、免疫機能の調整などがあります。ですから、野菜やきのこ・海藻などの食物繊維を多く摂ることは大切。特にさつまいもは、ヤラビンという便通を促す成分が豊富なのでおすすめです。また、肉を食べるときは、肉1:野菜3を心がけて」(農学博士/辨野巳さん・以下同)
【メソッド2】快便エクササイズで便秘とおさらば
加齢とともに運動不足になると便秘になりやすくなる。これを防ぐには、1日約1万歩を目標に歩くことと、大腸まわりのインナーマッスルを鍛えるのが大切。下記を参考にしよう。
■STEP1
いすに座り、両足を肩幅に開いたら、ゆっくり片足ずつ太ももを上げる。左右各10回行う。
■STEP2
手のひらをお腹に当てて、腹式呼吸をしながら「の」の字を書くようにマッサージする。
【メソッド3】食べ合わせを考えよう!
便を“作る”食物繊維と、“育てる”発酵食品を同時に摂ると、長寿菌を効果的に増やせるという。下記の組み合わせを参考にしてみよう。
★長寿菌が増えるおすすめの食べ合わせ6★
【1】大和いも×納豆
【2】ブロッコリー×チーズ
【3】アスパラガス×チーズ
【4】ヨーグルト×キウイフルーツ
【5】ヨーグルト×ドライいちじく
【6】ヨーグルト×アーモンド×はちみつ
【メソッド4】うんちは黄~黄褐色が理想
うんちは腸内環境を知るバロメーターだという。
「うんちは、水分約80%、色は黄~黄褐色で、形はバナナ状が理想です。便秘を病気と思っていない人も多いですが、それは間違い。必ず毎日出し、状態をチェックしましょう」。
【メソッド5】腹八分? いえ満腹まで食べてよし!
堀江家の場合、夕食を軽めにしたり、糖質を制限したりなどは一切しない。毎日3食、満腹になるまでしっかり食べるのが基本。
「炭水化物がエネルギーとなり、たんぱく質が体を作って、野菜が体の調子を整えてくれます。食事は元気に直結しているので、3食しっかり食べなきゃパワーも出ない、というのが私の考えです。おかげさまで、私は売りさばきたいほど元気があり余っていますよ(笑い)」(さわこさん)。
「しっかり食べて胃腸を動かし、使い続けることで、消化吸収する能力も維持できます」(ひろ子さん)。
【メソッド6】すべての皿に野菜を入れる
「堀江家の食事は、とにかく野菜が多い。というのも、すべてのお皿に必ず野菜を入れるようにしているからです。たとえば、ぶりの照り焼きの下に生の春菊を山盛りに敷いたり、千切りキャベツの上に豚肉をのせたり、目玉焼きの横にはブロッコリーやトマトを添えています。
麻婆豆腐にもオクラ、パプリカ、ブロッコリー、アスパラガスなど、冷蔵庫にあった半端ものの野菜を細かく切って入れちゃいます。野菜はどんな料理にも合うし、加えればボリュームも出るし、見た目もカラフルになるので食欲も増します。もちろん栄養価も高く、食物繊維が豊富で便秘解消にもなる。入れない手はありません」(さわこさん)
【メソッド7】孫も曽祖父も同じものを食べる
食事は基本、そのとき家にいる家族全員で食べるのが堀江家のルール。年齢に関係なく、メニューもみんな同じだ。
「多いときは、孫から曽祖父まで9人で食べます。子供も老人も食べやすいものは同じ。わが家のとんカツは、厚切りではなく、薄切りをひと口大に折りたたんで作るのが定番です。大皿で出して、各自で小皿に取り分けるシステムですが、私は全員の取り皿を常にチェックしています。栄養バランスが悪ければ、最初から私が適量を盛り付けます」(さわこさん)。
【メソッド8】料理は無理して作らず夫(家族)を巻き込む
「食事作りはがんばりすぎなくていいんです。私は夕飯作りが面倒なときは、朝のうちに材料を切っておき、あとは煮るだけ、焼くだけにしておきます。あるいは家族を巻き込んで皮むきを手伝ってもらったり、得意料理を1つ2つ作ってもらうのもすごくいい。わが家も、仕事で私たちがいないときは夫が食事担当。孫4人分の昼ご飯を用意してくれます」(ひろ子さん)
【メソッド9】朝は残り物食材で作る具沢山スープ
朝からおかずをあれこれ作っていては大変で、食事作りがつらくなる。
「堀江家の朝食は、前日の残った野菜や煮物を使ってスープを作るのが定番。鍋に残り物食材を入れたら、トマト・豆乳・みそ・中華と、その日の気分に合わせて味を調えるだけ。飽きないし、栄養素もしっかり摂れるし、冷蔵庫も片付き、一石三鳥です」(さわこさん)。
夏場はスープがスムージーになる日もある。
「ざく切りの小松菜を冷凍しておいて、バナナやトマトと一緒にミキサーに入れるだけ。これもおすすめです」(ひろ子さん)。
【メソッド10】緑黄色野菜は毎食、食べるべし!
「ほうれん草、ブロッコリー、にんじんなどの緑黄色野菜は必ず冷蔵庫の中に入れていますし、それらが並ばない食事もありません。緑黄色野菜は免疫力を高めるビタミンやミネラルが豊富なので、特に意識して摂るようにしています。ほうれん草は1回の買い物で5袋は買います。買ってきたら全部切って茹でておくとあとがラク。乾いたキッチンペーパーを敷いた密閉容器に入れて保存しておくと傷みにくいですし、すぐ手軽に食べられて便利ですよ」(ひろ子さん)
【メソッド11】1日1回は卵料理を食べる
「卵はコレステロールが多いからと、敬遠する人もいますが、コレステロール不足も老化を早めるといわれています。ですから気にせず食べた方がいいと私は思います。卵は安くて栄養価も高いので、食べないと損です」(さわこさん)。
「亡くなった父も何十年も毎日卵を食べ続けていましたが、血中コレステロール値は常に正常。生活習慣病とも無縁でした」(ひろ子さん)。
卵を食べ忘れないためには、卵焼き、目玉焼き、スクランブルエッグ、オムレツなどを朝食に取り入れるのがおすすめだという。
【メソッド12】動けるうちにIHコンロに替える
「ガスコンロを使っている人は、IHへの切り替え、または卓上タイプのIHコンロを用意するのを検討してみてください。高齢になると、忘れっぽくなったり、火にかけっぱなしでよく鍋を焦がすようになります。これが油の入ったフライパンだと、火災など思わぬ事故につながる危険性もあります。高齢になってから道具を替えると、やり方が変わって戸惑うので、柔軟に対応できる若いうちに替えるのがおすすめです」(ひろ子さん)。
教えてくれた人
堀江ひろ子さん&ほりえさわこさん/料理研究家・栄養士
3代にわたって料理研究家。NHK『きょうの料理』ほか多数の料理番組で活躍。共著『100歳まで元気でボケない食事術』(主婦の友社)。
辨野義己さん/農学博士
辨野腸内フローラ研究所理事長。およそ半世紀にわたり腸内細菌の生態と分類に関する研究を続けてきた世界的権威。『「長寿菌」が増える食べ方』(三笠書房)など著書多数。
取材・文/上村久留美、鳥居優美 イラスト/さややん。
※女性セブン2022年4月28日号
https://josei7.com/
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