慢性便秘を招く“ねじれ腸”を解消する腸マッサージ法を医師が伝授「朝食前がおすすめ」
健康と美容のため、食事には気を使っているつもりなのに、昔よりもやせにくく、疲れやすくなってきたし、白髪や肌の乾燥も気になる…何をやっても不調が消えないのは、「内臓」が疲れているからかもしれない。消化吸収や解毒の力が落ちているなら、何を食べても改善しないのは当たり前だ。
特にこのコロナ禍では、外出自粛による運動不足やストレスで自律神経が乱れ、内臓の機能が落ちている人が増えている。
日本人の8割は腸がねじれて、落ちている
便秘外来医の水上健さんによれば、ここ最近で“コロナ便秘”ともいうべき人が激増したという。
「『痙攣性便秘』といって、ストレスで便の量が一時的に減ることがあります。“出ない”という不快感や焦りから、うつ病や不眠症に発展するケースもありますが、便の量が減ってトイレに行く回数が減るということは、感染リスクを減らすことにもつながる。強いストレスにさらされたときに体を守るための正常な反応なので、それほど大きな心配はありません」(水上さん・以下同)
痙攣性便秘はストレスの根源がなくなれば自然と解消する一方で、運動不足による便秘には注意が必要。充分に体を動かせていないと「ねじれ腸便秘」が悪化するからだ。
水上さんによれば、日本人の8割が、腸が複雑にねじれているという。
「内視鏡検査をする際、通常は数分で入れることができるのですが、腸がねじれていると、40分近く時間がかかります。入れるのが難しいということは、出すのも難しいということ。腸管がねじれて狭くなったところに便が引っかかるようにして便秘になるのです。そして、これは運動不足によって悪化します。自粛期間中は、本来は便秘になりにくいはずのアスリートが数多く便秘外来に訪れて驚きましたが、自粛が明けて練習を再開できるようになると、とたんに減りました。また、肩を前にすくめるような猫背の姿勢は、肺や腎臓、肝臓といった臓器を押し下げます。腸がそれらに押しつぶされると、さらに働きが悪くなる。テレワークの浸透で、ねじれ腸便秘が悪化している人も増えているでしょう」
「子供の頃から便秘がちだった」
「便秘でお腹が痛くなったことがある」
「便秘の後に下痢や軟便が出たことがある」
「もともと運動習慣があり、運動を休んだとたんに便秘になったことがある」
などに当てはまれば、あなたの便秘はねじれ腸が原因である可能性が高い。
ねじれ腸便秘で慢性的に便が残ると、腸が伸びてさらにねじれ、どんどん便が出にくくなる。そのため、いくら体によい食べ物を食べても、効果が半減してしまうのだ。
さらに恐ろしいのは、直腸につながるS状結腸にできた強いねじれによって便がたまって出なくなること。放っておくと腸ねん転を起こして、大腸の壊死などにもつながりかねない。水上さんによれば、この場合は命にかかわるケースもあり、治療には手術を必要とする。
ねじれた腸をほどいて4kgもやせた!
たかが便秘、されど便秘だ。水上さんは、このねじれ腸便秘を改善するためのマッサージを考案した。
まず、軽く両ひざを立てて仰向けになり、腰の下にクッションなどを敷いた姿勢で、腸を外側からマッサージする。人さし指から小指までを揃えてピンと伸ばし、トントンと腸を揺らすようにお腹を刺激するのだ。
「最初は、便が通りにくい“第一関門”の『下行(かこう)結腸』をゆるめます。おへその左下あたりから、約1分間刺激してください。その後、最も便が詰まりやすい『S状結腸』を揺らします。おへその左右に同様に指を揃えて当て、1分間刺激します。最後は、ねじれて下がった腸を押し上げるマッサージ。左右の太もものつけ根に両手を添え、大腸全体をユサユサと揺らしながら持ち上げるようなイメージでマッサージします」
■便秘解消、美肌・ダイエットも叶う「腸マッサージ」
【1】結腸のねじれを取る
仰向けになって両ひざを立て、腰の下に薄い枕や座布団、クッションなどを敷いた状態でスタート。指先を揃えて、おへその左下に右手、わき腹に左手を添え、腸を左右から揺らすイメージで上下に手を移動させながら1分間トントンと優しくマッサージする。
【2】下腹部のねじれを取る
指先を揃えておへその両側に添え、腸を左右から揺らすイメージで、上下に手を移動させながら1分間トントンと優しくマッサージする。
【3】「落下腸」を引き上げる
左右の太もものつけ根に両手を添え、大腸全体を持ち上げるようなイメージで優しくさすってマッサージする。力加減はお腹が少しへこむくらいがベスト。
腸のねじれをほどき、ねじれて落ち込んだ腸を引き上げることで、腸の動きをよくして、便秘の解消につながる。なかには、このマッサージで便秘が改善し、4㎏も体重が落ちた人や、10㎝もウエストが細くなった人もいるという。おすすめは朝食前。朝、お腹が空っぽのときに行うことで充分に腸を刺激できる。
「回数よりも毎日継続することが大切です。そして、マッサージは必ず優しく行うこと。また、便秘には大腸がんが隠れていることもあります。特に40才以上の場合は、たかが便秘とあなどらず、定期的に検診を受けるようにしてほしい」
教えてくれた人
水上健さん/久里浜医療センター内視鏡部長、横須賀タワークリニック外来医。
イラスト/飛鳥幸子
※女性セブン2022年3月17日号
https://josei7.com/
●人気漫画家・崎田ミナさんが描く「腸ほぐし」のやり方 お腹すっきり&冷えをリセット