「60才からの思春期」の愉しみ方|60~74才の15年はやりたいことに取り組める最後のチャンス
人生100年時代。世界一の長寿国である日本で、充実した長~いシニアライフを送るためには、「生きがい」が必要だが、どう見つけたらいいものか。その秘訣は、「好きなこと」を大いに愉(たの)しむことにある。すでに新しい生きがいを見つけ、実践している人たちの話にはヒントが満載だ。
『中年の思春期』を謳歌すべし!
昨年の10月、ツイッターで「中年の思春期」という言葉がつぶやかれ、話題になった。これは、40才を過ぎてから、突然新しいことにチャレンジすることを「思春期」と表現し、「楽しいから絶対みんなやった方がいい」とすすめたもので、読んだ人から「筋トレを始めた」「50才でバイクの免許を取った」「61才で初の推しができ、毎日ネットで追いかけて中国語の勉強を開始した」など、さまざまな思春期ツイートが集まった。
発信者であるあひるさんは、つぶやいた理由をこう語る。
「誰しも若い頃は、『きっといつかは何者かになる』といった漠然とした可能性を夢や希望として持っています。その後、仕事や生活に追われ、夢や希望はいったん忘れる人も多いですが、それらが一段落した40才前後になり、人生の着地点がぼんやりと見えてくると『いまならまだ、何かできるかもしれない』と焦り始め、突然、突拍子もないことに挑戦し始める。そんな人のことを『まるで思春期のように迷走しているな』と揶揄しつつ、背中を押したのがこのツイートです」
確かに人生を模索しながら何かに挑戦するのは「思春期」に似ている。そのワクワクドキドキしたいという気持ちは、さらに年齢を重ね、定年も過ぎ、人生の折り返し地点を過ぎた頃に再びやってくる。それが、「60才からの思春期」だ。
やりたいことに取り組める60~74才は『黄金の15年』
「60~74才をぼくは『黄金の15年』と呼んでいます。人生で自分のやりたいことに取り組める最後のチャンスです」
と言うのは、作家で神戸松蔭女子学院大学人間科学部教授の楠木新(あらた)さん。
「60才は多くの人が定年を迎える年です。昨今は、仕事から完全にリタイアする人は少なくても、この頃から家族の扶養義務は軽くなり、自分のために使える時間やお金も増えてくる。まだまだ元気で活動できる年代なので、ここから15年こそ楽しまないともったいないですね」(楠木さん・以下同)
とはいえ、仕事や家族の世話から解放された後の変化に戸惑う人も多い。どう楽しみを見つけたらいいのだろうか。
「これまでの自分の生活の中にある楽しみや、子供の頃に何が好きで、やり残したことはないか。または、何にコンプレックスがあったのかを思い出してみることです。その中からもう一度挑戦したいことや克服したいこと、人生を豊かにする何かが見つかるかもしれません」
やりたいことを1つに絞る必要はない。思いつくまま、気の向くまま次々に挑戦するのも「60才からの思春期」の楽しみだ。
取材・文/山下和恵 取材/廉屋友美乃 撮影/矢口和也
※女性セブン2022年3月24日号
https://josei7.com/
●新しいことへの挑戦が脳を活性化 ガラケーをスマホに替えたり音楽を聴くだけでもOK