幸せな看取りを全うした人に共通すること「頼れる医療従事者、相性のいいケアマネ、看取り士のサポート」
主張すべきところは主張し、周囲の手を借りられることが幸せな看取りへの第一歩だといえるだろう。とはいえ、いつも家族やスタッフの手を借りられる状況にあるとは限らない。そんなときに知っておきたいのが看取りの現場をサポートする「看取り士」の存在だ。日本看取り士会会長の柴田久美子さんが語る。
「最期を迎える本人には看取り士であることを伏せ、看護師などと名乗って寄り添い、声をかけて話を聞いたり、食事を作ったりします。時には『10年間会っていない長男を捜してほしい』といった依頼にも応えるなど、なるべく本人の希望を全うすべく尽力しています。
最も利用の多い1か月のプランでは、看取り士の卵がボランティアとして月90時間まで無償で寄り添い、看取りを支援します。『夜だけ見守りを変わってほしい』と家族が望む場合などは、枕元に連絡用の携帯電話を置いた看取り士が24時間いつでも駆けつけます」(柴田さん)
多くの人が迎える最期の時に寄り添ってきた柴田さんは、亡くなる人から“主導権”を奪ってはいけないと話す。
「よく在宅で看取るために待機している家族から、『夜寝ている間に息を引き取ってしまったらどうしよう』と相談されますが、そういうときは、『お母さん、一緒に寝ようね。明日また会いたいね』と寝る前に話しかけるよう伝えます。たとえその夜に旅立ちがあったとしても、それはお母さん自身が選ばれたこと。人は誰でも、自分の最期をプロデュースする『死ぬ力』を持っています。間に合わなかったではなく、見せたくなかったのかもしれない。だから安心して旅立ちを見送ってほしい。亡くなるかたに死を委ねる気持ちを持つべきだと思います」(柴田さん)
在宅死こそが幸せ―そう簡単に言い切れないことは確かだ。しかし生を全うすべく努力と準備を重ねることができたなら、きっと安らかな最期が待っているはずだ。
→看取り士が見守り、寄り添うことで本人も家族も豊かな最期が叶った実例
教えてくれた人
杉田かおるさん/女優、菊田あや子さん/タレント・リポーター、荘司輝昭さん/立川在宅ケアクリニック院長、中村明澄さん/向日葵クリニック・在宅医療専門家、柴田久美子さん/日本看取り士会・会長
文/池田道大
※女性セブン2022年3月24日号
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