ケアシューズの介護度別の特徴と選び方・脱ぎ履きを補助する際の注意ポイント
支援や介護が必要になった高齢者の足元を支えるケアシューズ。筋力の低下など体の状態で安定して歩けなくなった歩行をサポートする大切なものだ。そこで、福祉用具相談員の山上智史さんに、介護度に応じた正しいケアシューズの選び方や履き方を教えていただいた。
介護度別・ケアシューズの特徴と選び方
ケアシューズとは、高齢者や介護が必要な人の足や歩行に合わせて作られた靴で、さまざまなタイプがある。
「ケアシューズは、本人の体の状態や支援・介護度に合せて適切なものを選んでほしいのですが、介護度によっては、ご本人が選ぶのが難しいこともありますよね」と、山上さん。そこで、まずは家族が選ぶ場合の注意ポイントを解説いただいた。
要支援・要介護度は日常生活でどれぐらい介護や介助が必要かという介護の必要な度合いを示すもの。要支援1、2、要介護1~5の順で介護度が高くなり、介護サービスを利用する際の目安となる。
「ケアシューズを選ぶときは、介護度や現在の身体状況に合せることが大切です」(山上さん、以下同)
要支援など介護度が低い人は…
「要支援の方や介護度が低めの方は、積極的に歩くことやリハビリを想定した動きやすいケアシューズがおすすめです」
1.つま先が上がって蹴り上げがしやすいこと。
2.靴底がしっかりと硬いが、足指の付け根部が足の可動に合わせて曲げられること。
3.かかとが硬くてホールドしてくれること。
4.外出意欲にもつながるので、見た目がおしゃれであること。
5.外反母趾用・O脚傾向の人でも、長時間履いても負担が少ないこと。
介護度が上がってきたら…
「介護度が高く、車いすを利用したりベッドで過ごされる生活が中心の方には、介助がしやすいシューズをおすすめしています」
1.けが防止のため足をしっかり覆うもの。
2.ベッドに座った状態から車いすに移乗するときに踏ん張りがきくもの。
3.介助者が履かせやすく、脱がせやすいこと。
4.面ファスナーなどで調整でき足のむくみや外反母趾などに合わせられること。
室内履き用と外出用は使いわける?
「高齢者施設やデイサービスなどでの室内履きと、お散歩などの外出用とそれぞれ用意するといいでしょう。それぞれ特徴が少し違ってきます」
・室内履き用
柔らかい素材で室内の床(カーペット・畳)を傷めないソフトな靴底のもの。メッシュ素材で蒸れにくいものがおすすめ。
・外出履き用
濡れ・汚れに強い素材で、靴底が硬くつま先が上がっているもの。靴底素材はゴム・ラバーで滑りにくく、足が安定するように踵が硬くなっているものがおすすめ。
ケアシューズは介護保険の対象になる?
毎日履く消耗品なだけに、介護保険の対象だとよいのだが…。
「ケアシューズは、介護用品のカタログにも多く掲載されているのですが、介護保険の対象外。おむつや介護食といった日常的に消費するものも対象外となっています」
ケアシューズを履かせるときの注意ポイント
介助者がケアシューズの脱ぎ履きを手伝う場合に注意する点は、以下のようなポイントがある。
・安全を確保してから
「靴を履く際には片足ずつ上げてもらいます。ただし、足を上げる行動はバランス機能の低下した高齢者には危険がともないます。必ず椅子に座ってもらったり手すりにつかまってもらったりしてください。
椅子に座って脱ぎ履きをする際の注意点は、片足を上げると上肢の体幹は後ろに移動し後ろに倒れてしまうこともあります。背もたれがついた椅子を用意するか後ろが壁になっていて身体が倒れないかを確認してから行ってください」
・足の持ち上げ方に注意を
「足を上げる際には上からつかまないようにしましょう。足の甲や足首を上からわしづかみしてしまうのは本人にとって心地いいものではありません。相手の足を上げる際には下から支えるように持ち上げましょう」
できることは本人にやってもらう
「介護者がケアシューズを履かせるときに、本人ができることまでやってしまうのはおすすめできません。
つま先までは本人が入れられるのであればそこまではやってもらい、かかと部分の脱ぎ履きだけをお手伝いしましょう。やりすぎの介助は自立機能を低下させるだけでなく、不快感を与えてしまう場合もあります」
・素足で履かず靴下を履いてから
「ケアシューズを履くときは、靴下を履きましょう。その理由は2つ。
1つ目は、足の保護です。足の変形・傷・爪トラブルなどある方は靴を履くときに足を痛めたりすることがあります。足を守るためにも靴下を履いてもらいましょう。
2つ目は、サイズのミスマッチを防ぐためです。とくにフィッティングのとき裸足ですると、靴下を履いた際にきつくなってしまいます。特に冬の厚手靴下を履くとサイズ感が大きく変わります。普段良く履く靴下を着用して靴選びをしてください」
ケアシューズを履かせ方・脱がせ方の注意ポイント
・履かせるとき
「ベルトなどをすべて緩めた状態で、つま先から足を入れます。つま先が奥に入ったことを確認してからかかとを入れます。
つま先が奥に入っていないのに無理やりかかとを入れようとすると指に負荷がかかり、けがをさせてしまうことも。特に外反母趾の方や爪が割れている方などは無理に履かせると大けがにもつながるので注意が必要です」
・脱がせるとき
「ベルトなどをすべて緩めた状態で、かかとから外します。脱がせる際に足を高く持ち上げてしまうと、太ももの裏の筋肉が引ひっぱられて後ろにのけぞってしまい転倒につながります。
なるべく足を上に大きく持ち上げないようにしてかかとを外し、つま先側にスルッっと引き抜いてください」
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第2の心臓ともいわれる足。本人に合ったケアシューズを選ぶことはもちろん、履き方や脱ぎ方まで心配りを。正しいものを選ぶことが、介護する人もされる人にとっても大切なことだ。
教えてくれた人
福祉用具専門相談員・山上智史さん
福祉用具貸与事業所にて介護福祉士として介護現場を経験。現在は福祉用具貸与事業所「K-WORKER」と便利屋事業(住まいるサポート)の管理者を務める。福祉用具専門相談員としての現場経験をいかした「高齢者在宅の自立支援・介助者負担の軽減を目的とした介適環境づくり」を実践している。https://k-worker.co.jp/
取材・文/本上夕貴
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