季節性の便秘に要注意!原因と対処法|寒暖差の激しい季節に起こる「不腸」とは?
「暑さ寒さも彼岸まで」と昔から言われる通り、猛暑だった夏が過ぎ、すっかり朝夕の肌寒さが気になる時期になってきた。毎年10月は、日中は汗ばむような陽気でも、朝晩は冷え込み、1日の気温差が激しいのが特徴だ。
季節の変わり目には体調を崩しやすいという人も目立つ。
「気温や気候の変化が激しいと、便秘や慢性便秘の悪化が起こりやすく、注意が必要です」
と話すのは、松生クリニック院長、松生恒夫先生だ。松生先生は、30年にわたり4万人の腸を診てきた腸のスペシャリスト。
松生先生に、季節と便秘の関係について教えていただいた。
女性に多くみられる「便秘」が季節の変わり目に悪化
「寒暖差が激しい季節になると、私のクリニックに便秘の症状を訴えくる患者さんが急増します」と松生先生。
もともと便秘の症状を訴えるのは、女性の方が多いというデータもある(厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」より)が、特に気温が変わりやすい時期になると排便する力が低下すると松生先生は語る。
「排便力が低下すると、腹部膨満感、硬便などのつらい症状を訴えてきます」(松生先生、以下同)
では、なぜ季節の変わり目にこういった便秘症状が出てくるのだろうか。
気温と自律神経の関係
「人間の体には恒常性(ホメオスタシス)という常に体温などを一定に保つ機能があります。例えば、気温が上昇すると、汗を出して体温を調整するなどの機能が恒常性です。
恒常性をコントロールしているのが自律神経で、腸の動きと大きくかかわりがあるのです。気温に10℃以上の差が出ると、体に緊張が強いられ自律神経の交感神経が優位になりやすく、腸の動きが悪くなります。寒暖差が激しく気が付かぬうちに自利神経のバランスが崩れて“無意識不腸”になっている場合があります」
「不腸」の原因はさまざま
気温差や活動量の低下以外にも、さまざまな原因が合わさって「不腸」は引き起こされる。
今年は特に、コロナ禍によってとにかく家にいる時間が多かったはず。家に長くいることで身体的 な活動量が低下し、腸の動きも鈍くなり腸内環境が乱れるとういう。ほかにも、食事に手間をかけたくないがゆえに同じようなものを食べてしまいがちになり、栄養バランスの崩れが生じてしまうことなども不腸の原因になる
「不腸」を改善する方法
季節が影響で起こる便秘の改善を助けてくる食べ物として、おすすめなのはずばり「キウイフルーツ」だという。
●朝3個のキウイフルーツで便が通常に
「私のクリニックの患者さんのなかで、下剤をちょっと服用すると下痢になりやすいし、かといってまったく服用しないと排便が困難になってしまうという方がいました。
そこで、朝食時に他の食べ物を減らし、3個のキウイフルーツを摂ることをすすめたところ、硬かった便が通常便になった例があります」
他にも海外の論文で、「健常者にキウイフルーツ2個を1日2回(計4個/1日)を食べさせたところ、排便頻度、硬さの軟らかい便が増加した」という研究結果(※1)もあるという。
※グリーンキウイでの実験
すぐれた「キウイフルーツの成分」に注目
キウイフルーツに含まれる食物繊維は、水溶性食物繊維のペクチンや不溶性食物繊維のセルロースなどで構成されている。
キウイフルーツの不溶性食物繊維は、1gあたり約12~13gの水を保持でき、この保水量は、リンゴやオレンジなどの食物繊維よりも高いことがわかっている(※2)。
※2 So,s IM,Monro JA,:Adv Food Nutr Res 2013;68:88-99
「キウイフルーツは、食物繊維が豊富なことに加え、主要な17種類の栄養素がどれだけ含まれているかを比較した栄養素充足率スコアでも、身近な果物の中のトップクラスです。ビタミンはもちろん、カリウムやたんぱく質分解酵素のアクチニジンなども含む高栄養素でバランスのいい果物です」
免疫力アップ対策にもおすすめ
またこれから冬に向かい、新型コロナウイルス以外にもインフルエンザなど、感染の心配がつきないこの頃、引き続き免疫力を高めることも重要だ。
腸内環境と免疫力には、密接な関係があると松生先生は語る。
「腸にはたくさんの免疫細胞が集まっているので、腸内環境と免疫には密接な関わりがあります。腸にいいのは、乳酸菌などの善玉菌というイメージが強いですが、実は食物繊維も重要な役割を果たしています。今、特に注目されているのが“酪酸”です。善玉菌が食物繊維を取り込むことにより腸内で発酵が起こります。その発酵過程で作られるのが酪酸。この酪酸を作りだす善玉菌が活性化することで、悪玉菌の割合を少なくします。こうすることで、腸内環境が整います」
キウイフルーツはどこでも手軽に手に入れることができ、半分にカットするだけで食べられることも日頃の食生活に取り入れやすい理由だ。
教えてくれた人
松生恒夫(まついけ・つねお)さん/松生クリニック院長。医学博士。日本内か学会認定医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化器学会認定専門医。最新著に『「腸寿」で老いを防ぐ:寒暖差を乗りきる新養生法』(平凡社新書)がある。
構成・文/介護ポストセブン編集部