約3人に1人が抱えている子宮筋腫 放置か摘出かの判断基準と最新手術法、体験談も【医師監修】
子宮筋腫は、子宮の筋肉にできる良性の腫瘍。約3人に1人が抱えているという。筋腫の種類や大きさ、できた場所によっては手術しなければならないが、その判断は年々変わってきているという。専門家の医師による症状の解説と、芸能人も経験している最新手術法を紹介します。
50代以降の腰痛や頻尿・便秘、実は子宮筋腫のせいかも
子宮筋腫が発生する原因ははっきりとわかってはいないが、エストロゲンという女性ホルモンの影響を大きく受けるといわれる。30~40代でいちばん発生しやすく、一般的には女性ホルモンが減少する閉経とともに小さくなるとされている。しかし、50代以降も決して安心できないという。純子ウイメンズクリニック自由が丘院長・矢内原純子さんが言う。
「もともとの子宮筋腫が大きいまま放置していた場合、50代以降も子宮筋腫による症状に悩まされる人が少なくありません。腫瘍が膀胱や骨盤内の臓器を圧迫すると、頻尿や便秘もそうですが、下半身のしびれの原因になることもあります。しかし、50代以降の方だと、老化や別の疾患による不調だと思い込み、子宮筋腫に気づかないまま悩みを抱えている人もいます」
ひどい腰痛の原因が子宮筋腫だったというのは埼玉県の吉田涼子さん(50才・仮名)だ。
「30代の頃から腰痛持ちでした。婦人科検診で10cmほどの筋腫を指摘されていましたが生理痛が重かったわけでもないですし、手術も怖くて放っていたんです。3年前の検診では8cmほどと、やや小さくなっていたのですが、腰痛に変化はなくて。ある検診で子宮筋腫が原因ではないかと言われ、昨年、腹腔鏡手術で切除しました。以来、腰痛はぴたりと治まりました」
子宮筋腫 放置・摘出の判断基準
一方で、子宮筋腫の摘出手術を受け、その後「下腹部痛がある」などの後遺症に悩む人もいる。また、どんな簡易な子宮筋腫の手術だとしても全身麻酔をかけて行うなかで麻酔や手術の合併症を引き起こす可能性もある。経過観察をしながら“放置”すべきか、摘出すべきか、どう見極めればいいのだろうか。
「ひと昔前までは、腫瘍がこぶし大になったら手術をした方がいい、などといわれていましたが、最近では大きさだけでは判断しません。
・子宮筋腫ができた場所
・妊娠を望む年代か
・閉経までの期間
・自覚症状があるかどうか
などで判断します。そのうえで、経過観察するのか、薬でエストロゲンの量を抑え縮小させる治療をするのか、手術で筋腫を摘出するのかを決定します」(レディースクリニック市ヶ尾院長・高橋誠治さん)
子宮の外か内か
子宮筋腫はできる場所によって症状や治療法が大きく異なる。最も症状が出づらいのは子宮の外側にできる「漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)」。腫瘍が赤ちゃんの頭ほどの大きさになっても、気づかない人もいるほどだが、日常生活に支障はなく、基本的に自覚症状がなければ“放置”で問題ない。
一方、子宮の内側にできる「粘膜下筋腫」は、不正出血や不妊症の原因になる可能性が高く、1cmほどの大きさでも痛みなどの症状が強く出ることがあるため、摘出するケースが多い。
また、子宮の筋肉の中にできる「筋層内筋腫」は、受精卵の着床部分が変形することもあり、流産・早産の原因になりやすい。妊娠を望む場合、摘出手術をすすめられることがある。
40代、50代で手術を決断した人の声
同様に、放置か摘出かの境界線の1つとなるのは年齢だ。
「20代や30代で妊娠を望む場合、検診で見つかった筋腫が小さかったとしても、場所によっては切除することがあります。
一方で、40代後半などで閉経が近い場合は経過観察を続ける場合も。ただし、閉経後の50代や60代以降の女性でも症状が強く出ている場合は切除すべきです」(矢内原さん)
神奈川県の中村智子さん(52才・仮名)が異変を感じたのは4年前。細身体形の彼女はこれまで、お腹にたるみを感じたことはなかったが、急に下腹部がぽっこりと出始めたという。次第に、お腹の膨らみは硬くなり、便秘と下痢を繰り返すように。検査を受けたところ、子宮の外側に10cm以上の子宮筋腫が見つかった。
「体形の変化も気になったうえ、ひどい便秘もあり手術を決断しました。まさか長年悩まされた便秘が筋腫のせいだとは…。10cmの筋腫だけでなく、ほかにも複数の筋腫があったので子宮全摘を選びました」
新木良子さん(48才・仮名)も手術を決断した1人だ。
「膀胱に近い場所に筋腫ができたことで1日に15回以上、トイレに立つほどの頻尿に。階段を下りるときに、衝撃で尿漏れしてしまうこともあり、外出も億劫になってしまって。お腹に小さな穴を開け、カメラやメスを入れて行う、腹腔鏡手術で筋腫を摘出しました。術後4日目には退院できて驚きました」
4日から約1週間の入院が必要だが、腹腔鏡手術は開腹手術に比べ、体の負担が少ないといえる。子宮筋腫の症状に日常的に悩まされているのであれば、手術を受けることも選択の1つだ。
「たとえば、検診で子宮筋腫を指摘されていて、下腹部が張るような違和感や腰痛、頻尿、便秘、経血量の増加、貧血などの不調があれば、治療を考えて医師に相談してください。治療をするかどうかは、一概に筋腫の大きさではなく、自覚症状が決め手となります。普段から自分の体調を気にかけておきましょう」(高橋さん)
中山美穂さんも受けた子宮筋腫の最新手術法
子宮筋腫で苦労した芸能人も多くいる。
早見優(55才)は2017年に腹腔鏡下手術で腫瘍を摘出。長年経過観察を続けていたが、急に大きくなり、不正出血や頻繁に腰に激痛が走るなどの症状が表れたため、手術を決断したという。
体にメスを入れない方法で、腫瘍を小さくした人も。
中山美穂(51才)は、40代前半で子宮動脈塞栓術 (UAE)を選択。足の付け根の血管からカテーテルを入れ、子宮動脈に詰め物を注入。動脈を塞いで血流を遮断し、徐々に腫瘍を縮小させた。この方法は、開腹や腹腔鏡による手術と比べて入院期間が短く、体への負担が少ないのがメリットだ。彼女たちは皆、手術を経て症状が大きく改善したという。
撮影/浅野剛 写真/産経新聞社 イラスト/藤井昌子
※女性セブン2021年12月16日号
https://josei7.com/
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