70代高齢者の貧困を考える 実録ルポ「貯金がなくても楽しい暮らし実践する人々の知恵と工夫」
「老後ひとりの生活資金が不安」「貯金が底をつき生活が苦しい…」。年金は減少し、生活保護世帯における高齢世帯の割合が増える今、高齢者に忍び寄る「貧困」は他人事ではない。貧困をテーマに取材を続けている記者が、シニアと貧困についてリサーチした。
高齢者世帯に忍び寄る「貧困」
「年金だけでは老後の生活費が足りない」「伴侶に先立たれこのままひとりどうやって暮らしていけばいいのか…」。メディアには「下流老人」「貧困老人」なる言葉も登場し、老後の不安は募るばかり。
老後の暮らしを守るはずの年金だが、受給額はじわじわと減少。実際、厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は、2019年には14万6162円となっており、10年前の15万3344円と比べると、7000円以上も減っている。
また、国民年金は、月額5万6049円(2019年)で、ほぼ横ばいが続いている。物価が上昇しているのに、年金が減り続けているのは、年金頼みの高齢者にとって深刻な問題といえるだろう。
生活保護受給の理由は「貯金がない」
さらに、生活保護を受けている高齢者世帯の割合が年々増加しているのも気になるところ。
生活保護世帯における高齢者世帯の割合は、1998年(平成10年)に40%台だったが、2018年(平成30年)には60%台を超え、過去20年で2割以上増えている。
参考/厚生労働省「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」、厚生労働省「平成16年度社会保険事業の概況」、国立社会保障・人口問題研究所「世帯類型別被保護世帯数及び世帯保護率の年次推移」
生活保護の需給を開始した理由については、「貯金等の減少・喪失」が約4割と最も多かった。
人生100年時代、寿命が延びて貯金が底をつき、年金だけの暮らしとなると、生活を切り詰める必要が出てくるというわけだ。
「貧困」気にせず明るく生きる70代高齢者の実話2選
老後の「貧困」は他人事ではないが、お金はなくても明るく楽しく暮らしている高齢者が、記者の回りにはたくさんいる。
数年前まで東京で暮らしていた記者は、若者からシニア層まで多くの貧困層を取材してきた。月3万円の家賃の支払いに苦労する若者、汚部屋で暮らすシニア男性など、貧困にあえぐ人々の暮らしを目の当たりにしてきた。しかし、東京を離れ、海が見える温暖な地域に移住してみたら、そこには、また別の現実があった。
以下で実際の声を紹介する。