猫が母になつきません 第266話「おいておく」
机の上にポツンとセミ。なかなかシュールな光景です。窓は閉まっていたのでセミが自分で入りこんでしまうことはない。私がいない間に猫が机の上に置いたらしい。いつもお土産はお断りしているのに…。ネズミだの鳥だの大物をいろいろ狩ってくるわびに対して、さびはトカゲ専門で必ず生け捕りにして持って帰ります。それを私がまた外に逃すというトカゲにはかなり迷惑なキャッチ&リリースが繰り返されてきました。しかし最近さびは私がトカゲが好きではないのだ、だから喜んでくれないんだ、と思い至ったらしく、先日初めてスズメを捕ってきました。トカゲ一辺倒からの方針転換に驚きながら大急ぎで鳥を離させる、という事があってからのセミ。さびはスズメを口にくわえていると家にいれてもらえないとわかって、もっと小さなセミを捕まえてどこかに隠しておいて、サプライズで机の上に置いてくれたのでしょう。家事おつかれさま、セミでもどうぞ。どこかに隠れて私の反応を見ているのかも。机の上で裏返しになっているセミ、はたして生きているのか?死んでいるのか? 実はそれを見分ける方法があります。脚が開いている状態なら生きていて、折りたたんだように閉じていたら死んでいる確率が高いのです。そのセミは脚全開、私が両手で囲うようにして捕まえると手の中でバタバタと羽を動かし、窓外に放すと遠くへ飛んで行きました。短い夏に無駄な時間とらせて悪かったね。
【関連の回】
第60話「もちかえる」
第96話「つかまえる」
第142話「みせにくる」
第154話「れんしゅうする」
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。