この漢字なんて読む?「たま」ではありません|不思議な漢字クイズ3選
『ながめて楽しい 漢字5万字』という商品が話題だ。文字通り、5万字もの漢字が掲載されているポスター状のものだが、よく見ると、見慣れない漢字が交じっている…。『ながめて楽しい 漢字5万字』の中から、飛び出し、はみ出し、位置のズレ…わずかに違う3つの謎の漢字を紹介する。なんて読む?意味は?
問題1:よっぽど焦ってた?「急」ではありません
音読みは「キュウ」。「ヨ」の部分が突き出たようなこの字は「急」の旧字体。
1946年の「当用漢字」制定の後、突き出ていた部分がなくなり、「ヨ」の形となった。「雪」や「掃」なども同様の経緯をたどった漢字だ。
ちなみに、「当用」とは「さしあたって用いる」という意味。1981年、常用漢字表の制定に伴い、当用漢字は廃止された。
問題2:「灰」に似ているが…
音読みは「カイ」。「灰」の旧字体。いまは上にも横にも飛び出さないが、戦前まではこれが正しいとされていた。
問題3:「玉」かと思いきや「、」の位置が違う!?
「王」に点をつけて、「きずのついた玉(玉にきず)」を表している。音読みは「キュウ」。
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『ながめて楽しい 漢字5万字』が話題
英語であればアルファベット26字(大文字・小文字合わせても52字)で言葉を表現するが、漢字の字数はそれをはるかに上回る。
漢字は2000年ほど前の弥生時代、中国から日本に伝わったと考えられている。当時著された中国最古の字書(漢字の読みや意味を解説した書物)『説文解字(せつもんかいじ)』には、約9000字が収められているが、私たちがいま、日常的に使っているのは約3000字。
大別すると3種類で、小学校で学ぶ「教育漢字」(1026字)、日常的に使われる「常用漢字」(2136字。「教育漢字」を含む)、「人名用漢字」(常用漢字以外で子の名に使える漢字。863字)だ。
ふだん使う漢字はその3000字ほどだが、『ながめて楽しい 漢字5万字』は、その18倍もの文字数が掲載されている。編集を担当した大修館書店の池田菜穂子さんが言う。
「弊社の『大漢和辞典』は世界最大の漢和辞典で、全15巻から成り、5万1110字を掲載していますが、『漢字5万字』は同辞典をベースにしています。記号やイラストのような字もたくさんあるので、『これも漢字?』と驚いたり、『こんな画数の多い字をなぜ作ったのだろう?』と疑問に思ったりすることと思います。
これだけ多くの字が中国の歴史的な書物に記され、そのなかの一握りの文字が現代日本の言語を支えている。
そんな歴史の重みや経過をしみじみと感じることができます。見慣れない文字がたくさんありますが、そういった文字がいまの言語生活の背景にあるのです」
教えてくれた人
大修館書店・池田菜穂子さん/『ながめて楽しい 漢字5万字』の担当編集者
監修・漢字解説
笹原宏之さん/早稲田大学社会科学総合学術院教授。文化庁文化審議会国語分科会で常用漢字の選定・改定作業に携わる。『日本の漢字』(岩波新書)、『謎の漢字-由来と変遷を調べてみれば』(中公新書)、『漢字は生きている クイズ120問』(東京新聞)など著書多数。
取材・文/藤岡加奈子 写真/GettyImages
※女性セブン2021年4月15日号
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