血管をよみがえらせる食事「プラントベースのホールフード」とは?クリントン元大統領も実践|医師が解説
体の不調は、食べたものが原因となって引き起こされることがほとんどだ。一方で、食べ物のおかげで元気を取り戻すことも可能だ。アメリカの著名な医学博士が提案する最強の食事法を試せば、誰でも病気知らずの体になれる!
血管のつまりを消す食事で元米大統領も心臓病を克服
日本国内で年間約20万人が命を奪われ、死亡原因1位のがんに次ぐ死因となっているのが心臓病だ。アメリカでは心臓病が死因のトップのため、日本以上に深刻な問題となっている。
大統領就任前から、ステーキやフライドポテトなどが大好きだったビル・クリントン米元大統領(74才)も、肥満が引き金となり、2004年と2010年に心臓病を発症して手術を受けている。
一命は取りとめたものの、一人娘のチェルシーさんから「やせなければ、一緒にバージンロードを歩かない」と言われ、ダイエットを決意した。そして、ある食事法に切り替えたところ、3か月足らずで11㎏もの減量に成功したのだ。主治医は、「もう心臓発作を起こすことはないだろう」と太鼓判を押したという。やがてこの食事法は「劇的減量、心臓病克服の救い主」として全米に知られることとなり、セレブたちもこぞって取り入れるようになった。
アメリカの医学博士が提唱する「プラントベースのホールフード」とは?
クリントン元大統領をよみがえらせ、健康志向の強いセレブの心をつかんだのが、アメリカの著名な医学博士・エセルスティンさんが提唱する「プラントベースのホールフード」だ。
著書『血管をよみがえらせる食事』(ユサブル刊)には、その方法が詳しく記されている。翻訳と日本語版の監修を担当した日本ナチュラル・ハイジーン普及協会会長の松田麻美子さんは、その画期的なダイエットについて、こう解説する。
「プラントベースのホールフードとは、『植物性の未精製食品』のこと。野菜や果物、穀物、豆類、木の実などを精製加工せず丸ごと食べることが特徴です」
エセルスティンさんの著書では、心臓病によって命の危機にあった人々が、食事改善によって元気になったという症例が複数紹介されている。
松田さん自身も、そんな回復劇を目の当たりにしている。
「私の父は40代の頃から血圧が高く、薬をのみ続けていたのですが、70才を過ぎるまで頭痛やふらつきなどの副作用に悩まされていました。やがて、ひざに水がたまったことで歩けなくなり、家にこもるようになってしまった。そのとき、私のすすめでプラントベースの食事に変えたところ、翌日には便秘が解消、血圧も瞬く間に下がって、薬が不要になりました。5か月後には1日1万歩も歩けるようになった父は美術館に再就職し、みるみる若返っていきました」
その後、80才を過ぎるまでプラントベースの食事を続けていた松田さんの父だが、夏休み中、来客や旅行などで、2か月間だけ昔と同じ食事をふた夏続けてしまった。すると脳梗塞を起こして右手足が麻痺し、車いす生活となった。
「老人ホームに入所しましたが、便秘、薬の副作用などで不快な毎日を送っていました。改善にはプラントベースの食事が不可欠とはいえ、老人ホームの食事では難しいと考え、プラントベースの食事を実践している英ロンドン在住の妹の家へ引っ越しました。すると、便秘や高血圧はすぐに解消し、徹底したリハビリのおかげもありますが、1か月後には歩行器を使って歩けるようになったのです。それからは、3人の孫の学校やクラブのイベントに参加したり、広大なショッピングセンターで妹家族と買い物をしたり、86才で眠っている間に亡くなるまで人生をエンジョイしていました」(松田さん)
薬でも手術でもなく、食事が人生を変えたのだ。
女性の4割に動脈硬化の危険
エセルスティンさんが提唱する食事法を紹介する前に知っておきたいのは、私たちが日常的に口にしているジャンクフードや肉中心の食事、加工食品などが、いかに血管にダメージを与えているかということだ。内科医の近藤千種さんが指摘する。
「『人は血管から老いる』という言葉もあるように、不健康な食事や生活習慣は、血管に顕著に表れます。日本人の食事は、従来の和食から欧米的なものに変わり、カロリーや脂質が高く、野菜が少ない食事へと変化しました。それによって高血糖、高血圧の人が著しく増加し、血管にストレスをかけ続けています」
40~74才の日本人女性の4割は高血圧症だといわれている。高血圧は放置すると動脈硬化を起こし、命にかかわる病気へとつながる。
「動脈硬化を起こした血管は使い古したゴムホースのようにかたく、もろいため、血管がつまったり破れやすくなります。動脈硬化が進むと心不全や狭心症、心筋梗塞などの心臓血管系の病気や脳出血、脳梗塞の原因となったりします」(近藤さん)
しかし、動脈硬化を起こした血管でも、食生活の改善によっては、つまり知らずの血管に若返らせることが可能だという。
では、その奇跡のような食事法を詳しく見ていこう。
「顔と母親」があるものは食べてはいけない
エセルスティンさんの研究では、「顔と母親があるもの」「乳製品」「油」「精製穀物」「ナッツ類」は避けるべきだと記されている。
「顔と母親があるもの」とは牛、豚などすべての肉類や、すべての魚、卵などが含まれる。松田さんが言う。
「動物性食品や油を摂取すると、その後6時間にわたって血管の内皮細胞の弾力性が失われてしまいます。すると血流が滞り、血圧やコレステロール値が上昇し、動脈硬化の原因になる。
魚はヘルシーだという印象があるかもしれませんが、コレステロールの量は肉と同等かそれ以上です」
和食には欠かせない食材だが、完全に断った方がいいのだろうか。
「米ハーバード大学の研究結果では、魚に多く含まれる多価不飽和脂肪酸が悪玉コレステロール値を下げると評価し、週に1~3回食べると心臓病による死亡リスクが減少するとされています。その一方、さんま、鮭など、脂がのった魚は週に4回未満にとどめた方がいいという専門家の指摘もあります。健康にいいとはいえ、食べすぎは控えるべきです」(近藤さん)
「精製穀物」とは、白米、白いパン、白いパスタなど、いわゆる「白い炭水化物」を指す。
「これらは精製する段階で、食物繊維をはじめ、ファイトケミカル、ビタミン、ミネラルなどのほとんどが取り除かれています」(松田さん・以下同)
栄養素が豊富なナッツも、魚と同じく健康にいいイメージが強い。ヘルシーな生活を送る人ほど、積極的に食べているはずだ。特に、くるみには良質な油であるオメガ3脂肪酸が豊富だが、カロリーが高く、少量でもカロリーオーバーとなるため避けた方がいい。
「ナッツを一切食べなくても、オメガ3脂肪酸含有量が食品中最大のフラックスシード(亜麻の種)を1日大さじ1~2杯摂れば必要な分が供給されます。しかも、すり潰したものは体が吸収しやすいのです」
人の味覚は3週間で変化する
食べてはいけない食品が多いと、たんぱく質やカルシウム、鉄などが充分摂取できるのか不安になるが、プラントベースの食事で栄養不足になった人はいないという。
食べることが許されている食材だけで作った料理を満足するまで食べれば、1日に必要な栄養素はしっかり補給できる。ただし、ビタミンB12はサプリメントで補う。
なお、食べてもいいとされる食品は、アボカドを除く野菜全般、豆類、全粒穀物、果物(現在心臓病の人は1日3個まで)など。糖が多く食物繊維ゼロの果汁100%ジュースや牛乳はNGだが、ノンファットの豆乳、多少のコーヒーやアルコールは構わない。
実践するにあたって、何より気になるのは「味」だろう。プラントベースの食事では塩も極力使わないため、塩分過多な日本人にとっては物足りなく感じるかもしれない。
「塩分の過剰摂取は高血圧や胃がん、脳出血と密接に関係します。減塩した食事は味気ないかもしれませんが、人間の味覚は3週間で変化する。最初は味がないと感じていても、すぐに慣れてしまいます」
日本人でもおいしく食べやすいプラントベースのレシピなら、避けるべき食材をまったく使わなくても、バラエティー豊かな食事が楽しめる。
「考えてほしいのは、どこまで健康になりたいのかということ。食事改善を『ほどほど』にしていれば、健康も『ほどほど』にしかなれません。まずは3週間続けてほしい。体が変わり、人生の質が変わるはずです」
食べるものがあなたの人生を決めるのだとしたら、口にするべきものがわかるはずだ。
教えてくれた人
松田麻美子さん/『血管をよみがえらせる食事』(ユサブル刊)の翻訳と日本語版の監修を担当。日本ナチュラル・ハイジーン普及協会会長。
近藤千種さん/内科医
※女性セブン2021年3月18日号
https://josei7.com/
●血液、血管を知って病気を防ぐ|血管年齢って?血液ドロドロとは?女性の血管が急激に老ける年代は?