体にいい酢の種類とその効能|血圧、血糖値、動脈硬化対策に正しい酢の摂り方

「安いものでいいわ」と、こだわりなく買ったその「酢」は、実は「酢」ではないかもしれない。正しく選べば、夏バテはもちろん、血糖値の上昇や動脈硬化も予防できる万能の調味料である酢だが、選び間違えると効果が激減するどころか、食品添加物による危険性が。おいしさはもちろん、最も体にいい酢を専門家がジャッジ!

【目次】

 どの家庭にも必ず置いてあるといっていいほど、私たちにとって身近な調味料の「酢」。近年は健康飲料として、「飲むお酢」を習慣にしている人も増えている。外気温と冷房のきいた室内温度との寒暖差や、夏バテによる食欲不振などで体調を崩しやすいこの季節には、酢がぴったりだと言うのは、医学博士であり、黒酢に詳しい“黒酢博士”の中山貞男さん。

「3000年前の中国の書物にも、酢が体を温めて肝臓を丈夫にし、疲労を癒すと書かれた記録があります。夏バテによる疲労の回復に、お酢はバツグンの効果があります」

 しかし一口に酢といっても、なじみ深い穀物酢や米酢もあれば、ワインビネガーなどの外国から入ってきた酢も多く出回っている。さらに通販番組では、「健康になる」というキャッチコピーで酢のサプリメントもよく見かけるが、本当に健康効果の高い酢は一体どれだろうか。

酢の種類。「調味酢」は「酢」ではない

食酢の分類図表

●醸造酢
 米、麦、とうもろこしなどの穀類、果実、はちみつ、アルコールを原料としたものを酢酸発酵させて製造したもの。

・穀物酢
 醸造酢のうち、米、麦、大麦、酒かす、とうもろこしなどの穀類や酒かすを1種または2種以上使用したもので、その使用総量が醸造酢1Lにつき40g以上のもの。

・米酢
 穀物酢のうち、米の使用量が穀物酢1Lにつき40g以上のもの。

・米黒酢
 穀物酢のうち、原材料として米(精米したものを除く)またはこれに麦や大麦を加えたもの。米の使用量が穀物酢1Lにつき180g以上で、発酵及び熟成によって褐色または黒褐色に着色したもの。

・大麦黒酢
 穀物酢のうち、原料として大麦の実を使用したもの。大麦の使用量が穀物酢1Lにつき180g以上であり、発酵及び熟成によって褐色または黒褐色に着色したもの。

・果実酢
 醸造酢のうち、果実を1種または2種以上使用したもので、その使用総量が醸造酢1Lにつき300g以上のもの。

・りんご酢
 果実酢のうち、りんごの搾汁が果実酢1Lにつき300g以上のもの。

・ぶどう酢
 果実酢のうち、ぶどうの搾汁が果実酢1Lにつき300g以上のもの。

●合成酢
 氷酢酸または酢酸の希釈液に砂糖類、酸味料、調味料、食塩などを加えたもの。またはこれらに醸造酢を加えたもの。

※調味酢は食酢の分類には含まれない。

 農林水産省が定めた「食酢品質表示基準」によると、食酢は、大きく分けて「醸造酢」と「合成酢」に分類される。「醸造酢」は、「酢酸菌」という微生物の働きを利用して、原料を発酵させて造られる。米や麦など数種類の穀物を使えば穀物酢ができるし、米だけなら米酢、りんごからはりんご酢ができる。

 一方の「合成酢」はというと、酢酸を水で薄めて人工甘味料や酸味料、化学調味料などの添加物を加えたもの。ほとんどの家庭で使われているのが醸造酢で、合成酢の生産量はかなり減っている。

酢の健康効果

 醸造酢の主成分は酢酸菌が作った「酢酸」であり、酢の健康効果は、この酢酸によるもので、夏バテの改善や疲労回復も酢酸の効果による。医学博士であり、管理栄養士でもある本多京子さんが解説する。

「肉体疲労の原因は、筋肉に蓄えられているエネルギー源の1つ、グリコーゲンが減少することだとされています。酢酸は糖の代謝を助けて、グリコーゲンの補充を促進する働きがあります」

 食欲がない時は、酢のものが食べたくなったり、冷麺に酢をかけるとあっさり食べられたという経験があるだろう。酢には、唾液分泌を促して食欲を増進させる効果もある。

「酢の酸味や独特の香りは、味覚や嗅覚を刺激し、食欲をコントロールする脳の摂食中枢に働きかけます。また独特の酸味によって唾液の分泌も促進され、食欲が増し、消化吸収がよくなります。酢は万能の調味料で、血圧や血糖の上昇を抑えたり、ミネラルの吸収を助ける作用もあります」(本多さん)

 食品メーカーのミツカンが実施した研究でも、毎日スプーン1杯の酢を摂取するだけで、血糖値や血中コレステロール値が低下する作用があることが明らかになっている。さらに、健康検定協会管理栄養士の望月理恵子さんはこう話す。

「酢酸には、コラーゲン生成を促進するビタミンCの破壊を抑えたり、腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にして便秘を解消してくれる働きがあります」

 一方、合成酢は大量に作れることから価格が安く、業務用として使われることがほとんど。家庭では使っていなくても、外食や加工食品の形で知らないうちに摂っている可能性はぬぐえない。さらに、食酢に添加物を加えて味を整えた「調味酢」も、合成酢と同様に注意が必要な原材料が含まれていると薬食フードライフ研究家の沢木みずほさんは指摘する。

「調味酢は、それ1本で手軽に料理が作れるというメリットがありますが、本来の“酢”とは別物です。原材料に醸造酢や果実酢などが使用されていますが、酸味料や調味料などの食品添加物も使われています。甘みを作る『果糖ブドウ糖液糖』は始めからブドウ糖と果糖に分離されているため、すぐに吸収され、血糖値の急上昇などを引き起こします。調味酢の口当たりのよさは、さまざまな食品や添加物によって作り出されたもの。本来の酢の成分によるものではありません」

 例えば純米酢なら、原材料には「米」としか書かれておらず、それ以外の原材料があるものは、純粋な「酢」とはいい難い。まずは自宅にある酢のラベルで原材料を確認し、本物の酢かどうかを確認してほしい。

「1日に大さじ2杯の黒酢」が最も健康効果が高い理由

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