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マスクの下でどんな顔してますか?毒蝮三太夫が指南【連載 第37回】

 今や当たり前になった「マスク生活」。顔の半分が見えなくなり、お互いに相手の表情を読み取りづらくなった。そんな中で、気持ちをきちんと伝えて心を通わせるには、どんな点に気を付ければいいのか。コミュニケーションの達人である毒蝮さんが、高齢者と若い世代それぞれに向けて、具体的なコツや基本的な心がまえを伝授する。(聞き手・石原壮一郎)

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「目は口ほどに物を言う」

 世の中の常識や自分の感覚っていうのは、あっという間に変わっちゃうね。新型コロナウイルスが登場する前は、飲食店の店員さんがマスクをしたまま接客するなんて考えられなかった。ところが今は、もしマスクなしで「いらっしゃいませ」って言われたら、きっとギョッとするよね。

 もちろん俺自身も、外に出るときには必ずマスクを着けてる。今までめったにしたことなかったのに、すっかり慣れたどころか、しないと落ち着かない。それじゃあってんで、「今日はどのマスクにするかな」なんて新しい楽しみもあるけどな。

 コロナが落ち着いたとしても、今みたいな「マスク生活」は、しばらく続くだろうね。そうなると、顔の下半分が隠れてるんだから、目でどうやって気持ちを伝えるかが大事になってくる。昔から「目は口程に物を言う」って諺もあるぐらいだから、目の表情を意識すれば、怒ってるのか笑ってるのか悲しんでるのか、だいたいはわかるんだよ。

 昔の映画だと、でっかいマスクをして真っ黒なサングラスかけてるヤツは、間違いなく悪役だった。自分の顔や気持ちを知られたくないっていうわけだ。だけど、もしその当時にあんなのが街にいたら、逆に目立ってしょうがないけどね。

 目の表情を意識するっていっても、マスクをしたときに自分の目がどう見えているかなんてわからないよな。とくに年寄り世代は、顔の筋肉を大きく動かして表情を作るのが苦手な人が多い。子どもの側の世代も、今まで目の表情なんて意識したことないし、相手が親だと気を抜いて無表情のまま話したりしがちだ。

 老いも若きも、いっそのこと鏡の前で練習してみるといいんじゃないか。目のまわりの筋肉をどう動かせば、どんな目に見えるのか。どうすればチャーミングな目になるのか。ヘンなすれ違いを生まないためにも、ニコニコしてますよ、穏やかな気持ちなんですよって、はっきり伝わる目を見せ合いたいよね。

 これは介護している人たちや、介護を受けている人たちにも言える。お医者さんや看護師さん、介護士さんたちは、穏やかでやさしい目を向けてほしい。お世話される側も、感謝の気持ちを目で伝えたいね。「ありがとう」って口で言うのも大事だけど、目が不機嫌そうだったらせっかくのいい言葉も台無しだ。

ムスっとせずに「笑顔」をプラス

 俺はいつも言ってるんだけど、年寄りはチャーミングじゃなきゃいけない。とくにジジイは、何が面白くないんだかムスッとしてるヤツが多いよな。べつに若者に媚びろって言ってるわけじゃない。無理に話を合わせる必要もない。自然にしてればいいんだけど、そこにちょっと「笑顔」を加えたら、印象はずいぶん変わる。マスク越しだって同じことだ。

 チャーミングな年寄りで思い出すのは、聖路加国際病院の名誉院長で105歳まで現役だった日野原重明先生だね。あんなに偉い先生なのに、いつもニコニコと愛想がよくて、年下の医者のアドバイスも素直に聞いてた。ケタ外れに偉大な先生に近づくのは容易じゃないけど、まずは笑顔を真似することから始めよう。

→毒蝮三太夫が明かす日野原重明さんに教えてもらった大切なこと

 それと、身なりも大事だ。高いものを着る必要はないけど、清潔感があってこざっぱりした格好をしたいね。身なりに気を配らないってことは、他人にどう見られようが関係ない、俺のことはほっといてくれってシャッターを下ろしているのと同じことだ。そりゃ、シワが増えたり髪の毛が減ったりするし、腰も曲がってくる。だけど、それを恥じたりする必要はない。素直に明るく年を重ねていけばいいんだよ。

 愛想よくしてチャーミングになるのは相手のためじゃない。こっちがチャーミングになれば、まわりの人間だって同年代の友達だってニコやかに機嫌よく接してくれる。結局は、自分がいちばん気持ちいいわけだ。「チャーミングは人の為ならず」だな。

 若い世代も年寄りに対して、マスクから見えている目で笑いかけてやってほしい。ムスッとしてる年寄りもいるけど、笑顔で接すれば、つられてニッコリするもんだしな。半分ずつのフェイスツーフェイスだからこそ、倍の笑顔を贈り合おうじゃないか。

マムちゃんの極意

→毒蝮三太夫さんの他の記事を読む

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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)

1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。84歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。最新刊『たぬきババアとゴリおやじ 俺とおやじとおふくろの昭和物語』(学研プラス)は幅広い年代に大好評!

たぬきババアとゴリおやじ 俺とおやじとおふくろの昭和物語

取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)

1963年三重県生まれ。コラムニスト。『大人養成講座』『大人力検定』など著書多数。この連載ではマムシさんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。

撮影/政川慎治

●「親が認知症になったら…」毒蝮三太夫がズバリ!アドバイス【連載 第27回】

●毒蝮三太夫提唱!介護を円満にするために避けたい3つの“いじ”「連載 第21回」 

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