舌を診れば健康状態がわかる!ベロの異常に潜む重病リスクとは?
10月6日、米国の人気ロックミュージシャン、エディ・ヴァン・ヘイレン氏が65歳で亡くなった。10年以上に亘ってがん闘病を続けていたが、最初に見つかったのは舌がんだった。
日ごろはあまり意識しないが、舌は発声や食事、呼吸にも大きな影響を与える重要な器官だ。身体の異変が「舌の異常」として現われるケースも少なくない。中医学(東洋医学・漢方)に詳しい薬剤師の深谷朋昭氏が解説する。
身体の異変が舌の異常として現われる
「舌は露出した内臓のひとつともいえる存在で、体調により見た目がかなり変わります。中医学の世界では『舌は内臓の映し鏡』という言葉があるほどです」
中医学で重視される「舌診」
レントゲンやMRIといった検査機器がない時代に発達した中医学は、患者を注意深く観察して体の不調の原因を探った。中でも、舌の状態を診る「舌診」は重要視されてきたという。
「たとえば舌先が赤い場合は、高血圧など心臓に負担がかかっている状態と考えられる。舌の中央に厚い苔が見られる場合は胃腸に負担、舌奥に凸凹や赤い斑点が見られる場合は生殖器や泌尿器の血行不良や炎症があることが疑われます」(深谷氏)
要注意なのは「舌全体が大きく腫れぼったく、白か黄色の粘り気のある苔が舌の表面を覆っている」場合だ。
「この状態の舌は『痰湿』(図1)というタイプに分類され、水分の排泄代謝が停滞しているほか、舌の新陳代謝が乱れていることを示しています。
苔の色が濃いのは細菌や胆汁成分に染まった状態。免疫力が低下していたり、内臓の機能不全によって口腔細菌の異常増殖や炎症などが広範囲に広がっていることがある。この状態が続くと糖尿病や狭心症、脂質異常症などにつながる心配があります」(深谷氏)
他にも注意したいのが舌全体の色が青紫や暗紅色の場合。舌裏の静脈が太く目立ったり、紫色のシミが浮き出ることもある。
「これは『血瘀(けつお)』タイプ(図2)と呼ばれるもので、血液がドロドロの状態で詰まりやすく、血行不良を起こしている。シミは毛細血管の鬱血や色素沈着です。放置すると脳梗塞や高血圧、動脈硬化などのリスク増大が考えられます」(深谷氏)
舌のタイプ:痰湿タイプ
・舌全体が大きく腫れぼったい
・厚く粘りけのある苔(白または黄色)で舌がおおわれるいる
重病のリスク→糖尿病、狭心症、脂質異常症など
舌のタイプ:血於タイプ
・舌裏の静脈が盛り上がって目立つ
・舌全体が、青紫~暗紅色
・紫色のシミや斑点ができることも
重病のリスク→脳梗塞、動脈硬化など
舌の「しびれ」は重病のサイン
舌の質感のほか、「舌を真っ直ぐ伸ばせない」「舌が片側に捻じれてしまう」といった症状も、大病の兆候の可能性があるという。
「頭が重く、脱力感があると訴える60代男性を舌診したところ、まっすぐ舌を出しているつもりが、片側に捻じれてしまっていた。すぐに病院に行くよう勧めたところ、動脈硬化による一過性脳虚血発作の可能性が高いと診断されました」
また、舌先に感じるピリピリしたしびれや痛みが重病のサインであることもある。
たとえば舌がんの自覚症状として、舌に「しびれ」が現われることが知られているが、自律神経失調でも「舌痛症」という似た症状が現われるため、サインが見逃されるケースがある。
舌にしびれの症状が現われた場合は、口腔外科の早期の受診が望まれる。
教えてくれた人
深谷朋昭さん/中医学(東洋医学・漢方)に詳しい薬剤師。深谷薬局 明寿漢方堂HP(http://www.wb.commufa.jp/meizyu/)
※週刊ポスト2020年10月30日号