海岸近くにいるとき地震が発生したら…津波が見えてから逃げるのは遅い!ではどこへ避難?
海岸沿いに住んでいなくても、たまたま海沿いを通りかかることもあるだろう。そんなとき地震に直面したら―。命を守るためにはどうしたらいいのだろうか。正しい行動をとれるよう、今すぐ覚えておきたい心構えを専門家に教えてもらった。
南海トラフ巨大地震が発生したら10m超えの大津波の襲来が
「警戒すべきは津波です」
と話すのは、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんだ。
政府の中央防災会議は「南海トラフ巨大地震」が発生した際、関東から九州にかけての太平洋沿岸に10mを超える大津波の襲来を想定している。
●高さ20~30cmの津波でも大人を倒す威力
そもそも津波は、地震により海底が動き、その上の海水が押し上げられることで発生する。高波は、強い風で海水の表面が波立つだけだが、津波は海水全体がかたまりとなって押し寄せるため、高さ20~30cmの津波でも、大人を倒すほどの威力がある。
揺れが収まったら一刻も早く海から遠い、高い場所へ逃げる
「東日本大震災で岩手県宮古市の重茂半島を襲った津波は時速115kmだったとされています。ですから、津波が見えてから逃げるのでは遅い。揺れが収まったら一刻も早く、できるだけ海から遠く、高い場所に逃げるのが基本です」(和田さん・以下同)
●徒歩で「津波避難ビル」や「津波避難場所」へ逃げる
「車での避難でいちばん怖いのは渋滞に巻き込まれること。東日本大震災でも高台に向かう道で大渋滞が起こり、そこに津波が押し寄せて多くの犠牲者が出ました。やみくもに車を走らせるよりも、近くに『津波避難ビル』や『津波避難場所』などがある場合は、徒歩でそこに避難するのがおすすめです」
津波避難ビルとは、新耐震基準で建てられた3階建て以上の鉄筋コンクリート構造または鉄骨鉄筋コンクリート構造のビルのこと。基本的にそのビルの近くの海に起こる津波の想定浸水深以上の高さとなっている。海岸近くに行く場合は、近くにそのような建物がないか、市のホームページや防災マップなどで事前に確認しておくことも大切だ。
●高齢者や子供など一緒の場合は、車で遠くまで避難する
また、車での避難も間違いとは言い切れないケースもある。避難時は基本的に徒歩を優先すべきとされているが、津波は例外。高齢者や小さな子供など、徒歩では逃げ遅れる可能性のある人が一緒にいる場合、動けるうちになるべく車で遠くまで行き、危険が迫ったら車を降り、高台や建物の上層階へ避難すればいい。
津波は複数回続くこともある。警報・注意報が解除されるまでは気を抜かず、避難場所で待機していよう。
まとめ
●津波は、地震により海底が動き、その上の海水が押し上げられることで発生する。20~30cmの高さでも大人を倒す威力がある。
●揺れが収まったら、一刻も早く海の遠くの高い場所に逃げる。
●車は渋滞に巻き込まれる恐れがあるので、徒歩で「津波避難ビル」や「津波避難場所」へ避難。
●高齢者や子供など徒歩では逃げ遅れる場合は、車でできるだけ遠く行き、危険が迫ったら車を降りて高台へ避難を。
教えてくれた人
和田隆昌さん/災害危機管理アドバイザー
イラスト/大窪史乃
※女性セブン2020年9月10日号
https://josei7.com/