慢性腰痛を改善する方法|腰痛患者の85%が改善した体操を名医が伝授
日本人の約10人に1人は腰痛持ち、9割の人が一生のうちに1度は腰痛を経験するという報告もある、いわば国民病。だが、慢性痛の場合も自分で治す道があるのだ!
関節痛の名医が腰痛のメカニズムと改善する体操を伝授。痛みをあきらめないで!
教えてくれた人
銅冶英雄(どうや・ひでお)さん
お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニック院長。日本整形外科学会専門医でもある。
国民病・腰痛が起きる原因とは?
厚生労働省の「平成28年 国民生活基礎調査」によると、ふだん感じている自覚症状として、腰痛は男性1位、女性2位となっている。その数は、男性で1000人あたり91.8人、女性は、115.5人(ちなみに、女性1位は肩こりで、117.5人)にも及ぶ。
二足歩行で直立姿勢をとる人類は、緩いカーブを描いた背骨で、重い頭を含む上半身を支えている。その背骨の下方の5つが「腰椎」で、腰の部分だ。
お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニック院長の銅冶英雄さんは、
「腰椎はおじぎをする、体を反らすなどの動きに合わせて前後左右に動きます。この動きをスムーズにしているのが椎骨の間に挟まっている椎間板という軟骨組織で、ここに異常が生じると、腰痛が発症するのです」
と、解説する。
いわゆる「ぎっくり腰」は急性の腰痛で、重いものを持つ、くしゃみをするなどがきっかけとなり起こる。このとき椎間板の線維輪の亀裂が外まで達し、髄核がズレて、突然強い痛みを発症する。おおむね1週間から1か月で回復するが、髄核がズレ続けて神経を圧迫すると、手足のしびれや痛みを伴う腰椎椎間板ヘルニアになってしまう。
「この髄核のズレを元に戻せば、長年悩まされてきた慢性の腰痛も改善に向かいます。腰痛には、腰部脊柱管狭窄症や腰椎すべり症などがありますが、その名前にとらわれず、どう動かすと痛みが和らぐのかを自分で感じ、体操を続けることが大切なのです」(銅冶さん・以下同)
銅治さんの病院では、腰痛患者の約85%が改善したというから、試してみよう。
→つらい肩の痛み、自宅で治せます|名医が編み出した奇跡の体操
腰痛は椎間板のズレに伴い悪化する
腰痛は大まかに分けて4つの段階を経て正常な状態から悪化していく。そのメカニズムを知っておくと、予防や改善の一助になる。椎間板がズレて痛みが出るようになる流れを解説します。
【1】正常な椎間板
軟骨組織の椎間板に厚みがあり、ゼラチン質の髄核が、線維輪の真ん中に収まっている。
【2】髄核(ずいかく)が移動
猫背などの前屈姿勢になると椎間板が変形して髄核が後ろにズレ、線維輪を圧迫する。
【3】線維輪が破断
猫背が続くと線維輪の内側に亀裂が入り、破断すると髄核が外に達して腰痛に。
【4】髄核が神経を圧迫
飛び出した髄核が神経を圧迫すると「腰椎間板ヘルニア」に。腰痛に加え、坐骨神経痛になることも。
こんな症状があったら、すぐに医療機関へ!
骨粗しょう症の人や高齢者は、ぎっくり腰と同じようなタイミングで骨折している可能性がある。体操を始める前に必ず確認してください。安静にしていても痛む、患部に熱がある場合は整形外科を受診しましょう。
●足に力が入らず、動かしにくい
→足につながる神経がマヒしている可能性がある
●尿が出せない
→膀胱につながる神経がマヒしている可能性がある
●転んだり、落ちたりしてから腰が痛い
→けがで骨折している可能性がある
●最近、急に体重が落ちた
→がんの転移の可能性がある
●腰痛に加えて、熱が続いている
→背骨の感染症の危険性がある
ぎっくり腰の応急処置はこれ!
ぎくっとなった瞬間に激痛が走り、動けなくなるぎっくり腰。激痛が走ったら、うつ伏せになって腰を伸ばす。あるいは、その場で横向きに寝て、腰とひざを軽く曲げる。このどちらかの姿勢をとると痛みが和らぎ、ラクになることが多い。そのままの姿勢をしばらく続け、落ち着いてきたら、このあとに紹介する痛みナビ&改善体操を行おう。
仰向けになるより、うつ伏せの方が、腰を無理なく伸ばすことができる。横向きの場合は、前かがみになるよう意識するとよい。