「首と肩」の痛み、重症化する前に行いたい効果的なストレッチ法を整形外科医が解説
肩と首の痛みは、「しばらく我慢していれば治まるだろう」と放置しがちだが、早めに対策しないと日常生活に支障を来すことも……。手軽に取り入れられるストレッチ法を整形外科医が解説いただいた。
教えてくれた人
竹谷内康修さん/竹谷内医院院長・整形外科医
放っておくと手足のしびれや歩行困難に
肩や首の痛みを甘く見て放置していたことで、思わぬ事態に直面したと語るのは、都内在住の60代男性だ。
「事務職としてパソコンと向き合う仕事でもう5年以上は肩こりに悩まされてきました。市販の湿布やマッサージ器でごまかしてきましたが、最近は首を回すと痛みを感じるようになり、腕のしびれやめまいまで出るようになって……。
いよいよ我慢できず医者に行ったら頸椎椎間板ヘルニアの一歩手前と診断されました。もう少し悪化していたら手術の可能性もあったようです」
首と肩の痛みは、放っておくと手足のしびれや、最悪の場合は歩行困難になるほどの状態を招きかねないという。
これまで数万人の患者を診てきた竹谷内医院院長の竹谷内康修氏(整形外科医)が語る。
「首と肩の痛みは、どちらも『首周りの筋肉』に原因があります。首には神経を通す頸椎があり、首周辺の筋肉がこり固まったまま放置すると頸椎を圧迫して神経を傷める『頸椎症』を起こす。そうなると頸椎に炎症が起こり、手足の痛みやしびれや椎間板ヘルニアの発症につながります」
首周りの筋肉がこり固まる原因は?
首周りの筋肉がこり固まる原因は「姿勢の悪さ」だと竹谷内氏。背中が丸まる「猫背」は首と肩を支える筋肉に大きな負担をかける。パソコン作業で両肩が前に出る姿勢が常態化した人によく見られる「巻き肩」も、背中側にある首や肩の筋肉が前方に引っ張られて緊張した状態になる。
「肩から背中にかけて広がる僧帽筋や、頸椎と繋がる斜角筋といった筋肉が頭を支えています。人の頭は全体重の10分の1ほどの重さがあり、姿勢悪化で頭の位置が前後に傾くと、首周りの筋肉に過度な負荷がかかり、頸椎症を招きやすくなる」(竹谷内氏)
厄介なのは、頸椎症は一般的に自覚症状が少なく、知らないうちに症状が悪化しやすいことだ。だからこそ、普段から肩や首のこりをほぐして頸椎症を予防することが重要になる。
「首と肩を支える首周りの筋肉の緊張は日々のストレッチで解きほぐすことができます。軽度な症状の人は、まず1日3分でできる首周りのストレッチを実践してみましょう」(同前)
痛みが軽度の人に効果的な3つのストレッチ
まだ痛みがそれほど強くなく、手足のしびれもない軽度な人に効果的なのが、首の前後の筋肉を伸ばすストレッチだ。筋肉を緩めて骨を開く3分ストレッチをする。3つのストレッチを1から3まで順に行う。
1.僧帽筋をほぐす「首の後ろ側ストレッチ」
椅子に座り首を斜め下へ。手で頭の後ろを支えて徐々に首の後ろを伸ばす。ポイントは肩と首を支える僧帽筋(※1)を伸ばすことを意識することだ。
「頭の角度を少しずつ動かしてこりを感じる部分を探し、そこを重点的に伸ばすように意識すると効果的です」(竹谷内氏)
※1:僧帽筋は首から背中にかけて広がる
<ポイント>
・斜め右側に首を倒す
・右手を左耳の後ろに置いてゆっくり首の後ろを伸ばす
・10秒キープ✕3回を左右行う
・僧帽筋が緩む
2.斜角筋をほぐす「首の前側ストレッチ」
続いて、首の前側にある斜角筋(※2)を意識して伸ばす。椅子に座り手を反対の肩に当て、肩が上がらないように押さえながら首を斜め上に向ける。
「日頃の生活で固まりやすい筋肉で、首の前側の筋肉がこわばっている人は頸椎症になるリスクがある。よくほぐしましょう」(同前)
これらは10秒間、左右3回ずつ行なう。
※2:斜角筋は首の前側左右にある
<ポイント>
・右手を左肩に当てる
・首を右斜め上に伸ばす
・10秒キープ✕3回を左右行う
・斜角筋筋が緩む
3.猫背を解消する「胸開きストレッチ」
胸の筋肉を伸ばし、肩甲骨を開くストレッチも効果的だ。足を肩幅の広さに開いて立ち、手をお尻の前で組んでひじを斜め下に伸ばす。同時に顔を上に向けて胸を張る。この姿勢を20秒間キープし、3回繰り返す。
「巻き肩や猫背の人は胸の筋肉が緊張しやすい。左右の肩甲骨を中央へ引き寄せることを意識しましょう」(同前)
上記3つのストレッチを、1→2→3の順で行う。
最適なストレッチのタイミング
3つのストレッチを行なう「時間帯」にもポイントがある。
「肩や首の筋肉は起床時には緊張が解けていますが、時間の経過とともに頭部の重みで緊張していくので、日中や夕方に行なうと効果を得やすいです」(同前)
ストレッチを行なう際、急に筋肉を強く伸ばすとかえって傷めることがあるので注意が必要だ。また、ストレッチ中にめまいや立ちくらみがしたらすぐに中断する。
あくまで、「気持ちいい」と感じる範囲で伸ばすのが効果を得やすいのだという。
イラスト/河南好美
※週刊ポスト2024年10月4日号
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