首・肩の痛みを根本原因にアプローチ 改善のカギを握る「頸長筋」を鍛える2つのエクササイズを専門家が解説
つらい「首や肩のこり」は、スマホやパソコンなどを使う時間が長いほど悩みは深くなってくる。重度になれば、首や肩を動かすのもきつく、しびれやめまいのような別の症状を抱えることも。最近の研究で、痛みの原因が「首の使い方」にあること、痛みの改善のカギを握るのが「頸長筋」であることが分かってきたという。そこで、「頸長筋」を鍛える2つのエクササイズを専門家に教えていただいたので、ご紹介する。
教えてくれた人
金岡恒治さん/早稲田大学スポーツ科学学術院教授・整形外科医
鍵は喉の奥の筋肉
つらい痛みや手足のしびれ、めまいなどを伴う重度のケースでは、別の筋肉へのアプローチが必要になる。
「喉の奥にある『頸長筋(けいちょうきん)』という深部筋を使うことが重要です」
こう語るのは、早稲田大学スポーツ科学学術院教授で整形外科医の金岡恒治氏だ。
北京五輪水泳日本代表のチームドクターを務め、数々のアスリートの身体を診てきた金岡氏は、長年にわたり「正しい筋肉の使い方」を研究してきた。
「これまでは首や肩の痛みに対しては、鎮痛薬をはじめとする対症療法に頼ってきましたが、近年の研究で、痛みの原因が『首の使い方』にあること、痛み改善の鍵を握るのが頸長筋であることが分かってきました」(金岡氏)
頸長筋は首の骨に接しており、頸椎を支えて首の動きを滑らかにする役割がある。
しかし現代人はスマホやパソコンなどの使用で首の位置が中心より前に出る生活を送ることが多く、頸長筋が使われず衰えているのだという。
「頸長筋を使わず僧帽筋などの表層筋ばかりを使い、これらの筋肉だけで首を動かしていると、首がぐらついて頸椎の関節である『椎間関節』が炎症を起こす。これにより、強い痛みやしびれを伴う重度の肩こり・首こりが発症してしまいます。
頸長筋を正しく使うことで頭が正しい位置に戻り、重い痛みやしびれが緩和されると考えられます」(同前)
肩・首の痛みを改善する2つのエクササイズ
都内の運動療法スタジオ「スパインコンディショニングステーション」でメディカルディレクターも務める金岡氏は、誰もができる運動で頸長筋を鍛える方法を模索し、重度の肩・首の痛みを改善する2つのエクササイズに辿りついた。いずれも3分間ほどで行えるので気軽にできる。
1.首と頭のズレを正す「水平あご引きエクササイズ」
頭部を傾けず水平に後ろに引く。その際にあごを引きながら行なうことで、頭が頸椎の真上に位置する。
「ポイントはなるべく首や肩を動かさないこと。指であごを軽く押しながら引くと感覚を掴みやすいでしょう。そのうえで頭を前後、左右に倒し、左右回転運動も加えることで効率よく頸長筋を鍛えられます」
それぞれの動きを2回ずつ、1日2~3セット行なうと効果的だという。
<ポイント>
・あごを水平に引く
・前後、左右倒し、左右回転をそれぞれ2回ずつ1日2~3セット行なう。
・頸長筋が動くようになる
< 水平あご引きエクササイズのポイント>
・水平に後ろへ引く
頭を傾けずに水平を保ったまま後ろに引く。あごを軽く指で押すと引きやすい。
2.寝ながらできる「あご引き起床エクササイズ」
仰向けに寝ながら水平あご引きの姿勢を取り、頭をゆっくり持ち上げる。
「あごを引くことを意識して床に頭をつけ、頸椎を床から離していくイメージです」(同前)
あご引き起床エクササイズは、1日に2~3回行なうのが目安だという。
<ポイント>
・仰向けであごを引く
・両足を肩幅の広さに開きひざを立てる
・頸椎を意識してゆっくり頭を上げる
・一連の動きを1日2~3回行なう
・頸長筋が鍛えられる
エクササイズは「痛気持ちいい」範囲に
「このエクササイズで、肩や首の痛みやしびれが改善されたケースを多数見てきました」(同前)
エクササイズを行なうタイミングはいつでもいいが、無理をしないことが肝要だ。あくまで「痛気持ちいい」範囲に留めておく。
症状に応じたストレッチで、首と肩の悩みから解放されたい。
イラスト/河南好美
※週刊ポスト2024年10月4日号
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