早食い、夜勤務、テレビ視聴7時間以上…データで見るがんリスクを上げる生活習慣
がんの罹患率が上昇している日本。日々の生活の中で、一体どんな生活習慣がリスクを高めるのだろうか。科学的根拠に乏しい健康情報が巷に溢れる中、しかるべき研究機関で立証された医学的データを世界中からリサーチ。ここでは、発がんリスクを上げる生活習慣とリスクを下げる生活習慣を併せて紹介する。
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データで知る長生きのための生活習慣
※()は、調査者/調査対象/調査公開年
■食べるのが早い人:胃がんリスク/約2.5倍↑
インタビュー調査によると、早食いの人は、そうでない人と比べて、胃がんにかかるリスクが2.5倍程度高かった。早食いによって、胃の粘膜が傷つけられたことが原因と考えられる。(中国・福建医科大学/30~79才の男女603人(内胃がん患者381人)/2003年)
■夕食後2時間以内に寝る人:乳がん、前立腺がんリスク/20%程度アップ↑
約5年間の追跡調査によると、夕食後2時間以内に寝る人は、そうでない人と比べて乳がん、前立腺がんにかかるリスクが20%程度上昇した。夜に食事して次に食事するまでの間隔の長さが関係していると考えられる。(スペイン・バルセロナ保険研究所/20~85才の男女(女性1910人、男性1493人)/2018年)
■睡眠時間が1日6時間以下の女性:乳がんのリスク/1.6倍↑
約7年間の追跡調査によると、平均睡眠時間が6時間以下の人は、良質な睡眠に導くホルモンであるメラトニンが不足しがちなため、7時間寝ている人に対して乳がんのリスクがおよそ1.6倍上昇した。(東北大学/宮城県大崎地区在住の40~79才の女性約2万4000人を追跡調査/2008年)
■夜のシフト勤務の人:大腸がんリスク/約1.3倍↑
複数の論文を比較分析した研究によると、シフト勤務などで夜に活動する生活をしている人は、体内時計の乱れが影響して、日勤の人に比べて大腸がんにかかるリスクがおよそ1.3倍上昇した。(中国・浙江大学/複数論文の比較分析/2015年)
■たばこを吸う人:がん全体のリスクが男性は1.6倍↑/女性は1.5倍↑
約10年間の追跡調査によると、たばこを吸い続けている人は、たばこに含まれている約70種類の発がん物質の影響で、たばこを吸わない人と比べて、なんらかのがんにかかるリスクが男性でおよそ1.6倍、女性で1.5倍上昇した。(国立がん研究センター/日本全国9保健所管内に住む40~69才の男女約9万人を追跡調査/2004年)
■朝起きて5分以内にたばこを吸う人:肺がんリスク/1.86倍↑
朝起きて60分以上経ってからたばこを吸う人と比較して、31分以上60分以内の人ではおよそ1.08倍、6分以上30分以内の人ではおよそ1.4倍、5分以内の人ではおよそ1.86倍、肺がんリスクが上がった。(愛知県がんセンター/肺がん患者と対照群の男女各1552人ずつ/2013年)
■お酒を飲みながらたばこを吸う人:がん全体の死亡リスク/2.7倍↑
たばこを吸いながらお酒を飲む男性と全く吸わない男性とで比較すると、毎日2合程度飲む人では2.7倍、毎日4合程度の人では3.6倍、がんでの死亡率が高くなるというデータがある。これは、アルコールに含まれる酵素がたばこの発がん物質をより活性化させるためと考えられている。(国立がん研究センター/40~59才の男性約2万人/2002年)
■自分は吸わないが喫煙者が身近にいる人:肺がんリスク/1.3倍↑
平均13年の追跡調査によると、夫が喫煙者である女性(受動喫煙のあるグループ)は、福流煙中の発がん物質を吸い続けているため、夫が非喫煙者である女性(受動喫煙のないグループ)と比較して、約1.3倍肺がんになりやすい。このリスクは、1日に吸う本数が多いほど上昇した。(国立がん研究センター/日本全国9保健所管内に住む40~69才のたばこを吸わない女性約2万8000人を追跡調査/2004年)
■お酒を飲むと顔が赤くなる人:食道がんリスク/約87%アップ↑
およそ10年間の追跡調査によると、1日に15g(日本酒1合よりやや薄い程度)以上のアルコールを摂取した場合、顔がすぐに赤くなる人は、そうでない人と比べて、食道がんのリスクが87%程度上がった。(中国・北京大学ほか/30~79才の男女約51万人/2018年)
■緑茶をまったく飲まない男性:前立腺がんリスク/62%アップ↑
まったく緑茶を飲まない男性は、1日に7杯以上緑茶を飲む男性と比較して、前立腺がんのリスクが62%上がる。緑茶に含まれるカテキンが、がん細胞の増殖を抑えるだけでなく、男性ホルモンのテストステロンレベルを下げるように作用していると考えられる。(中国・武漢大学/複数論文の横断分析/2017年)
■ビタミンサプリメントを週1回以上のみ始めた女性:がん全体のリスク/24%アップ↑
5年間のビタミンサプリメント摂取(週1回以上)の変化と全がんおよび循環器疾患発症率との関連を調べたところ、女性の場合、非摂取者と比べて、「5年間の間に摂取をやめた人」で17%、「5年の間に摂取を開始した人」で24%、発がんのリスクが上昇した。一方、循環器疾患に関しては、女性の場合、「5年間摂取を続けた人」で40%リスクが低下した。(国立がん研究センター/日本在住の40~69才の男女約6万人を5年間追跡調査/2011年)
■ビタミンB群のサプリメントを飲んでいる男性:肺がんリスク/98%アップ↑
約6年間の追跡調査によると、ビタミンB6のサプリメントを1日に20mg超摂取する男性ではおよそ80%、ビタミンB12のサプリメントを1日に55mg以上摂取する男性ではまったくとらない男性と比べておよそ98%肺がんリスクが上昇した。女性ではそのような傾向は見られなかった。(スタイルのコホート研究/ワシントン州西部の50~76才の男女約7万7000人を追跡調査/2017年)
■自転車通勤をする人:がん全体の死亡リスク/40%ダウン↓
平均5年間の追跡調査によると、自転車のみで通勤している人は、自転車や徒歩をほとんど使わず通勤している人に比べて、がんでの死亡リスクがおよそ40%減少した。自転車走行距離が長距離になると、短距離の人よりもさらに5%程度リスクが下がる。(英国・グラスゴ-大学/40~69才の男女約25万人/2017年)
■日常的によく体を動かす女性:がん全体のリスク/16%程度ダウン↓
約8年間の追跡調査によると、体を動かす活動量で4群に分けた場合、日常的にもっとも体を動かしている人は、もっとも体を動かさない人と比べて、胃がん(女性37%)、結腸がん(男性42%)で罹患リスクが下がり、がん全体では男性で13%、女性で16%低くなった。身体活動が活発になることで、肥満の解消、ホルモンの調整、免疫機能の改善などが起きたためと考えられる。(国立がん研究センター/45~74才の男女約8万人/2008人)
■テレビを1日7時間以上見る人:大腸がんリスク/12%アップ↑
およそ22年間の追跡調査によると、1週間に7時間超、14時間未満テレビを見る人は、7時間以下の人と比べて、大腸がんの罹患リスクが12%上がった。14時間以上テレビを見る人では69%上昇した。(米国・ワシントン大学/25~42才の女性約9万人/2018年)
■携帯電話でよく長電話をする人:悪性脳腫瘍リスク/1.4倍↑
携帯電話を1640時間以上使用したグループでは、携帯電話を使用したことがないグループと比べて、悪性脳腫瘍の一種であるグリオーマの発生リスクが1.4倍上がった。1~4年の短期間に1640時間を超えた人たちでは、3.77倍の上昇だった。(米国・INTERPHONE Study/13の国に住む30~59才のグリオーマ患者2708人と対照群2409人/2010年)
■猫を飼っている女性:肺がんリスク/2.85倍↑
約18年間の追跡調査の結果、飼い猫と住んでいる女性はそうでない女性に比べて、肺がんによる死亡リスクが2.85倍高かった。鳥を飼っている場合は2.67倍、犬では1.01倍のリスク増。男性ではそのような傾向は見られなかった。(米国・ジョージアサザン大学/19才以上の1万3725人/2019年)
■出産経験のある女性:乳がんリスク/22%ダウン↓
約8年の追跡調査によると、出産を2回、3回、4回以上経験した女性は生涯に1度だけ出産した女性より、それぞれ22%、32%、69%乳がんになるリスクが低かった。また初産年齢が遅くなるほど乳がんにかかりやすかった。(名古屋大学/40~79才の女性約3万8000人/2018年)
■経口避妊薬を長く服用している女性:乳がんリスク/20%アップ↑
平均10.9年間の追跡調査によると、経口避妊薬を使用したことのある女性は、まったく使用したことのない女性と比べて、乳がんにかかるリスクが20%高かった。長く使うほどリスクは上昇した。長期的な使用によってホルモンの状態が変わることが要因とみられる。(デンマーク・コペンハーゲン大学/15~49才の女性180万人/2017年)
■便秘がちの人:大腸がんリスク/1.59倍アップ↑
最大11年間の追跡調査によると、慢性便秘症の人は、そうでない人と比べて大腸がんにかかるリスクが1.59倍高かった。(米国・マサチューセッツ州研究チーム/18才以上の男女10万人超(内便秘患者2万8854人、対照群8万6562人)/2014年)
■日焼けマシンをよく利用する人:皮膚がんリスク/75%アップ↑
30才になる前に日焼けマシンを使用し始めた場合、そうでない人と比べて、悪性の皮膚がんの一種であるメラノーマにかかるリスクが75%上がった。(米国・IARC/20の疫学調査のメタアナリシス(横断分析)/2009年)
■慢性的にストレスを感じている人:食道がんリスク/2.12倍↑
仕事で慢性的にストレスを抱えている人は、そうでない人と比べて、大腸がんは1.36倍、肺がんは1.24倍、食道がんは2.12倍リスクが上がった。(中国・華中科技大学など/28万人超の欧米人男女/2018年)
■積極的に誰かに相談するタイプの人:がん全体の死亡リスク/約15%ダウン↓
日常経験する問題について、「解決する計画を立て実行する」「誰かに相談する」「状況のプラスの面を見つけ出す努力をする」対処型の行動を取る人は、「変えることができたらと空想したり願う」「自分を責め、非難する」「そのことを避けてほかのことをする」逃避型の行動を取る人と比べて、がん死亡率が15%程度下がった。(国立がん研究センター/50~79才の男性約5万5000人/2016年)
■友人や信頼できる人がほとんどいない男性:大腸がんでの死亡リスク/3.1倍↑
心の落ち着く人や週1回以上話す友人、自分の考えを支持してくれる人などがほとんどいない男性は、そうした心身の支えがある男性と比べて、大腸がんでの死亡リスクが3.1倍高かった。この調査では女性で特に差は見られなかったが、ほかの研究では乳がんのリスクが下がったという報告もある。(国立がん研究センター/40~69才の男女約4万4000人/2013年)
※女性セブン2019年11月7日・14日号
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