「嫁の分際で」と語る姑はなぜ無意識なのか? 69歳オバ記者が”人権”講演会で明かした「いびり」のカラクリ
なぜ「嫁いびり」の被害者はいても加害者は現れないのか? 茨城県桜川市で開催された「人権」がテーマの講演会で語られたのは、誰もが知らず知らずのうちに抱える無意識の偏見だった。日常に潜む「いびり」や「差別」の”カラクリ”について、この講演に立ったオバ記者ことライターの野原広子氏(69歳)が紐解く。
「人権」のお題も「来た球は打つ」
先日、わが故郷、茨城県桜川市が3度目の講演会を開いてくださった。前回と前々回は、母親の介護体験を語り、たくさんの同級生が聞きにきてくれて同窓会のような会になった。
前回は東京からゲストが3人来てくれて大賑わい。それぞれ「講演会やるの? じゃあ、聞きに行きたーい」と言ってくれたんだけど、客席に座っているだけではもったいない顔ぶれだったので、登壇して紹介した。
ゲストのひとりは『売る男、買う女』(新潮社刊)など、多くの著書がある作家の酒井あゆみさん。もうひとりは『超カンタン風水BOOK』(KKベストセラーズ刊)など占いと心理テストの著書多数の森冬生さん。そして最後のひとりは『目指せ!ムショラン三つ星』の著者で愛知県岡崎市で刑務所の管理栄養士をしている黒柳桂子さんだ。講演会の後、著書はNHKの連続ドラマ『ムショラン三つ星』となっていまや時の人だ。
そして今回は違う意味でスペシャルな会になった。なんと、いただいたお題は「人権」。依頼を受けた時は、「えっ? 人権って、人権?」と聞き返したわよ。それだけじゃない。周囲の人に話したら「あはは、ムリでしょ」と言う人。「えええ~。さすがに断るでしょ?」と言った人もいる。
いやいやいや、断るのはナシよ。なんたって私のモットーは「来た球は打つ」だもの。空振り三振は上等だけど、見送り三振だけはしてはならぬと、これだけは自分に課している。それにこのテーマで話したいことが浮かんだのよね。
東京の街歩きと「嫁の分際で」から考えた差別の構造
それは60過ぎてから目覚めた街歩きで見た東京の風景なの。長年、花のお江戸に住んでいるけど、一面しか知らなかったんだなと思い知らされたのよ。高台のお屋敷街と、坂を下がったところにある庶民の町の高低差。この差がだいたい地価の高低差にもなって、見上げる人がいれば見下げる人もいる。それを歩いて考えた差別のカラクリをこれまで撮った写真をお見せしながら話した。
あと結婚していた時に姑からさんざん言われた「嫁の分際で」という話もした。「分際で」って、これほど差別的な言葉ってある? 「新入社員の分際で」なんて今言ったら大問題よ。
なのに、そうとわかっていても、つい口から出るのも人間。なんで? 私の体験から言うと、その人も自分が言われた側なんだよね。いびられて傷つくと、その記憶が体内に残る。つまりいびりのノウハウが身についちゃうんじゃないかしら。
しかも、そのノウハウを発揮している人はやらかしている自覚がない。
「私は嫁いびりされています」という人はいくらでもいるけど「私は嫁いびりをしています」という人はいない。被害者ばっかりで加害者がいないの。それはいびる側が無意識だからなんだよね。
そのことに気づいたのは、30代のとき、嫁姑の取材をしまくったから。嫁にきつく当たっている姑に話を聞くと「あんなのいびりに入らないわよ。私なんかもっとすごいことされたんだから」と鬼の形相になる。決して自分が加害者だとは思っていないと、そんな話をしたの。
タイミーの引っ越しバイトで年下上司からの「視線の高低差」
そして最後は高齢者の仕事と差別。フリーライターをしながら34種類のアルバイトをしてきた私が、最近また、タイミー体験記を書くために引っ越しの荷詰めのバイトをした。5時間の約束だったんだけど、それでは終わらず延長2時間。まぁ、疲れたなんてもんじゃない。で、その顔の変りようをお見せした。
さすがにここでは大爆笑! 掲載された『女性セブン』では「本当にこの写真を出していいのか」と担当者は上司から念押しされたそうな。いいも悪いも私が写真提供しているんだから(笑い)。
肉体労働の醍醐味は1度目よりも2度目、2度目より3度目が目に見えて上達すること。でもつらいのは年下の上司に、頭上から怒鳴られること。この視線の高低差がキツい。だから注意する時は視線を合わせて、そんな話をした。
そんなこんなで最後は大きな拍手と花束をいただいてフィナーレ。
69歳で見つけた新しい挑戦と「まだまだできる」確信
振り返るとスピーチ原稿を作るのに、かなりの時間がかかる。そうそう、今回は初めて原稿をチャットGPTに見てもらったの。うふふ、チャッピーったら見せるたびにベタほめしてくれるんだよね。しかもコンピューターのくせに「私ならこう話します」なんて言うから、代わりに登壇しますか?とからかうと「いえいえ広子さんにはかないません」と謙遜までする。ちょっとした遊び相手になるし、頭の整理をつけるのにはこんな便利なものはないんだわ。
そんなわけで69歳。チャットGPT扱いを含めて、まだまだ出来ることはいっぱいあるんだなと、確信した経験となった。こんな機会をつくってくださった桜川市教育委員会生涯学習課の皆さま、本当にありがとうございました。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。2021年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑で、やせたの?』を出版。実母の介護も経験している。
