「遠方に暮らす要介護2の父が要介護5の母をサポート」老々介護・遠距離介護の実態と対策「見守りの大切さ」
高齢化に伴い「老々介護」や介護が必要な高齢者の単身世帯も増えている。一方で子世帯は仕事や家事を担いながら離れて暮らす親のサポートを続けている人は多い。FPで行政書士の河村修一さんは両親の遠距離介護を振り返り、後悔していることがあるという。いち早く着手しておきたい「見守り」の重要性を教えてもらった。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
内外資系の生命保険会社を経て、2011年に母の介護経験をもとに介護者専門FPとして独立。その後、2018年にカワムラ行政書士事務所を開業。介護や相続、親の介護をめぐる家族会議支援など、将来に備えるサポートを幅広く行う。https://www.kawamura-fp.com
介護する側も支援が必要な「老々介護」
高齢者人高齢のご夫婦ふたり暮らしで、ご夫婦ともに介護や支援が必要になっている「老々介護」が増えています。どちらか一方が要介護ということもあれば、どちらも介護が必要というケースもあります。
例えば、夫婦どちらかが認知症で介護が必要、介護する側も要支援などの認定を受けている。自分自身にも支援がが必要なのに「自分は相手を介護している側」と考え、実際に身の回りのケアやサポートを担っているのです。
私の両親がまさにこうした状況でした。父は80代前半で、母が70代半ばで地方で暮らしていました。当時、父は要介護2の認定を受けていましたが、要介護5で施設に入所していた母の介護をする「老々介護」。父自身も介護が必要な状態でありながら、母の施設に通って洗濯をするなど身の回りのサポートをしていました。父には、自分自身が介護を受けているという認識は、ほとんどなかったように思います。
父は介護保険を利用してヘルパーによる生活支援も受けていました。それでも本人は介護サービスを利用しているというより、「職員の人が手伝ってくれている」という感覚だったようです。
本人は「介護している」自覚がない?
このような老々介護に共通しているのは、自分自身も支援や介護が必要な状態でありながら、自分より要介護度が高い配偶者の家事や身の回りのことを担っている点です。
夫婦どちらか一方の要介護度が高い場合、支える側が要支援・要介護であっても、「介護が必要なのは相手なので、自分は介護する側」という認識で、介護を頑張ってしまう。しかし、介護する側も高齢者です。今は洗濯や掃除などができていても、年齢を重ねるうちに、体力が低下したり、物忘れが増えたりすれば、これまでと同じように配偶者を支え続けることが難しくなる可能性があります。
また、子どもがいなかったり、頼れる親族が近くにいなかったりすれば、普段の様子や異変を家族が継続的に確認することが難しくなる場合もあります。
これは、一部の高齢者だけの特別な問題ではありません。長寿化が進む中で、自分の親だけでなく、将来の自分自身にも起こり得る問題といえるのではないでしょうか。
高齢者人口のピークは令和25年、単身世帯も増加
内閣府の「令和8年版高齢社会白書」によると、65才以上の人口は令和7年(2025年)時点で3,622万人。令和25年(2043年)には3,953万人でピークを迎えると見込まれています。
その後、65才以上の人口自体は減っていきますが、社会全体に占める割合(高齢化率)はむしろ上がり続け、令和52年(2070年)には38.7%に達すると予測されています。つまり、国民の約2.6人に1人が65才以上、約4人に1人が75才以上になります。
さらに、高齢者世帯が増えていくことも予測されます。2024年時点で、65才以上の人がいる世帯は2,760万4千世帯。日本の全世帯(5,482万5千世帯)のおよそ半分を占めています。
内訳を見ると、ひとり暮らし(単独世帯)が903万1千世帯(32.7%)、夫婦のみの世帯が878万6千世帯(31.8%)です。両者を合わせると64.5%となり、65才以上の人がいる世帯の6割を超えていることがわかります。
※内閣府「令和8年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2026/zenbun/08pdf_index.html
ひとり暮らしや夫婦ふたり暮らしでも、近くに子どもや親族がいれば、日頃から様子を確認してもらえることもあります。一方、子どもがいなかったり、家族が遠方に住んでいたりすれば、家族による日常的なサポートが難しい場合もあります。離れて暮らす親に何かあったとき、家族がすぐに気づけるようにするには、どうすればよいのでしょうか。
自治体の助成金や制度を調べておこう
老々介護や遠距離介護の対策として、選択肢のひとつとなるのが「見守り」サービスです。現在では、多くの民間企業が見守りサービスに参入していて、定期的な訪問や電話による安否確認、センサーを使った見守りなど、さまざまな種類があります。
民間の見守りサービスを継続して利用するとなれば、費用も気になるところです。
そこで、事前に調べておきたいのが自治体の取り組みです。現在、自治体によっては高齢者の見守りを支援する取り組みを実施しています。見守りサービスを利用する際の費用負担を軽減できる制度などもあるので、調べてみるとよいでしょう。
例えば、東京都なら、立川市では「高齢者あんしん見守り支援事業」を実施しており、緊急通報型のサービスを導入する初期費用として最大1万3000円が支給されます(月額利用料が別途支払う必要あり)。
また、世田谷区のでは「ひとりぐらし高齢者見守り機器等補助事業」を実施しています。見守り機器によるサービスの利用料を1人当たり月額最大1,000円の補助金が支給されます。
自治体によって対象者や補助金額など使用額はさまざまなので、お住まいの自治体に「見守りサービスの助成制度があるか、かならず確認しておきましょう。
※参考 立川市「高齢者あんしん見守り支援事業」
https://www.city.tachikawa.lg.jp/kenko/korei/1003482/1003506.html
世田谷区「ひとりぐらし高齢者見守り機器サービスの利用料の補助」
https://www.city.setagaya.lg.jp/02082/30259.html#p1
老々介護・遠距離介護の対策【まとめ】
高齢者だけで暮らす世帯では、夫婦の一方がもう一方を支えていても、支える側も高齢になり、これまでと同じ生活を続けることが難しくなることがあります。また、ひとり暮らしの場合も、子どもや親族などが遠方に住んでいれば、日頃の様子を確認したり、異変があったときにすぐに駆けつけたりすることは簡単ではありません。
ちなみに我が家の場合、老々介護ののち施設で暮らしていた母が他界。父は自立型のケアハウスに入所していたのですが、脳梗塞で倒れたときにはスタッフに早く気づいてもらい、対応につなげることができました。もし、これが誰もいない自宅でのひとり暮らしだったら、どうなっていたのだろうと考えると、今でもぞっとします。
高齢者の暮らしを支える方法の一つが、見守りサービスです。自治体によっては見守り機器の設置費用や月額利用料の一部を助成・補助している場合もあります。お住まいの自治体に利用できる助成・補助制度がないか確認してみてはいかがでしょうか。
