《「1日1万歩」はもう古い》整形外科医が教えるウォーキングの新常識「距離や歩数よりスピード」「歩き過ぎは逆効果」
健康のためにと普段の生活に採り入れている人も多い「ウォーキング」。『動ける体が大復活する 1分体操』(アスコム)を上梓した整形外科医の中山潤一さんに、シニアがけがを予防しながら楽しくウォーキングを続けるためのポイントを詳しく教えてもらった。
距離や歩数より「スピード」
健康のためにウォーキングを始めるとき、1日何分歩く、何歩歩くといった数値目標を立てる人もいるが、ウォーキングで大切なのは距離や歩数ではなく、スピードだと中山さんは言う。時間をかけて長い距離を歩くよりも、5~10分間でも早歩きをすることが筋肉を育てるには効果的だそうだ。
「理想は時速6km以上、言い換えれば1分間で100歩以上と言われています。時速6km以上とは、感覚的な表現ですが、『会話はできるけれど、歌はうたえない』『歩いた後、少ししんどい』という程度の速度が理想です」(中山さん・以下同)
両手を空けてスニーカーで歩くこと
ウォーキングをする際は、ついでに買い物などをするとしても、片手をふさいでしまうようなバッグを持つのではなく、「両手が空くリュックのようなタイプがおすすめです」と中山さん。片手がふさがっているとバランスを崩しやすく、シニアの場合は特に危険なためだ。転倒が不安な場合は杖を持って歩くのもいいという。
また、ウォーキングはひざ関節や股関節に一定の衝撃が加わるため、基本的にはサンダルなどより、衝撃を吸収してくれるスニーカーがおすすめだ。
「脱水や熱中症にも気をつけましょう。水分補給を忘れないでください。めまいや立ちくらみが起きたら、すぐに歩くのをやめて休憩してください」
ウォーキングのついでに「誰かと話す」
さらに中山さんがすすめているのが、散歩やウォーキングなど、外出のついでに他の人とコミュニケーションをとること。人と会話をすることで、ストレスの発散や認知症の予防になるためだ。
また、筋力が落ちて「健康と要介護の間」になった状態のことを「フレイル」というが、フレイルの進行には身体的な要素だけでなく精神的な要素も関わっている。転倒を恐れて外出せず、家に引きこもって人と話さないでいると、精神的に孤立していき、精神的なフレイルになってしまう可能性が高まる。
「社会と触れ合うことは精神的なフレイルの対策になります。ですから、どんどん外出をして、人と関わりましょう。できれば週に2、3回は、趣味などで外出できるといいですね。ご友人に誘われたら、一緒にスポーツをするのもいいでしょう」
「1日1万歩」という目標には要注意
ウォーキングでは「1日1万歩」が目安として挙げられることがあるが、「1日1万歩」が良いというのは古い情報だと中山さんは話す。もともと、厚生労働省が打ち出した「健康日本21」という健康政策のなかで「1日1万歩」が目標とされ、広く知られるようになったが、2024年に始まった第3次の「健康日本21」では、成人には1日8000歩(30分)以上、高齢者には1日6000歩(40分)以上が推奨されている。
「青年時代にはよく歩いていた方でも、72歳以降は7500歩ぐらいにとどめるほうがいいでしょう。それは、『4000歩で死亡リスクが低下する』というデータがありますが、その効果は7500歩で頭打ちになるからです」
歩き過ぎは軟骨の消耗などにつながることも
たくさん歩けるなら、たくさん歩くに越したことはない、と考える人もいるかもしれないが、歩き過ぎると体にダメージが蓄積され、けがなどの原因になってしまうこともある。中山さんによると、ひざ関節が悪い人が1万歩(約7km)以上歩くと、半月板損傷などが進むという論文もあるそうだ。また、体をスムーズに動かすのに必要な「軟骨」も、歩き過ぎるとすり減ってしまう。
「残念ながら、軟骨は年齢とともに少しずつ減っていき、一度すり減ると自然に再生することは難しい組織です。『軟骨は消耗品』だと思っておくほうがいいでしょう」
階段を降りる際も注意
道が平坦で空調も整備されているため、シニアにはショッピングモールなどでの散歩やウォーキングが進められることもあるが、階を移動する場合は注意が必要だ。健康のためのウォーキングの場合、エスカレーターやエレベーターではなく階段を使うのがおすすめだが、つまずく懸念があるため、必ず手すりに手をかけて歩くようにしよう。また、シニアの場合、上りだけにするのもポイントだ。
「階段を下るときには、実は上るときよりも股関節とひざ関節に大きな負担がかかるので、エスカレーターやエレベーターを使うほうが逆にいいでしょう」
教えてくれた人
中山潤一さん/整形外科医
なかやま・じゅんいち。中山クリニック院長、医学博士。大阪医大(現大阪医科薬科大学)卒業後、神戸大学整形外科入局。基幹病院で臨床経験を積み、医学博士号を取得後、神戸逓信病院医長、神鋼加古川病院医長を経て、2011年に中山クリニックを開業。有床診療所として年間380件の手術を行い、介護事業も展開するほか、保存療法、再生医療、関節鏡手術、エコー(超音波)治療など幅広い症例を手掛ける。著書に『動ける体が大復活する1分体操』(アスコム)など。YouTubeチャンネル「医師 中山潤一『整形外科・消化器内科』/兵庫県明石市の中山クリニック」https://www.youtube.com/@nakayama-clinic
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