「夜中に3度も母のトイレに付き添い睡眠不足…」夜の排泄介助、負担軽減3つの対策|夜間専門の介護対策やレスパイトケアなどケアマネに相談を
介護中、夜中のトイレ介助はつらいもの…。「ぐっすり眠れない日が続いてつらい」「仕事と介護の両立が不安」。在宅介護の限界を感じている50代女性の実例をもとに、夜間の排泄介助を少しでも楽にするための対策を介護職員・ケアマネジャーの経験をもつ中谷ミホさんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はライター・編集者として、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆・編集する。著書『介護職六法』(中央法規出版)、監修『サ責があなたに贈る本』(HTC出版)。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級・終活ガイド資格1級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703
介護する家族が「共倒れ」しないための対策
在宅介護では、夜間のトイレ介助に悩む家族が少なくありません。夜中に何度も起きて介助を続ける生活が続くと、介護する家族は睡眠不足に陥り、仕事や健康面に影響が及ぶこともあります。その結果、介護を続けることが難しくなり、「共倒れ」に至るケースもあります。そこで今回は、夜間のトイレ介助による負担を軽減し、介護する家族が疲弊しないための対策をご紹介します。
「夜中に3回、母に起こされる」眠れない日々
母親(84才・要介護1)と2人で暮らす高橋慶子さん(仮名・56才・会社員)。高橋さんを悩ませているのが、夜間のトイレ介助です。
母親は毎晩2〜3回トイレに起きます。足腰が不安定でふらつきやすく、転倒が心配なため、そのたびに付き添っています。トイレに間に合わず失禁してしまう夜もあり、着替えやシーツ交換の介助まで行うと、その後はなかなか寝つけません。紙おむつを勧めても、母親は「絶対にいや」と拒否しています。
こうした生活が続いたことで、高橋さんは日中の眠気から仕事のミスが増え、体調を崩すことも多くなりました。
「このままでは私が先に倒れてしまう」と不安を募らせています。
夜間のトイレ介助が家族の負担に。寝不足による「共倒れ」を防ぐには
高橋さんのように、夜中に何度も介助のために起きる生活が続くと、十分な睡眠が取れず、仕事や健康面だけでなく、心の余裕まで失われてしまうこともあります。
介護する側が倒れてしまうと、在宅介護を続けられなくなります。「家族だから」と頑張りすぎず、負担を軽減する方法や利用できるサービスを知っておくことが、共倒れを防ぐことにつながります。
夜間頻尿は適切な治療で改善も?
夜間に何度も排尿のために起きる症状は「夜間頻尿」と呼ばれ、加齢とともに増える傾向があります。年齢を重ねると、膀胱に尿をためる力が低下するほか、夜間につくられる尿の量が増えることがあります。また、眠りも浅くなることで、尿意で目が覚めやすくなります。他に、病気や服用している薬が原因となっている場合もあります。
夜間頻尿は「年のせいだから仕方がない」と思われがちですが、原因によっては治療や生活習慣の見直しで改善が期待できることもあります。気になる症状がある場合は、かかりつけ医や泌尿器科に相談してみましょう。
参考:日本泌尿器科学会「夜間、何度も排尿で起きる」
https://www.urol.or.jp/public/symptom/03.html
夜間のトイレ介助の負担を減らす3つの対策
受診とあわせて取り入れたいのが、夜間の負担を減らすための環境づくりや介護サービスの活用です。ここからは、夜間のトイレ介助を少しでも楽にするための3つの対策をご紹介します。
対策1 夜用パッドやポータブルトイレで対策をする
◾️夜間用の高吸収パッド・紙おむつを活用する
夜間用の高吸収パッドや紙おむつは、日中用よりも吸収量が多く、朝まで交換せずに使えるものがほとんどです。夜中の着替えやシーツ交換の手間が減り、介護する家族の負担軽減につながります。日中はトイレへ行き、夜だけパッドや紙おむつを使用する方法も選択肢の一つです。
商品を選ぶ際は、「夜用」「おしっこ〇回分」といった吸収量の表示を目安にしながら、体に合ったサイズや、かぶれにくい通気性のよい素材を選びましょう。
高橋さんの母親のように、紙おむつの使用に抵抗を感じる高齢者は少なくありません。そのような場合は「夜用の下着」「吸水パンツ」と言い換えたり、「夜だけ」「念のため、お守り代わりに」と伝えたりすると、受け入れてもらいやすくなります。
なお、紙おむつや尿取りパッドは介護保険の給付対象外ですが、自治体によっては現物支給や購入費の助成があります。詳しくは、お住まいの市区町村の窓口へ確認してみましょう。
◾️ポータブルトイレを設置する
ベッドサイドにポータブルトイレを設置すると、夜中にトイレまで移動する距離が短くなり、転倒のリスクを減らせます。付き添う家族の負担も軽くなります。
ポータブルトイレは、介護保険の「特定福祉用具販売」の対象です。購入費の支給を受けられるため、利用者は自己負担割合(1〜3割)に応じた金額で購入できます。支給限度基準額は、原則として同一年度で10万円です。
参考:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group22.html
座面の高さやひじ掛けの有無など、立ち座りのしやすさを確認し、使うかたの体に合ったものを選びましょう。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談すると安心です。
また、寝室からトイレまでの動線に足元灯やセンサーライトを設置すると、夜間でも足元が見えやすくなり、安全に移動できます。手すりの取り付けは、介護保険の住宅改修の対象になります。
対策2 夜間専門の介護サービス「夜間対応型訪問介護」を活用する
「夜間対応型訪問介護」は、夜間帯(18時〜翌朝8時)に利用できる訪問介護サービスです。決まった時間にヘルパーが訪問する「定期巡回」のほか、緊急時にオペレーションセンターへ通報して相談したり、ヘルパーに駆けつけてもらったりすることもできます。
夜間にヘルパーが訪問してトイレ介助やおむつ交換を行うため、家族は基本的に起きて立ち会う必要はありません。ヘルパーは事前に預かった合鍵や玄関のキーボックスなどを利用して訪問します。鍵の預け方や立ち会いの有無は契約時に確認します。「必要なときだけ来てもらう」といった利用も可能です。対象は要介護1以上のかたで、同居家族がいても利用できます。
費用の目安は1割負担の場合で月額の基本料金が約990円、これに訪問1回あたり数百円程度が加わります(お住まいの地域や負担割合により変わります)。
ただし、地域密着型サービスのため、原則としてお住まいの市町村にある事業所しか利用できず、地域によっては事業所がない場合もあります。利用できるかはケアマネジャーや地域包括支援センターに確認してみましょう。24時間対応の「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」というサービスもあります。
参考:厚生労働省:介護サービス情報公表システム「夜間対応型訪問介護」https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group6.html
対策3 ショートステイなどで、介護する人が休む日をつくる
ショートステイ(短期入所生活介護など)は、施設に短期間宿泊して介護を受けられるサービスです。その間家族は介護から離れて休むことができます。
「自分が休むためにサービスを使うなんて」と後ろめたさを感じるかたもいますが、介護者の休息を目的とした利用は「レスパイトケア」と呼ばれています。介護を続けるためにも、定期的に休む日をつくることが大切です。
夜の排出介助のまとめ
冒頭でご紹介した高橋さんは、ケアマネジャーに相談してベッドサイドにポータブルトイレを設置しました。母親には「夜だけお守り代わりに使ってみない?」と声をかけ、パンツ型のおむつを使うようになったことで、夜中に起こされる回数は大きく減りました。「朝までぐっすり眠れる日ができて、気持ちに余裕が戻ってきました」と話します。
夜間のトイレ介助による睡眠不足が続くと、介護する家族の心身の負担は大きくなります。介護する人が体調を崩してしまうと、在宅介護を続けることが難しくなる場合もあります。
夜間の介護の悩みは、家族だけで抱え込まず、担当のケアマネジャーに相談しましょう。「夜中に2〜3回起きて介助している」など具体的な様子を伝えれば、負担を減らす方法を一緒に考えてくれます。また、必要に応じてケアプランの見直しも検討してもらえます。介護による睡眠不足や疲労も、遠慮せず相談してください。
