【介護用おむつに関する意識調査】家族&ケアマネの本音とは?「介護家族の6割超が夜間交換が負担」「ケアマネが勧める際のポイントは吸収力」
排泄の介助は羞恥心を伴うプライベートな問題であるため、介護をする側にとってもされる側にとっても大きな負担やストレスがかかるもの。どのような方法で介助を行えば双方が前向きにケアを受け入れられるのか悩んでいる人も多いだろう。そんな人々の負担軽減を目的に行われた「おむつに関する意識調査」の結果をレポートする。
「おむつに関する意識調査」介護家族&ケアマネの本音とは?
超高齢社会の進行に伴い、介護サービスの需要が増加し続ける現代日本。2025年5月末時点で約725万人の要介護・要支援認定者数は、2040年には843万人に達する見通しとなっており(※1)、このような状況の中で介護に使用する消費財の市場も拡大している。その中でも最も大きな割合をしめているのがおむつとされており、介護家族の経済状況や介護環境に大きく影響を与える要素だと考えられる。
排泄はタイミングや頻度などが一定ではないため、介護家族にとっては介助の負担が大きい。特に、夜間の排泄介助は睡眠時間の確保の難易度を上昇させるなど、体力的な問題も深刻だ。また、総務省の調査によると、働きながら介護をしている人(いわゆるビジネスケアラー)は365万人であり(※2)、仕事と介護の両立のためにも排泄の課題は重要だと言えるだろう。
そこで、介護で悩む人向けコミュニティ『安心介護』や、ケアマネジャー向けコミュニティ『ケアマネドットコム』を提供するエス・エム・エスは、安心介護会員340名とケアマネドットコム会員420名を対象に、「おむつに関する意識調査」を実施。介護家族のニーズを満たす製品開発に重要な情報を発表し、介護家族の負担軽減を目的としてアンケート調査を行った。
※1 厚生労働省「令和7年5月分 介護保険事業状況報告(暫定)結果の概要-p.1」および「第9期計画期間における介護保険の第1号保険料について集計結果-p.47」より
※2 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査の結果の概要-p.24」より
介護家族の3人に1人が排泄の介助に負担を感じている
まず最初に、介護家族を対象に、介護の中で負担に感じることを尋ねたところ、昼間、夜間ともに約33%が排泄の介助を負担に感じていると回答する結果となった。食事の介助や入浴の介助よりも負担感が強いことが示唆され、これには頻度とタイミング等が影響していると予想される。
夜間のおむつ交換は介護家族の6割超が負担を感じている
続いて、夜間のおむつ交換をしている人を対象に、夜間のおむつ交換について、自身や家族が感じた負担の程度を尋ねた。すると「非常に負担を感じている」が40.4%で最も多い回答となり、「やや負担である」25.0%と回答した人と合わせると65.4%もの人が夜間のおむつ交換に負担を感じているという結果となった。
おむつに関しての問題は「コスト負担」「尿・便の漏れ」が1位
また、家族がおむつを使用したことのある人を対象に、おむつ類(紙パンツ・尿取りパッド・テープ式おむつなど)を使用する際の最も大きな悩みは何かを尋ねた。その結果、1位は同率の51.1%で「コスト負担」と「尿や便が漏れる」という回答となり、3位には「においの問題」47.7%と続いた。次点はごみの問題であり、コスト面と生活環境面への課題感が強いことが明らかになった。
おむつ導入時の悩みは「どのタイプのおむつが良いかわからない」が最多
次に、再び家族がおむつを使用したことのある人を対象に、家族におむつ類を使用するにあたって、使用を開始する前の悩みについて尋ねたところ、過半数の人が「どのタイプのおむつが良いかわからなかった」と回答した。介護家族にとっておむつ選びについての情報取得が難しい状況であることを示唆していると言えるだろう。
おむつを拒否された? ケアマネジャーの回答
今度は、ケアマネジャーを対象に、おむつ類の導入が必要な際に、その使用を被介護者や家族に嫌がられたり拒否されたことはあるかを尋ねた。すると「時々ある」と答えた人は33.6%であり、「よくある」3.3%を足しても、4割に満たない結果となった。
おむつへの抵抗感は「本人が恥ずかしい・情けないと感じる」が最多
続いて、ケアマネジャーを対象に、おむつ類の導入に際し、被介護者や家族が心理的な抵抗感を示すことがあるかを尋ねた。その結果、64.5%が「本人が『恥ずかしい』『情けない』と感じる」と回答し、多くの被介護者は抵抗感を持つということが明らかとなった。
ケアマネジャーの4割が商品の見た目が理由でおむつ導入を嫌がられた経験あり
次に、ケアマネジャーを対象に、「商品パッケージ(見た目)」が理由でおむつの導入を嫌がられた経験があるかを尋ねると、合わせて40.0%の人が「経験あり」と回答する結果となった。
また、「おむつらしくないデザイン・パッケージ」であれば、被介護者や家族の抵抗感は軽減されると思うかの問いには、合わせて47.1%のケアマネジャーが「軽減されると思う」と回答した。
ケアマネジャーの観点でおむつを勧める際のポイントは「吸収力」
続いて、ケアマネジャーを対象に、利用者におむつ類を提案する際に重視するポイントについて尋ねた。その結果、最も多い回答は「吸収力」62.1%となった。「商品デザイン」は5.7%に留まっており、前問の結果と合わせると、おむつらしくないデザインの商品を提案することにより、抵抗感は軽減できると考えてはいるもののデザインについて言及はしていない様子が窺える。
おむつ類ブランドの認知度は「ライフリー(ユニ・チャーム)」が最高
最後に、介護家族、ケアマネジャーのそれぞれに、高齢者用おむつ類のブランドについて知っているものを尋ねた。すると、2位までは介護家族とケアマネジャーの認知度の差はあまりないものの、3位、4位は介護家族とケアマネジャーでは、認知度が10%程度、5位は20%程度の差が生まれる結果となった。
2位までは介護家族とケアマネジャーの認知度の差はあまりないものの、3位、4位は介護家族とケアマネジャーでは、認知度が10%程度、5位は20%程度の差があった。
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今回の調査では、排泄介助に対する介護家族の大きな負担や、おむつ選びに関する情報不足が浮き彫りとなった。各社メーカーは診断コンテンツなどを通じて適切な製品提案を行っているが、その情報が実際の介護現場、特に家族には充分に届いていないのが現状だ。
ケアマネジャーへの調査では、半数近くがおむつらしくないデザイン・パッケージで導入時の抵抗感を軽減できると考えつつも、提案時には「吸収力」など機能的な面を重視していることも明らかに。デザインによる抵抗感の軽減はあまり考慮せず、必要性に応じて被介護者や介護家族を丁寧に説得し、導入の抵抗感を乗り越えていることが予想される。
今後も利用者本人の尊厳を守りつつ、スムーズなおむつ導入のため、デザインも機能性も被介護者や家族のニーズに応えたおむつが展開していくことが期待される。
【データ】
エス・エム・エス
https://www.bm-sms.co.jp/
ケアマネドットコム
https://i.care-mane.com/
【調査概要】
エス・エム・エス「安心介護・ケアマネドットコム」おむつに関する意識調査より
調査期間:2025年5月20日(火)~2025年5月31日(土)
調査対象:安心介護会員340名、ケアマネドットコム会員420名
調査方法:Webを使用したアンケート
※エス・エム・エスの発表したプレスリリース(2025年8月28日)を元に記事を作成。
図表/エス・エム・エス提供 構成・文/秋山莉菜