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サービス

訪問介護とは?介護保険で受けられるサービスの利用方法・料金・種類を解説

 利用者の日常生活を支援し、住み慣れた自宅で生活を続けられるようにする「訪問介護」。介護保険の制度によって費用負担を抑えてサービスを利用することができるが、介護保険を使って訪問介護を利用するにはいくつかの条件がある。訪問介護を介護保険で受けるための条件や、実際に受けられるサービス内容、利用方法を紹介しよう。

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教えてくれた人

小山朝子さん/介護ジャーナリスト

洋画家の祖母を約10年に渡って在宅介護した経験から、執筆や講演など多方面で活躍。介護福祉士の資格も持つ。著書『介護というお仕事』(講談社)のほか、2023年に発売した『ひとり暮らしでも大丈夫! 自分で自分の介護をする本』はロングセラーに。新刊『【11の成功例でわかる】自分で自分の介護をする本』(ともに河出書房新社)も好評。

訪問介護とは

 訪問介護とは、利用者の自宅に訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問し、自立した日常生活を送れるようサポートするサービスのこと。介護保険の対象のため、費用負担を抑えつつ利用することができ、住み慣れた自宅での生活を継続しながら、必要な支援を受けることができるのが大きなメリットだ。

入浴や食事などを支援する身体介護

 訪問介護には大きく3種類のサービスがあり、1つが利用者の身体に直接触れてサポートする「身体介護」だ。介護の専門性が求められるため、比較的介護度が重い人を対象としたサービスが多い。具体的には、以下のようなサービスがある。

・食事介助:口腔ケアや自力での食事が難しい人への支援

・排泄介助:トイレ誘導、オムツ交換など

・入浴介助:入浴の準備や洗身介助、見守りなど

・清拭(せいしき):タオルなどで体を拭く

・体位変換:体の向きや姿勢を変える

・更衣介助:着替えの介助

・身体整容:洗顔や歯磨き、爪切り、髭剃りなどの身だしなみを整える

・移乗介助:異なる場所への乗り移りを手伝う

・歩行介助:安全に歩行するための支援

・外出介助:通院や日用品の買い物などの外出に付き添う

掃除・洗濯・買い物などの生活援助

 2つ目は、利用者が自力で行うことが困難な家事を代行・補助する「生活援助」だ。部屋の清掃やゴミ出し、洗濯、調理のほか、日用品や食材の買い物、医療機関での薬の受け取りなどを支援する。

車の乗り降りを介助する通院等乗降介助

 3つ目が、利用者が通院などをする際に、車の乗り降りを支援する「通院等乗降介助」だ。病院など目的地への移動時に車への乗降を支援するほか、病院入り口までの移動なども手助けする。ただし、病院内での移動や介助は病院スタッフの業務となるため、介護保険の対象外となる。

訪問介護で受けることのできないサービス

・同居する家族が対応可能な範囲の家事
・利用者以外の家族へのサービス(家族の部屋の掃除や食事の準備など)
・非日常的な家事(床のワックスがけや家具の修理など)
・ペットの世話
・おせち料理などの特別な調理
・公共料金の支払いや銀行での手続き
・契約書への記入
・注射や点滴、経管栄養などの医療

介護保険を使って訪問介護を利用するには「要介護」の認定が必要

 訪問介護は介護保険の対象だが、利用するためには介護保険の要介護認定を受ける必要がある。要介護認定で、日常生活全般にわたる支援が必要な「要介護」(1~5の5段階)の状態であると認定された場合に介護保険を使って訪問介護が利用可能となる。

 ただし、「要介護」の前段階で軽度の支援が必要とされる「要支援」(1、2の2段階)の場合でも、予防目的の「介護予防訪問介護」を利用することができる。これは要介護状態の進行を防ぐためのもので、基本的には生活援助が中心だ。

介護保険には利用限度額がある

 介護保険を使えば1~3割の自己負担で訪問介護を利用できるが、月ごとの利用限度額が決まっており、限度額を超えた分は全額自己負担となる。

 利用限度額は要介護度によって異なり、1か月あたりの区分支給限度額は、要支援1で5万320円、要支援2で10万5310円、要介護1は16万7650円、要介護2は19万7050円、要介護3は27万480円、要介護4は30万9380円、要介護5は36万2170円となっている。(厚生労働省「介護サービス情報公表システム」を参照https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html

介護保険外のサービスに対応している事業所も

 家具の移動や庭の手入れ、来客対応など、介護保険でカバーされない介護保険外のサービスに対応している事業所もある。どのようなサービスが必要なのかをケアマネジャーや訪問介護事業所に伝え、相談してみよう。

訪問介護で注意しておきたい「2時間ルール」

 訪問介護には、1日で複数のサービスを利用する場合にそれぞれのサービス間で2時間以上の間隔を空けなければならない「2時間ルール」と呼ばれるものがある。仮に2時間の間隔を空けずにサービスを利用した場合、1回のサービスとして扱われる。

2時間ルールは報酬の適正化が目的

 2時間ルールは報酬の適正化を目的として導入されたもので、利用者が支払う費用の計算の基礎となる「単位」を適切に算出することにつながる。単位はサービスの種類や内容、提供時間などによって定められている。

 例えば、「【1】2時間ルールがない状態で、短時間の間に何度も訪問して複数のサービスを提供した場合」と、「【2】2時間ルールがある状態で、複数のサービスを連続して提供した場合」では、【2】のほうが単位数が少なくなる計算だ。

 一方、サービスの提供者側にとっても、サービス提供の内容や時間が明確になりやすいため、利用者とサービス提供者の間の認識のズレを防ぐことにつながるというメリットがある。

具体的な料金計算例

 要介護2の利用者(自己負担1割)の場合に、全国平均の10.0円/1単位で試算すると、以下の金額となる。

【身体介護】30分の場合
単位数:387単位
料金:387単位 × 10円 = 3870円
自己負担額:3,870円 × 0.1 = 387円

【生活援助】45分の場合
単位数:220単位
料金:220単位 × 10円 = 2200円
自己負担額:2200円 × 0.1 = 220円

 介護サービスは要介護(要支援)の状態に応じて支給限度額が定められている。要介護2の場合は支給限度額の上限は1か月あたり19万7050円。このうち1~3割を利用者が負担することになり、1割負担の方の場合は1万9705円になる。

 利用者負担の割合について、65歳以上の方はかかった費用の1割で、一定以上の所得がある場合は2割または3割を負担する。

緊急時や看取り期の介護は例外として扱われる

 介護の現場ではさまざまな状況が考えられるため、2時間ルールが例外とされるケースもある。その1つが「緊急時」だ。利用者の体調変化や生活上のトラブルなど、緊急で対応しなければならない場合は、「緊急時訪問介護加算」が算定される。ただし、ケアマネジャーによる判断なども必要なため、どういったケースが緊急時の扱いとなるのかはケアマネジャーに確認しておくのがおすすめだ。

 また、医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した人に対して訪問介護を提供する「看取り期の介護」の場合も、制約を課さず、繊細に対応すべきとされるため、2時間ルールは適用されない。

訪問介護の利用方法・手順

 訪問介護を利用するには事前の申請などいくつかのステップを踏む必要がある。一定の時間も要するため、早めに対応するのがおすすめだ。

【1】要介護認定の申請

 介護保険を使って訪問介護を利用したい場合は、まず利用者が住んでいる市区町村の担当窓口に行って要介護認定を申請する必要がある。申請は利用者本人のほか、家族や地域包括支援センターが代行することも可能なので、まずは地域包括支援センターに行き、相談をするとよいだろう。

【2】要介護認定調査・審査・判定

 申請後、介護認定調査員が自宅に訪問し、認定調査を行う。調査後、30日ほどで判定結果が郵送で通知される。

【3】ケアマネジャーとの契約、ケアプランの作成

 要介護1~5の認定を受けた場合、ケアマネジャーがケアプラン(介護サービス計画)を作成。ケアマネジャーは利用者の自宅を訪問して、面談を通じて、利用者に必要なサービスや頻度を計画に反映する。

 ケアマネジャーを探すには、市区町村の窓口や地位包括支援センターで近隣の居宅介護支援事業所(ケアマネジャーが働く事業所)が載っているリストや冊子をもらい、そこから探すのが一般的だ。ケアマネジャーとはさまざまな場面で関わることになるため、信頼ができ、自分と相性がよいと感じるケアマネジャーを選ぶようにしよう。

【4】訪問介護の事業所と契約

 ケアプランを作成してもらったら、訪問介護を提供する事業所と契約を結ぶ。契約後、ホームヘルパーが要介護者の自宅へ出向き、訪問介護を行う。具体的な時間や頻度、支援の内容など、訪問介護のサービス内容はケアプランに基づく。

訪問介護の事業所の選び方

 訪問介護の事業所を選ぶ際は、いくつかの確認ポイントを押さえておくこと大切だ。

介護保険の利用可能な事業所を選ぶ

 昨今、家事代行サービスを提供する会社が増えているが、介護保険を使って訪問介護を受ける場合は、介護保険適用の事業所を選ぶことが大前提だ。介護保険適用の事業所は、市区町村の窓口やケアマネジャーから案内してもらうことができる。インターネットを使って自分で候補を探し、ケアマネジャーに提案してもよいだろう。

介護サービス情報公表制度をチェック

「介護サービス情報公表制度」は介護保険法に基づき、利用者が客観的な情報をもとに比較検討し、介護サービス事業所を主体的に選択できるようにすることを目的としている。訪問介護のサービスを提供する事業所の従業者の情報や運営状況を閲覧できる。

厚生労働省|介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」全国版(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)

事業所の所在地やサービスエリアを確認する

 訪問介護は、利用者の自宅に訪問して支援を行うため、事業所の所在地やサービス提供エリアも重要だ。事業所が自宅からどのくらいの距離にあるかや、サービス提供エリアに自宅が含まれているかなどを確認しよう。

 事業所が遠方の場合、ホームヘルパーの交通費が実費負担となる場合もあり、事業者との契約の際に確認しておきたい。

柔軟な対応ができるかを事前に確認する

 利用者の体調や状況に応じて必要なサービスの内容や利用回数、時間帯などを変更したほうがよい場合もある。そうした場合に柔軟に対応してもらえるかをあらかじめケアマネジャーや訪問事業者に確認しておくことが大切だ。

料金に関することは遠慮せずにたずねる

 訪問介護はサービスの内容や提供時間によって費用が変わり、追加料金やキャンセル料が発生することもある。料金について疑問があれば遠慮せずにケアマネジャーや事業者にたずねよう。

失敗しない事業所選びのコツ

 いくら条件に合っているように見えても、実際に利用してみると、使い勝手が悪かったり、合わないと感じてしまったりすることもある。事業所選びに失敗しないためには、事前に情報をどのくらい集められるかがポイントとなる。

事業所の評判や口コミを事前に確認する

 事業所を選ぶ際は、その事業所のHPだけでなく、口コミなどをチェックすることも重要だ。もし身近に実際の利用者がいる場合は、直接話を聞いてみるのもおすすめ。ケアマネジャーに相談すれば、実際にその事業所を利用したことのある人の体験談を聞くことができる場合もある。

ケアマネジャーにしっかり相談する

 ケアマネジャーは、利用者の状況やニーズに基づいて最適な介護サービスを提案してくれる専門職だが、地域の訪問介護事業所についての情報も豊富に持っているため、事業所選びにおいてもケアマネジャーとしっかり相談して選ぶのがおすすめだ。

 ケアマネジャーが紹介する事業所であれば、事業所とトラブルがあった場合に、ケアマネジャーが間に入って調整を行いやすいといえるだろう。

訪問介護を受ける際の注意点

 利用者の日常生活を支援してくれる訪問介護だが、利用時にはいくつかの注意点がある。

同居家族がいる場合の「生活援助」は事前に確認を

 同居している家族がいる場合の「生活援助」については原則認められていないが、家族の障害、疾病など、やむを得ない事情により、家事が困難な場合には算定できることとなっている。該当するかどうかはサービス利用開始前にケアマネジャーに確認しよう。

ホームヘルパーにはお願いできないこともある

 日常生活のさまざまな場面を支援してくれるホームヘルパーだが、介護保険下のサービスのため、お願いできないこともある。

 例えば、注射や点滴といった医療行為を訪問介護で受けることはできない。ただし、2005年に厚生労働省から出された通知で、湿布を貼ったり、目薬を差すなどの行為は医療行為にあたらないとされている(いずれの場合も患者の状態が安定しており、医師や看護師による容態観察が必要でない場合に限られる)。

 また、2012年4月からは、一定の条件を満たせば介護福祉士やホームヘルパーなどが痰の吸引や経管栄養の処置ができるようになった。

 トラブルを避けるためにも事業者と利用者の双方で医療的な処置の内容について確認しておくことが大切だ。

 また、旅行の同行や長時間の外出支援なども対象外だ。あくまでも日常的な生活支援が目的のため、利用者の移動に介助が必要だとしても、日常的な生活の範囲から外れた部分については支援対象外となる。

訪問介護のサービスをキャンセルする場合の注意点

 訪問介護のサービスをキャンセルすることは可能だが、キャンセル料金が発生することがある。キャンセルの条件は事業所によっても異なるため、事前に確認しておこう。

 ただし、むやみな変更やキャンセルは控えるのが賢明だ。突然の体調不良や急用でキャンセルが必要な場合も、できるだけ早めに連絡するようにしよう。

ホームヘルパーは変更可能だが、トラブルの原因となることも

 ホームヘルパーも変更することは可能だが、内容や伝え方によってはトラブルの原因となることもある。

 サービスを利用するうちに、利用者とホームヘルパーとの間でちょっとした問題や不和が生じることはあるが、そのたびに変更を依頼していては、事業所側に不信感を与えてしまったり、新たに対応できるホームヘルパーがおらずサービス自体が受けられなくなってしまったりすることも考えられる。何か問題が生じた場合は、ケアマネジャーや訪問介護事業所のサービス提供責任者(※)などに相談し、問題が解消できないか探るのがおすすめだ。(※サービス提供責任者は、サ責とも言われ、ケアマネジャーが作成したケアプランを基に訪問介護計画書を作成し、現場のヘルパーに指示や指導を行う訪問介護事業所のリーダー的存在)

 しかし、それでも問題が解消されない場合や、特定の事情でどうしてもホームヘルパーを変更したい場合は、我慢せず、ホームヘルパーの変更をお願いしよう。

文/新藤まつり

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