倉田真由美さん「15年以上乗り続けた愛車」くらたまね~&らいふVol.14
漫画家の倉田真由美さんが暮らしの中で気になることを綴るエッセイ、このたびのテーマは「愛車」。つい最近着られなくなった服の処分をしたばかりだが、こと愛車に関しては大切に修理しながら乗り続けてきた。思い入れのある1台に、思わぬことが起きて――。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。夫の叶井俊太郎さん(享年56)の闘病から看取りまでを綴った書籍『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』も話題に。
大切に乗り続けてきた愛車
私は、15年以上乗り続けた愛車を持っています。
電動式ではない、前にカゴがある、いわゆるママチャリです。買った時は、今は行きつけになっている自転車屋の店主が、
「この自転車はいいよ。アルミ製で軽いし、錆びない。ちょっと高いけど、お薦めです」
と、絶賛していた自転車でした。
当時は今より自転車がうんと安くて、ママチャリは1万円以下のものがごく普通にありました。9800円、激安で7800円とか。でも私は「長く乗りたい」という気持ちが強く、店主の薦めるB社製、水色のアルミフレームの自転車を選びました。当時3万円くらいだったように思います。ママチャリとしてはかなり高級品です。
私は毎日のように自転車に乗ります。買い物も、電車で出かける時に駅に行くのも。勿論、見た目は相当ボロくなってきましたが、タイヤを替えたり破れてきたサドルにはカバーを掛けたりしてメンテナンスしながら乗り続けました。カバーは頑丈だけど見た目がゴツくてオシャレではないので、ますます古臭さが際立つようになりましたが、他の似た色の自転車との差別化には役立ちました。
見た目がボロいので鍵をかけ忘れても盗まれないことも、この自転車が気に入っている点の一つです。夫の自転車、娘の自転車が盗まれた時も、私の自転車は無事でした。でも一昨年、漕ぐとギイギイ音が鳴るようになってしまいました。
店主いわく「そろそろ…」
直してもらうために件の自転車屋に行くと、
「さすがにそろそろ寿命じゃないかな」
と言われてしまいました。
「当たり前だけど、いい自転車でもいつかは乗れなくなるからね。今からお金出して修理するより、新しいのを買ってもいい時期じゃないかな」
「ええ…もう限界ですか」
「そうだね。そろそろかな。いろいろガタがきてる」
いつも薄利で自転車修理をしてくれて、何か買おうとしても「いや、それは必要ないんじゃないかな」と止めてくれたりすることすらある、信頼できる自転車屋さん。その言葉は重いです。
「私、この自転車とても気に入っていて。まだ乗りたいんですよね」
「いやー、そうは言ってもね…」
結局、この日は音が鳴らないよう修理してはもらえず、諦めて帰宅。以降はギイギイ音と共に自転車を漕ぐことになりました。でも慣れてしまえば乗っている本人は気にならないし、前を歩く人に気づいてもらえるのでちょっと便利くらいに思っていました。
まだまだ乗るぞ。
そう思っていました。しかし、思わぬ出来事が…(次回に続く)
