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健康

筋トレ&散歩だけでは不十分!歩く力を維持する「体幹力」の鍛え方を整形外科専門医が解説

 人生100年時代といわれるいま、日本人女性の健康寿命は75.45才(※1)。100才まで自分の足で元気に歩くためには、「体幹」と「バランス力」が必須だという。転ばない体をつくる「正しい姿勢」や身体機能を維持する要素を整形外科専門医に教えてもらった。

※1:厚生労働省「第4回健康21日本(第三次)推進専門委員会資料」より。女性の平均寿命は87.09才で、その差は11.64年もある。

教えてくれた人

金岡恒治(かねおかこうじ)さん/整形外科専門医・早稲田大学スポーツ科学学術院教授。体幹深部筋研究に基づく運動療法を用いた腰痛治療研究の第一人者で、『あしたが変わるトリセツショー』(NHK)などテレビ出演も多い。著書に『よくつまずく 転ぶ・ふらつく 自力で克服! 名医が教える最新1分体操大全』(文響社)など多数。

「100年動ける体」への第一歩は「正しい姿勢」にあった

 ちょっとした段差でつまずくーーこれは、体幹の衰えを示すサインの1つ。「年だから、仕方がない」と放置していると、老後に寝たきりになるリスクが高まる可能性があるという。整形外科専門医の金岡恒治さんが解説する。

「私たちは皆、生まれたときは自分で動くことができません。やがて首がすわり、四つん這いから起き上がり、最初は転びながらも2本足で歩けるようになる。これは、成長とともに体幹にあるインナーマッスル(体幹筋)や、アウターマッスル(表層筋)がバランスよく使えるようになるから。特に、インナーマッスルは背骨を正しい位置に保ちながらよい姿勢を維持する、つまり『体幹を整える』のに重要な役割を担っています」

 体幹とは、頭と手足を除く胴体部分(筋肉、骨、関節、内臓まですべて含む)のこと。若いうちは体幹機能が高いため正しい姿勢を維持しやすく、体を自在に動かせるが、加齢とともに機能は軒並み衰える。姿勢が維持できなくなるばかりか、痛みなどの症状も現れてくるという。

「その主な症状が『首・肩のこり』『五十肩』『腰痛』『ひざ痛』です。痛みをかばうように背中が丸まり猫背姿勢になり、肩が前に出てきます。その姿勢では前を向いて歩けないので、さらに頭を前に突き出すようになる。

 せっかく、長い年月をかけて転ばずに歩ける『体幹』を獲得したのに、それが崩れることで、再び歩行が不安定になってしまうのです」(金岡さん・以下同)

このまま何もしなければ、背骨が圧迫され、椎間板が潰れてさらに背中が丸まり、背骨が変形する「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」や「変形性膝関節症」、「変形性股関節症」などを発症し、やがて足や体が思うように動かなくなる。腰やひざの病気も、もとは「体幹の崩れ」からきていることが多いのだ。

あご・肩甲骨・お腹。体幹を支える3つのポイント

「筋・骨格系の機能は49才を境に急激に低下するという研究報告(※2)もありますが、早い人では30代から肩や腰のこりが出ていると思います。体幹の衰えは、そうした痛みが出る前から始まっている。マッサージや薬に頼りすぎず、体幹を整えながら自力で機能を高める(あるいは維持する)必要があるのです」

 体幹を整え直すには、まず「いい姿勢をつくることから」と、金岡さんは続ける。

「やり方は簡単。『あごを引く』『肩甲骨を寄せる』『お腹に軽く力を入れる』の3つを意識するだけです。これにより首の前側にあり、頭をバランスよく支える『頸長筋(けいちょうきん)』や、肩甲骨を寄せるときに動く『菱形筋(りょうけいきん)』、息を吐くときに働く『腹横筋(ふくおうきん)』という、衰えていた3つのインナーマッスルを働かせることができます。

 体に力みがなく、ヨガなどでいわれる『頭を上から引っ張られる感覚』が実感できれば成功。立ったときはもちろん、座っているときもこの姿勢をキープすることが体幹トレーニングの第一歩です」

※2:Murofushi,K.,Katagiri, H., Mitomo, S. et.al.Exploring age-related changes in motor function: insights from the peak decline
found in Koji Awareness screening test. Sci Rep14, 18903(2024).

正しい姿勢のつくり方

【1】あごを引く(頸長筋)

【2】肩甲骨を寄せる(菱形筋)

【3】お腹に軽く力を入れる(腹横筋)

「筋トレだけ」「散歩だけ」では歩く力を維持するのは難しい

 姿勢の改善に加え、適度な運動を取り入れることで体の機能低下は予防できる。だが、「筋トレだけ」「散歩だけ」では、スタスタ歩ける力を維持するのは難しい。

「とはいえ『心・技・体』の3つを実践することで、身体機能は高められます。

『心』とは、いまここにいる自分を意識することで、『マインドフルネス』ともいいます。また、認知機能の維持や、『転ばないように』という危機回避能力を維持する『心構え』という意味合いもあります。

『技』は、体を効率的に使うスキルのこと。個人差があり、大谷翔平選手のようなトップアスリートは一瞬で体得できるようですが、体幹やバランス力をつけるトレーニング、ヨガなどを続けることで、運動が苦手な人でも正しい体の使い方を身につけることは可能です」

「体」は筋力、柔軟性、持久力といった体力のことで、筋トレ、ストレッチ、ウオーキングなどの「運動」が、これにあたる。

身体機能を維持する5つの要素

心:メンタル(マインドフルネスなど)

技:体の使い方(体幹トレーニング)

体:筋力、柔軟性、持久力(筋トレ、ストレッチ、有酸素運動)

「このメンタル、スキル、筋力、柔軟性、持久力の5つの要素を、食事の5大栄養素と同じようにバランスよく鍛えることが大切です。

 つまり、体幹が衰えているのに足の筋力を鍛えて脚力だけつけても、体の使い方は悪いままなのでけがや痛みを引き起こします。ジム通いやウオーキングで『体』を鍛える人は多いと思いますが、『技』磨きも加えることで、体幹が整い、バランス力が向上して歩きやすくなり、つまずきにくくなるはずです」

「技」を磨くには、「死ぬまで自力で生活したい」「旅行や買い物をあきらめない」といった目的を持ちながら「自分の体の弱点」を把握することが重要だ。

「スポーツ庁が発信しているセルフチェックの一部を紹介します。試してみると、『思いのほか肩甲骨の可動域が狭かった!』といった気づきがあるはずです。そして、自分の弱点がわかれば鍛えるべき部位が明確になるでしょう。年齢による体力の衰えは仕方のないこと。でも、あきらめずに動かせば、何才からでも効果は表れます」

「体の動きをセルフチェック」

 出典はスポーツ庁ホームページ。室伏広治東京科学大学副学長考案「セルフチェック」(Koji Awareness)で、自分の体を把握し、意識的に身体を動かすきっかけをつくろう。

【1】肩甲骨の可動域

 片方の手で反対側の耳たぶをつまむ(親指が表側にくるように)。そのままひじを頭の後ろまで回し上げたら元に戻す。反対の手も同様に行う。

<チェックポイント>できなかった人は姿勢に問題あり。

【2】バランス力

 時計を用意し、はだしになってまっすぐに立ち、腰に手を置く。片足を床から離し、そのままの姿勢をキープし、どのくらい維持できたか時間を計る。反対の足も同様に行う。

<チェックポイント>30秒キープできない人は転倒リスクがUP。

【3】体幹力

 仰向けに寝て両足を腰幅に開き、ひざを90度曲げ、手を前方に伸ばす。肩甲骨が床から離れるところまで上体を起こし、その姿勢を5秒キープする。

<チェックポイント>できなかった人は体幹力DOWN。

取材・文/佐藤有栄 イラスト/中村知史

※女性セブン2026年6月11日号

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