ハリー杉山さん、父親の介護で「施設=ネガティブ」の考えが一変「介護職はヒーロー。彼らの仕事はクリエイティブでクール」
イギリス人の父親と日本人の母親をもち、多言語を操るマルチタレントとして活躍するハリー杉山さん(41才)。順調にキャリアを重ねてきたように見える彼だが、その裏には「父親の介護」という大きな転機があった。その経験はハリーさんの生き方や考えにどんな影響をもたらしているのだろうか。40才を迎えた今、自らの経験を糧に社会に発信していきたい思いとは?【全3回の第3回】
介護の未来へ向けてできることを実践したい
「40才になって、自分の人生がハーフタイムに入ったような感覚があります。いったん立ち止まり未来に何を繋げていけるのか、そんなことをよく考えるんです」
取材を行ったのはサッカーW杯期間中。ハリーさんは大好きなサッカーの話題を織り交ぜながら、テンポよく語る。
「子どもの頃、テレビにかじりつくようにして観ていたサッカーのプレミアリーグに今は仕事で関わらせてもらっていますし、趣味のランニングも仕事につながっています。
F1もラジオも音楽もファッションも、好きなこと、やりたいことを全部仕事でやらせてもらっていて、10代の頃に夢見ていた未来をほぼ実現できています」
とはいえ「現状に甘んじていてはいけない」と強い口調で続ける。
「芸能界には新たな才能にあふれるかたが次々と現れますし、現状に満足してしまうと未来が厳しいものになってしまうかもしれない。時代とともに進化していくためには、自分が安心するConfortゾーン、そこから違うことに足を踏み出さないと。自分にとってアウェイの環境へと突き進むことも必要だと思っています」
人生を大きく変えた「父の介護」
自分が「好き」と思えることを仕事にしてきた一方で、著名なイギリス人ジャーナリストである父・ヘンリー・スコット・ストークスさんの約10年にわたる介護経験は、その後の人生観を大きく変えた。
「20代、30代はとにかく目の前のことに必死でした。父の介護もあって、仕事ももっともっと頑張らなきゃいけないと、自分に向かっていましたよね。40代を迎えた今、視座が変わったというか。これから自分は何を社会に返せるのか、この先自分が伝えていきたいことは何だろうと…」
その答えの一つが、「介護」だ。近年は仕事でも介護に関するテーマにかかわる機会が増え、以前にも増して関心が強くなった。フランスで生まれた認知症のケア技法である「ユマニチュード」を学んだことも新たな経験になったという。
「ユマニチュードは、相手の尊厳を守りながらケアを行うための技法です。父の介護中に知っていたら、もっと違う接し方ができていたかもしれないと思いました。
仕事でユマニチュードを教える専門家のかたたちとコラボもできましたし、介護のテーマを扱うテレビ番組に呼んでいただく機会も増えました。介護の分野で発信を続けていくことは今後の人生の中で、間違いなく重要なテーマですね」
介護職を応援したい!「介護の仕事はカッコいい」
母とともに長らく父親の在宅介護を続けてきたが、父の晩年には施設介護も経験した。
「父は晩年、自宅から近い特養(特別養護老人ホーム)に入居しました。当初は『愛する家族を施設に入れるなんて』とかネガティブな思いもあったのですが、実際に利用してみたらその考えは大きく変わりました。
スタッフのかたたちは懸命にサポートしてくださり、母もぼくも心身ともに救われたんです。介護を受ける側の家族の立場からすると、介護職はヒーローですよ。彼らの仕事はクリエイティブでクール、すごくカッコいい仕事だと思うんです」
これまでハリーさんは、都内の高校を訪れ、講演・授業を行った経験がある。そこでは海外留学生とも多く触れ合ってきた。
「ぼくが思っている以上に、将来を明確に考えている生徒さんがたくさんいることに驚きました。高校生との交流を通して特に実感したのは、ミャンマーやフィリピン、中国といった外国籍の生徒さんも多いということ。この子たちが、近い将来介護職に就くかもしれないし、『介護従事者ってカッコいいよね』と思ってもらいたいじゃないですか。介護職に対するイメージを変えていくことも、ぼくができる仕事のひとつなんじゃないかと思っています」
介護に必要なこと「自分の考え方を知る」
「もっともっと介護の未来を明るいもの、気軽に話せるムードになったらいいと思っています。
若いうちから、自分はどんな介護を受けたいのか、どんな人生の終わり方を望んでいるのか、考えておくこと。結果的に、本人、家族、介護従事者の三角形のバランスがうまく取れるケアにつながると思います。
実際に紙に書いてみるとわかってくるんです。A4の紙の真ん中に『自分』を置く。そこから線でつないで『大切な時間は何か』『心が回復する方法は何か』『病気になったらどんなサポートを受けたいか』とか、自分の望むことをつなげていく。
介護は、人生、生活の中で続いていくライフイベント。自分が何を大切にしたいのかを知ることは、介護される側にも、介護する側にも必要なことだと思います」
最後に介護に向き合っている人たちに熱いエールをいただいた。
「決してひとりで抱え込まないで! 予想外のことが起きても絶対に自分を責めないで! 情報を集め、人に頼り、苦しい時にはSOSを出しましょう。家族の介護を担う人も介護職の人も、自分自身を大切にしながら日々のケアに取り組んでほしいと思います」
◆ハリー杉山
1985年生まれ。情報番組『ノンストップ!』、F1トーク番組『F1サイドbyサイド』(ともにフジテレビ系)、『WEEKLYワールドサッカー』(BS11)、『POP OF THE WORLD』(J-WAVE)ほか、テレビ・ラジオなど数多くのメディアで活躍。イギリス人の父親を介護した経験から、近年は介護に関する取材や講演活動も精力的にこなしている。
撮影/小倉雄一郎 ヘアメイク/大嶋祥枝 取材・文/熊谷あづさ
