ふらつき・足腰の痛みを放置しない、転ばず元気に歩き続けるために。名医が教える1分体操「ひざ裏伸ばし」で、歩行時の着地痛を軽減
めまいや立ちくらみ、膝の痛みなどで歩きづらいと感じることはあるだろうか。そのような症状があると、歩行中に転倒を招きかねない。転倒は骨折を引き起こし、寝たきりや要介護状態につながるケースも。いかにして“転ばない体”を維持するかが重要だ。そこで、『よくつまずく 転ぶ・ふらつく 自力で克服! 名医が教える最新1分体操大全』(文響社)の著者、金岡恒治教授(整形外科専門医)に、バランス感覚の衰えや足腰の痛みを改善する体操について教えてもらった。
教えてくれた人
金岡恒治さん/早稲田大学スポーツ科学学術院教授・整形外科医
転倒を防ぐには「健脚」を保つことが大切
人生100年時代、健康寿命を縮める最大の要因といわれるのが「転倒」だ。転倒は骨折を招き、要介護状態や寝たきりへとつながる危険がある。実際、日本人男性の健康寿命は平均寿命より約9年短い。長く自立して歩くためには、転ばない「健脚」を保つことが欠かせない。
そう指摘するのは、『よくつまずく 転ぶ・ふらつく 自力で克服! 名医が教える最新1分体操大全』(文響社刊)の著者で、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の金岡恒治氏(整形外科専門医)だ。
「健脚を保つ第一歩は、日常生活で“美しい姿勢”をキープすることです。そのうえで『段差につまずく』『足がもつれる』といった日常のサインから歩く力の衰えの原因を見極め、原因別に対策を行なうことが大切です」(金岡教授)
美しい姿勢
・肩甲骨を背骨側に寄せる
・視線はまっすぐ
・あごを引く
・お腹をへこませる
時々めまいや立ちくらみがする
目や耳、足裏にあるセンサーの連携で成り立っている「バランス感覚」の乱れが転倒リスクにつながるケースもある。凹凸や傾斜のある地面でふらつくことがある人は「木のポーズ」でバランス感覚を鍛えることが肝要だと金岡教授は指摘する。
「ふらつきそうになっても安定を取り戻せるようにバランス感覚を養う体操です。鏡を見ながら鼻、へそ、骨盤の中心、足の親指の付け根が一直線に並ぶよう片足立ちします。頚椎を支える頸長筋、背中全体を安定させる多裂筋、お
腹を取り巻く腹横筋といった深部筋(インナーマッスル)を刺激して転びにくい体幹力を強化します。人間の二足歩行は片足立ちの連続であり、片足でバランスを取れることは歩く力にとって非常に大事です」
「木のポーズ」のやり方
時々めまいや立ちくらみがする、階段を下りる際、バランスを崩しそうで手すりがないと怖いなどの悩みがあるかたにおすすめの体操。1セット【1】~【2】を1~2回行う1日2セット。
【1】両足を揃えて立ち、あごを引いて肩甲骨を寄せ、軽くお腹をへこませ、両腕を胸の前で交差させる。
【2】右の足裏を左ひざの側面にあてて片足立ちをする。全身の力を抜き、浅い呼吸でその状態を15秒キープ。ゆっくりと【1】の姿勢に戻る。次に左右の足を変えて同様に行なう(ふらつく人は、手を椅子の背や壁にあて、転倒を予防する)
ひざが痛くて歩きづらい
足腰やひざの痛みで歩きづらさを感じたら、まずは整形外科などを受診して原因を特定し、症状に合った体操を行なうことが重要となる。
たとえば「腰部脊柱管狭窄症」の患者は、下肢の痛みや強いしびれで歩けなくなるが、前屈みで休むとまた歩けるようになる症状が出る。これを防ぐのが、骨盤を後傾させ、腰椎を丸めて脊柱管を広げる「骨盤後傾体操」だという。
「骨盤後傾ができるようになると、その場で症状を緩和でき、歩き続けることが可能になります」
歩行中、足の着地時にひざが痛む人は「ひざ裏伸ばし」を実践したい。
「太ももの裏とふくらはぎの筋肉を伸ばして、筋肉と骨をつなぐ腱を柔軟にすることで、着地時の痛みを和らげる効果が期待できます」
「骨盤後傾体操」のやり方
下肢にしびれや痛みを感じるかたに適した体操。1セット5~6回行う。1日何セットでもよい。
【1】椅子に腰掛けて骨盤を立て、両手で腰骨をつかむ。
【2】おしりを支点にし、骨盤上部をゆっくりと5秒かけて後ろに倒し、5秒キープ。【1】の姿勢に戻る
「ひざ裏伸ばし」のやり方
ひざが痛くて歩きづらいかたに適した体操。1セット1分ほど繰り返し行う。1日2~3セット。
丸めたタオルを用意する。両足を伸ばして床に座り、痛くないほうのひざを立て、痛みのあるひざの下にタオルを入れ、両手で体を支える。ひざ裏でタオルを押しつぶすようにしてひざを伸ばしきり、5秒キープ(急性炎症があり、ひざに水が溜まっている時は行なわない)
取材・文/池田道大 イラスト/タナカデザイン
※週刊ポスト2025年11月7日・14日号
