「あの人だけは嫌!」80代の母が訪問ヘルパーさんと相性が悪い・・・その理由とは?角を立てずに交代をお願いする方法等対策を専門家が指南
「高齢の親が訪問ヘルパーさんと合わない。交代をお願いしていいのだろうか…」。訪問介護を利用するご家庭で、実はとても多い悩みではないだろうか。ヘルパーさんと相性が合わない原因や対策、トラブルにならない上手な伝え方について、介護職員・ケアマネジャーの経験をもつ中谷ミホさんに教えてもらった。
この記事を執筆した専門家
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703
80代の母親が訪問ヘルパーさんを拒否「あの人だけは嫌…」
80代の母親と暮らす平川玲奈さん(仮名・57才・会社員)は、最近ある悩みを抱えています。週3回利用している訪問介護について、「〇曜日に来る人だけは絶対に嫌。家に入れたくない」と母親が頑なに拒否し始めたのです。
理由を聞いてみると、「サービス中ずっと話しかけてくるから疲れる」「自分のやり方と違う方法をすすめられるのがストレス」など、母親なりの不満があるようでした。もともと静かな環境を好む母親にとって、そのヘルパーさんとは相性が合わないようです。
平川さんは、「ヘルパーさんに悪気があるわけではないし相性の問題だと思う。でも、こんな理由で交代をお願いしていいのだろうか」「母のわがままではないか」と悩み、事業所やケアマネジャーに相談できずにいます。
※実例をもとにお名前や設定を一部変更しています。
ヘルパーさんの変更を申し出るべき?
訪問介護サービスを利用し始めると、平川さんのように、ヘルパーさんとの関係に悩む家族は少なくありません。訪問介護は、自宅に来てもらい、ヘルパーさんと一対一で関わるサービスです。そのため、お互いの相性によって「合う・合わない」が出やすいのは自然なことと言えます。「せっかく来てもらっているのに、交代をお願いするのは失礼では?」「親のわがままかもしれない」と遠慮してしまうかたもいるでしょう。
しかし、本来利用者はいつでも担当ヘルパーさんの変更を申し出ることができます。本記事では、ヘルパーさんとの相性に悩んだときの考え方や、角を立てずに交代を依頼するための具体的な「伝え方」について解説します。
ヘルパーさんと合わないと感じる理由
「なんとなく合わない」という感覚的なものも含め、以下のような状況がある場合は、ヘルパーさんの交代を検討する理由になります。
・コミュニケーションの問題
言葉遣いが馴れ馴れしすぎる、あるいは冷たい。こちらの話を聞いてくれない、威圧感があるなど。
・サービスの質
丁寧さに欠ける、希望したケアをしてくれない、専門性に不安がある、調理の味付けが合わないなど。
・時間管理
連絡なしに遅刻する、訪問時間を守らない。
・相性の問題
価値観や生活スタイルを理解してくれない。
・プライバシーの問題
プライベートなことを詮索してくるなど。
親の「拒否」はわがままではない
高齢者にとって、自宅で安心して介護サービスを受けられるかどうかは、生活の質に直結します。両親が「あの人は嫌だ」と訴えるのは、わがままではなく「安心してサービスを受けたい」という気持ちの表れです。
「合わない」と感じる人に介助されることがストレスになり、介護サービス自体を拒否するようになっては本末転倒になってしまいます。まずは「わがまま」と決めつけず、その気持ちを受け止めることが大切です。
ヘルパーさんの交代は遠慮せず早めの相談を
「交代をお願いするなんて失礼では」と遠慮するかたも多いかもしれませんが、利用者側が担当ヘルパーの変更を申し出ることは、契約上認められた正当な権利です。多くの訪問介護事業所では、重要事項説明書や契約書に「利用者はいつでもサービスの変更を申し出ることができる」といった旨が明記されています。
ヘルパーさんの交代を伝えることは、決して失礼なことではありません。「言い出しにくい」「我慢したほうがいいのでは」と感じるかもしれませんが、訪問介護サービスは、利用者とヘルパーさんとの信頼関係があってこそ、安心して利用できるもの。
信頼関係が築けないままサービスを利用し続けると、コミュニケーション不足から思わぬ事故やトラブルにつながるおそれも。安全にサービスを利用するためにも、気になることがあれば遠慮せず早めに相談することが大切です。
訪問介護事業所にとって、ヘルパーさんの調整は日常的な業務のひとつです。すべてのヘルパーさんが、すべての利用者と相性が合うとは、事業所側も考えていません。
「相性が合わない」といった相談があれば、事業所側は別のスタッフを調整したり、指導を行ったりして、柔軟に対応しています。「言いにくい」と遠慮せず、まずは相談してみましょう。
交代をお願いするときに大切なこと
いざヘルパーさんの交代を依頼しようと思っても、どう伝えれば角が立たないかと悩む人も多いでしょう。お互い嫌な思いをせずに相談するポイントと具体的な伝え方をご紹介します。
感情的にならず、事実を伝える
相談する際は、ヘルパーさん個人の人格を否定するような言い方は避けましょう。「あの人は性格が悪い」「態度が気に入らない」といった感情的な言い方をすると、単なるクレーマーと受け取られかねません。
「どうも相性が合わないようだ」「本人が緊張してしまうようだ」など、状況や事実をベースに伝えるのがポイントです。具体的に困っていることがあれば、それもあわせて伝えると、事業所側も対応しやすくなります。
本人に直接言わない
ヘルパーさん本人に直接「交代してほしい」と伝えるのは避けましょう。相手を傷つけるだけでなく、気まずい関係になり、その後のサービスに支障が出る可能性もあります。相談先は以下の通りです。
相談先は「サ責」か「ケアマネジャー」
相談する相手は、訪問介護事業所の「サービス提供責任者(サ責)」か、担当の「ケアマネジャー」です。
どちらに連絡しても問題ありませんが、事業所に直接言いにくい場合は、ケアマネジャーに相談して間に入ってもらうとスムーズです。
ヘルパーさんの交代を伝える具体例をシーン別に紹介
電話や面談で相談する際に使える、角を立てにくい伝え方をご紹介します。
パターンA:相性が合わないことをやんわり伝える
「いつも来ていただいている〇〇さん、一生懸命やってくださって感謝しているのですが、どうしても母との相性が合わないようでして…。母が気を使って疲れてしまっているようなので、もし可能であれば、別のかたにお願いすることはできないでしょうか」
パターンB:具体的な不満(おしゃべりが多い)がある場合
「サービス中の会話が少し多いようで、母が疲れてしまっています。静かに過ごしたいタイプなので、必要なこと以外はあまり話しかけないようなかたにお願いしたいのですが…」
パターンC:遅刻やマナーに問題がある場合
「〇〇さんが、連絡なしに訪問時間に遅れることが何度かありました。そのたびに母が不安になって私に電話をかけてくるので、時間を守っていただけるかたにお願いできないでしょうか…」
このように、「困っている事実」と「希望する対応」を伝えると、事業所側も状況を理解しやすく、次の提案につなげやすくなります。
ヘルパーさんの交代につて【まとめ】
「ヘルパーさんと相性が合わない」と感じたら、遠慮せずに相談して大丈夫です。我慢を続けることで、親御さんがサービス自体を拒否するようになったり、介護する家族の負担が増えたりしては本末転倒です。
もちろん、事業所の人員状況によっては、すぐに代わりのヘルパーさんが見つからない場合もあります。しかし、相談することで、曜日や時間帯を変更して調整したり、事業所内で指導を徹底してもらったりと、解決策が見つかることもあります。
冒頭でご紹介した平川さんも、思い切ってケアマネジャーに相談したところ、別の曜日の担当ヘルパーさんに変更してもらうことができました。「相談してよかった。母も安心してサービスを受けられるようになった」と話します。
お互いにとって良い関係を築くための相談だと考え、気になることがあれば、まずはサービス提供責任者やケアマネジャーに「ちょっと相談があるのですが」と声をかけてみてください。
