高齢者や介護中の人は《冬型栄養失調》にご用心!冬の低栄養予防に”スプーン1杯”加えたいおすすめ食材とは?【管理栄養士提案】
「最近は、夏バテならぬ冬バテの心配も。冬型栄養失調と呼ばれる症状に注意が必要です」とは、デイサービスに通う高齢者への栄養相談を行っている管理栄養士の川鍋仁美さん。寒い冬場のほうが実は夏よりエネルギーが必要なのだという。どんな対策をすればいいのか、川鍋さんに解説いただいた。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/
冬に注意したい栄養不足「冬型栄養失調」とは
寒さが厳しい時期になると、体調を崩しやすかったり・体重が減少してきたり…。もしかすると「冬型栄養失調」が原因かもしれません。冬になると私たちの身体は寒さに対抗して体温を維持するために、多くのエネルギーを消費します。年間を通して同じ量の食事量をとっていると実は冬の時期の方が栄養不足になりやすい状況にあるのです。
そこで今回は、冬の時期に気を付けたい「冬型栄養失調」の予防のためのポイントをお伝えします。
なぜ冬場に栄養が不足する?
生活環境によって個人差はありますが、冬のエネルギー消費量は、夏の時期よりも10%ほど増えるといわれています。
この消費量が増えた分をしっかりと補えないことで起こる栄養不足を「冬型栄養失調」と呼びます。
普段から活動量が多い元気な人は冬の時期は寒さで外出を控えることなどから活動量が低下すると体重は増加します。しかし、介護が必要なかたや、体力が落ちている高齢者の場合、季節を問わず室内で過ごす時間やベッドの上で安静にしている時間が長くなります。こうした普段から活動量が少ない人ほど、冬場は食事量の維持・UPを意識しなければ、栄養不足に陥りやすいので注意が必要です。
こんな症状があったら要注意!
高齢者が「冬型栄養失調」になると、体重が減少するケースが多く見られます。また、体重が減少していなくてもビタミンやミネラルなどの栄養素が不足していると、以下のような症状が現れることがあります。
いずれも病院を受診するほどではないちょっとした症状ではあるのですが、栄養不足のサインかもしれません。
栄養不足のサイン
・口内炎ができやすい、治りにくい
・傷が治りにくい
・なんとなく体がだるい
・疲れやすさを感じる
・肌が乾燥しやすくなった
・髪が以前よりも抜けやすくなった
・以前よりむくみやすくなった
冬型栄養失調の予防策【1】体重や体調の定期チェックを
「冬型栄養失調」を予防するには、まずは定期的に体重を把握することが大切です。
介護施設に定期的に通所されている場合は体重測定が行われているのでそちらで確認しましょう。ご自宅で介護を受けている方も通院の際などに最低1か月に1回は体重測定を行いましょう。
現在の体重が適正であるかは「BMI (Body Mass Index)」を用いて判定します。BMIは「体重(kg)」÷「身長(m)」÷「身長(m)」で求めることができます。
※例えば、身長160cm、体重55kgの方の場合、「BMIは21.5」となります。
[55kg]÷[1.6m]÷[1.6m]=21.5
65才以上の高齢者のBMIの適正範囲は「21.5~24.9」です。この範囲を上回ると肥満傾向、下回ると低栄養状態となります。
また、毎月体重を測定することで体重の増減がわかります。体重が減っている場合は体重の減少率を確認することも大切です。
1か月で体重が3%以上減少した場合は低栄養のリスクが中レベル、5%以上の場合は高レベルとされています。
3か月で7.5%以上、6か月で10%以上の体重減少の場合も低栄養状態の可能性が高いといえます。1か月の間に1kg前後の減少なら「誤差かな?」と思っても、3か月、6か月という長期間で見てみると、リスクが高い人も多く現れます。
「1kgの減少」でも、適正体重の人の場合と低体重の人の場合では大きく異なります。数kg減少しただけでも元々体重が少ない人にとっては減少率が高く、低栄養状態の場合もあるので注意深く見守りたいものです。
体重だけでなく、口内炎や傷の治りやすさなど、高齢者本人はあまり気にしていないことでも、介護者が普段の会話の中で確認することもできます。積極的にコミュニケーションを取って体調を確認してみましょう。
冬型栄養失調の予防策【2】日々の食事で工夫を
体重や体調のチェックのほか、食事面で注意したいポイントがあります。
食事量の維持のためには3食の食事が基本
1回の食事量が少ない場合、間食を加えて食事回数を増やして摂取量の維持に努めましょう。
これ以上食事を増やすのが難しいときは、普段の水分摂取を水やお茶から牛乳やココアなどに数回かえるだけでも栄養価のUPが期待できます。
「スプーン1杯」追加して栄養補給を
「アマニ油」を活用するのもおすすめです。スープやみそ汁、ヨーグルトにアマニ油をスプーン1杯ほど加えるだけで手軽に栄養を補えます。アマニ油は、日本人に不足しがちな「オメガ3系脂肪酸」を補うことができ、さまざまな健康効果が期待できます。便秘予防にもつながるといわれ、味にクセがないので色々な料理に使えます。
ビタミンB群を積極的に摂りましょう
冬の時期は体内では熱を作り出すためにビタミンB1やビタミンB6の消費量が増えます。特にビタミンB1は、糖質からエネルギーを作り出すときの代謝に必要な栄養素です。
そのほかにもB群にはB2、B12、葉酸(B9)などは、不足すると口内炎や抜け毛、皮膚のトラブルなどがおこりやすくなります。
身体に蓄えることができないビタミンなので、毎日の食事から継続して摂取する必要があります。積極的に以下の食品をとりいれると良いでしょう。
・ビタミンB群を豊富に含む食材/肉類、レバー、うなぎ、大豆製品(豆腐・納豆など)、玄米、卵 など
ビタミンCは旬の果物や汁物で
ビタミンCは抗酸化作用があり、ウイルスなどの感染症も流行する冬の時期には積極的とりたい栄養素です。コラーゲンの生成にも必要なビタミンなので皮膚トラブルの改善にも不可欠です。
ビタミンCは果物や野菜に豊富に含まれていますが、加熱調理によって失われやすいので旬の果物を生食するか、加熱して食べる場合は、調理法にひと工夫を。溶け出してしまう栄養もしっかりと摂れるスープなど汁物がいいでしょう。
また野菜の中でも、ジャガイモやさつまいもなどの芋類なら、加熱によるビタミンCの損失が比較的少ないのでおすすめの食材です。
・ビタミンCを豊富に含む食材/果物、野菜(パプリカ、ピーマン、キャベツ、じゃがいも、さつまいもなど)
水分もしっかり摂取しましょう
冬の時期に積極的にとりたい栄養素に加えて、忘れてはいけないのが「水分」です。
冬はのどの渇きを感じにくく水分摂取を忘れがちに。わかっていても夏ほど汗をかかないので、トイレの回数が増えるのであえて飲まないようにしているかたもいらっしゃるかもしれません。
実際には暖房等で空気は乾燥していて、水分の必要量は増しています。高齢者は体の水分調節機能が弱っていて、体内の水分量も減少しています。のどの渇きを感じにくいため、冬の時期こそ意識して水分摂取回数を増やす必要があります。
1日に8回以上の水分摂取するのが望ましいです。起床時・間食時・食後・入浴の前後・就寝前などタイミングを決めておくとよいでしょう。
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栄養の消費量が高まる冬の時期はいつも以上にいろいろな食材を取り入れながら、食事量を維持することが大切です。バランスのとれた食事と十分な水分で、健康的な体重を維持しながら元気に寒い時期を乗り越えましょう。
