4月から新たに運用が開始される「介護情報基盤」とは?介護情報のデジタル化で何が変わる?どう便利になる?【社会福祉士解説】
4月から介護の情報に関してウェブ上で管理・運用できる「介護情報基盤」がスタートする。紙の保険証が廃止されるなど様々なもののデジタル運用が進む中、介護情報のデジタル化も進められているのだ。高齢者や介護が必要な人、介護現場で働く人にとって、何が便利になるのか、どう変わるのか?社会福祉士の渋澤和世さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
介護の情報もデジタル化へ
2025年12月、健康保険組合などが発行する紙の健康保険証の有効期限が切れ、マイナ保険証か資格確認書に移行されたのは記憶に新しいところです。
それに続くかのように、現在、紙で発行されている介護保険証や負担割合証についても、マイナンバーカードへの統合が検討されています。
これは、単なるペーパーレスだけを目指したものではありません。介護の情報というのは、長い間、国や自治体、事業所などに分散して管理されていました。
介護給付費の請求などに利用する「介護レセプト情報」や「要介護認定情報」、「ケアプラン」「主治医意見書」などが、様々なルートでやり取りされるため、必要な情報を取りまとめる際、古い誤った情報を届けてしまうこともありました。
厚生労働省はこのような課題を解決するため、紙やFAX、電話などで行われていた情報のやり取りをデジタル化し、介護事業者と利用者、自治体関係者が、統一された情報をいつでも速やかに参照できる「介護情報基盤」を構築し、その活用がいよいよ開始されることになったというわけです。
この介護情報基盤について、改めて確認していきましょう。
「介護情報基盤」とは?
介護情報基盤とは、介護に関する情報等を関係機関(市町村・利用者・介護事業者・医療機関等)が電子的に閲覧するための基盤となる情報のことです。
介護サービスの利用状況や健康に関する情報等を共有することで、介護に関わる人たちのやりとりや手続きをより良いものにする仕組みともいえます。
介護に関するさまざまな情報がデジタル化・一元管理されるため、業務効率化や多職種連携の強化、データに基づく質の高いケア提供が可能になります。
介護情報基盤は、「介護情報基盤ポータル」サイトが入り口となります。実はすでに2025年8月から介護情報基盤ポータルサイトが開設されていて、現在は各種情報発信のほか、以下の機能が備わっています。
介護情報基盤ポータルでできること
・マイページ情報:ユーザの情報や各種申請情報を確認
・市町村対応状況:各市町村の対応状況を随時更新
・助成金申請:導入に関する助成金がオンラインで申請可能
・問い合わせ:チャット、フォーム、電話でも可能
この介護情報基盤は、2026年4月から2028年4月1日までの2年の間に準備の整った自治体から運用が開始されます。
※「介護情報基盤ポータル」市町村(保険者)の対応状況
https://www.kaigo-kiban-portal.jp/notice/detail/documentId/k8lorl3sbdofpbyahyh2z4e4
デジタル化の活用には課題点も?
筆者の個人的な感想ですが、介護情報基盤は取り込む情報が多いが故に便利な反面、この仕組みを理解し活用することがすぐには難しいのではと感じています。
ケアマネジャーや介護職員は、どちらかというとアナログな対応が多かったので、デジタルは不慣れかもしれません。利用者側も高齢者となるとシステム操作が困難でサポート体制の強化も課題になりそうです。
見切り発車するよりは、対応できる人材の育成などをしながら、時間をかけて焦らずに準備を進めるパターンがよいのではないか、人口規模が大きい自治体ほど開始には慎重にならざるを得ないのではないかと考えます。
「介護情報基盤」の活用イメージと想定されるメリット
介護情報基盤はどのような活用が想定されているのでしょうか。
利用者・家族
・関係者間での要介護認定に必要な書類等のやりとりがスムーズになり、要介護認定に要する期間が短縮される。
・サービス利用時における複数の証の提示が簡素化されることで、複数の証を管理・提示する負担が軽減される。
・自身の介護情報を確認できるため、主体的な介護サービスの選択等につながるとともに、事業所間や多職種間の連携が強化され、本人の状態に合った適切なケアの提供が可能となるなど、介護サービスの質の向上が期待できる。
保険者(市区町村などの自治体)
・要介護認定申請の進捗状況や、ケアプラン作成等に必要な要介護認定情報について、ケアマネジャーがウェブサービス画面上で随時確認が可能となります。
そのため、市町村への電話や窓口での進捗状況の確認への対応や、ケアプラン作成等に必要な要介護認定情報の窓口・郵送での提供が不要となり、業務負担の軽減や印刷・郵送コストの削減が可能となる。
・主治医意見書について、医療機関から電子的に送付され、介護保険事務システムで取得可能となるため、要介護認定事務の迅速化や文書管理コストの削減が可能となる。
介護事業所・ケアマネジャー
・要介護認定申請の進捗状況について、ケアマネジャーがWEBサービス画面上で随時確認可能となるため、市町村への電話等での問い合わせが不要となり、業務の効率化につながる。
・ケアプラン作成に必要な要介護認定情報をケアマネジャーがWEBサービス画面上で随時確認可能となるため、情報提供を市町村へ依頼する手続きや市町村窓口・郵送での受取が不要となり、迅速なケアプランの作成が可能となる。
・電子による資格情報の確認が可能となることで、サービス提供時の証の確認等にかかる業務負担が軽減される。
・介護情報基盤を活用することで、利用者の情報を事業所間や多職種間で共有・活用しやすくなり、本人の状態に合った適切なケアの提供が可能となるなど、提供する介護サービスの質の向上が期待できる。
※介護情報基盤の概要「介護事業所のみなさまへ」
https://www.kaigo-kiban-portal.jp/assets/pdf/kaigo_kaigokiban_gaiyou.pdf
医療機関
・主治医意見書について、市町村への電子的提出が可能となることで、郵送が不要となり、業務負担が軽減される。また、過去の主治医意見書の閲覧が可能となる。
・ケアプランやLIFE※等の情報の活用により、利用者の生活に関する情報や必要な医学的管理の情報の把握が可能となる。
※LIFE/介護サービス利用者の状態や、介護施設・事業所で行っているケアの計画・内容などを一定の様式で入力すると、インターネットを通じて厚生労働省へ送信され、入力内容が分析されて、当該施設等にフィードバックされる情報システム。
※参考/厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1405」
https://www.kaigo-kiban-portal.jp/notice/detail/documentId/k8lorl3sbdofpbyahyh2z4e4
「介護情報基盤」によって何が変わる?【まとめ】
介護情報基盤のスタートにより、要介護認定情報やケアプラン、サービス利用状況などが電子的に集約されることで本人や家族が必要な情報を簡単に確認できるようになります。
訪問介護やデイケア、デイサービスなどの通所事業所とのマッチングも可能になるため、希望を考慮したサービス選択もできるようになると思います。
今後、益々高齢者数も増え、反対に介護に従事する人材確保が厳しくなります。少しでも、私たちが介護サービスを円滑に利用できるようになることを願うばかりです。
