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暮らし

ケアラーの悲しき性?母の施設入居後、祖父母の心配も…「病院嫌いのじいちゃん」老々介護の困った問題に社会福祉士がアドバイス

 高次脳機能障害の母のケアを幼い頃から続けてきたヤングケアラーのたろべえさんこと高橋唯さん。母は施設で暮らすようになり「ケアは一段落」と思ったのも束の間、近くに住む祖父母についての心配ごとが浮上し――。

執筆/たろべえ(高橋唯)さん

「たろべえ」の名で、ケアラーとしての体験をもとにブログやSNSなどで情報を発信。本名は高橋唯(高ははしごだか)。1997年、障害のある両親のもとに生まれ、家族3人暮らし。ヤングケアラーに関する講演や活動も積極的に行うほか、著書『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『ヤングケアラー わたしの語り――子どもや若者が経験した家族のケア・介護』(生活書院)などで執筆。 https://ameblo.jp/tarobee1515/

「じいちゃんが弱ってきた」と祖母

 障害のある母が施設で暮らし始め、母のケアがない生活も5か月になろうとしている。しかしながら、ケアラーの悲しき性かな、最近では近くで暮らしている祖父母の心配をしながら過ごしている。

 昨年12月中旬、祖母が「マイナンバーカードの更新に行かなくてはならないが、書類の字が小さくて読めないし難しいことは何もわからない」と言うので、手続きに付き添ってきた。

 その帰り道、祖母が何気なく「そういえば、じいちゃんがいよいよ弱ってきたみたいでよ、ご飯も食べないし、風呂も入らないんだわ」と話し始めた。

 祖母と一緒に住んでいる祖父は、元々、まったく活動的ではなく、1日の大半をベッドで横になって過ごしていた。それでも自分の身の回りのことは自分でそれなりにこなしていたのだが、最近はほとんど祖母が面倒を見ているようだ。

 ああ、ついに来たか…。正直なところ、以前から高齢の祖父母の暮らしがいつまで変わらず続けられるものなのか、気にはなっていた。とはいえ、筆者も20年以上続いた母のケアから離れて暮らすようになったところだったので、あまり深くは考えないようにしていた。

祖母に伝え続けた「ケアラーの心得」

 ひとまず、祖母が限界を迎える前に、孫である筆者に話してみようと思えたこと自体は大変素晴らしい。まあ、これもひとえに、筆者による「ケアラー英才教育」の賜物だと思う。

 というのも、筆者は以前から、祖母に「自分が元気なうちに、早く祖父の要介護認定を申請したり、使えるサービスを教えてもらったりしたほうがいい」と伝えながら、役場の高齢福祉課や地域包括支援センターの場所を繰り返し伝え続けていたからだ。

 本当は、筆者が手伝わなくても、祖母が自分で相談に行ってくれることを目論んでいたのだが、さすがにそれはハードルが高かったようで、結局、祖母と一緒に祖父の要介護認定申請に行くことになった。

 やっぱり、ケアラーは一度その立場になると、なかなかケアから離れるのが難しいと思う。もちろん、自ら望んで家族のケアを引き受ける人もいるとは思うが、家族の中に他にケアを担える人がいなかったら、おのずと1番健康で余力がある人が引き受けざるを得ない。

病院に行きたがらない祖父の困った問題

 祖母の負担を考えると、すぐにでも介護保険サービスを使えるようにしてあげたい。ところが、ひとつ問題があった。

 介護保険サービスを利用するためには、要介護認定を受ける必要があるが、そのためにはかかりつけ医に「主治医意見書」を書いてもらわなくてはならない。

 しかしながら、祖父は大の病院嫌いだ。一応、かなり前に総合病院で前立腺肥大の手術をしたことがあり、今も泌尿器科の定期検診だけはなんとか通っているものの、その手術のせいで介護が必要な状態となっているわけではないため、泌尿器科の医師に意見書を書いてもらうことはできないらしい。

 そうなると、新たに意見書を書いてもらえる病院を受診しなくてはならないのだが、穏便な手段で祖父を病院に連れて行くのは不可能に近い。

 筆者からも「ご飯を食べていなくて心配だから、ちょっと点滴とかしてもらって帰ってくるのはどうかな?」と話しかけるなどしてみたものの、祖父は機嫌を損ねて布団の中に潜ったまま出てこなくなってしまった。

 どうすればいいか、最寄りの地域包括支援センターに相談してみたところ、往診対応をしている病院と連絡を取ってくれたが、やはり初診時は病院まで行かなくてはいけないらしい。

 職員さんも困り果て、「なんとかして本人を車に乗せるのは難しいですか?」と聞いてくる。力づくで乗せられないこともないだろうけれど、抵抗されて怪我をさせては困るし、本人の「病院に行きたくない」という意思を尊重しないのもどうなのかな、という気持ちも少しある。

 個人的には、祖父本人に治療の意思がないのなら、年を取って身体が弱ることは自然なこととして受け入れてもいいと思っているが、そうなると祖母の介護負担を減らすことができず、ジレンマを感じている。

介護保険サービスを利用するまでの道のりは険しい

 介護負担を減らすために介護保険サービスを利用したいのに、利用するまでがまたひとつ大きな負担となっている。もうこうなったら、祖父が弱り切って抵抗できなくなって病院に連れて行けるようになるまで、祖母が介護を続けるしかないのだろうかとさえ思う。

 こうした状況についての対処法について、社会福祉士の渋澤和世さんは、以下のように話す。

「主治医意見書は、かかりつけ医など診療歴のある医師に依頼するのが一般的です。おじいさまの場合、泌尿器科の定期検診には行かれているとのことなので、『必要ならば受けてやってもいい』くらいのお気持ちはありそうなので、通い慣れた病院で引き受けてくれたら良いのですが。主治医意見書については、医師の方針や、介護認定と直接関係のない科などの場合には、断られるケースもあるようです。

 また、受診自体を拒否されるかたの場合、市区町村の介護保険担当窓口に相談して、医師の診断命令書(受診の指示)を発行してもらい、指定された医師に主治医意見書を依頼する方法もあります。自治体からの命令であることをご本人に自覚していただき、病院に行ってもらうことを促すのです。

 どうしても病院に出向くのが難しい場合、初診であっても往診してくれる医師、在宅医療に積極的なクリニックを辛抱強く探す方法もあると思います」(渋澤さん)

 祖父の介護の始まりに直面した今、ニュースで老々介護の末の悲しい事件が報道されると、「介護保険サービスに頼ればよかったのに」という声が聞かれるが、ひょっとして頼りたくてもそこまでたどり着けない人もいるのかもしれないと思うようになった。

 今年もケアラーとしての悩みは尽きなさそうだ。

***

 様々な事情から介護サービスにたどりつけない“介護難民”も社会問題ではありますが、介護に直面したらまずは「困っている」という声を上げることが第一歩となります。

 ご本人が介護に抵抗を感じるようであれば、シルバー人材センターや社会福祉協議会のボランディアなどを利用してサポートに慣れてもらってから、本格的な介護サービスの利用を検討していくというやり方もあります。

 地域包括センターや市区町村の介護保険担当の窓口、社会福祉協議会、病院のソーシャルワーカーなど、相談できるところをフル活用して、ご本人と家族の負担を減らせるサービスの活用ができるようになることを願っています」(渋澤さん)

ヤングケアラーに関する基本情報

言葉の意味や相談窓口はこちら!

■ヤングケアラーとは

 ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている子どものこと。近年は子どもから大人になってもケアが続くこともあるため、18才~おおむね30才までをヤングケアラーと呼んでいる。

■ヤングケアラーの定義

『ヤングケアラープロジェクト』(日本ケアラー連盟)では、以下のような人をヤングケアラーとしている。

・障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
・家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
・障がいや病気のきょうだいの世話や見守りをしている
・目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている
・日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
・家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
・アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している
・がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
・障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている
・障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている

■相談窓口

・こども家庭庁「ヤングケアラー相談窓口検索」
https://kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/consultation/

・児童相談所の無料電話:0120-189-783
https://www.mhlw.go.jp/young-carer/

・文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」:0120-0-78310
https://www.mext.go.jp/ijime/detail/dial.htm

・法務省「子供の人権110番」:0120-007-110
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html

・東京都ヤングアラー相談支援等補助事業 LINEで相談ができる「けあバナ」
運営:一般社団法人ケアラーワークス
https://lin.ee/C5zlydz

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