多様化するデイサービス「猫カフェ風、農業体験、買い物リハビリ」特長やメリットを社会福祉士が解説
介護がはじまるとまず検討したいのが介護保険で通える「デイサービス」(通所介護)だ。働きながら親の介護を続けてきた社会福祉士の渋澤和世さんが、自身の介護生活を振り返りながら、最新のデイサービス事情についてリサーチ。多様化するデイサービスの内容について解説いただいた。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
デイサービスは多様化している
介護保険で利用できるサービスの中に、「居宅サービス」があります。これは自宅で生活を続けながら、必要な介護や支援を受けられるサービスのことで、大きくは、自宅に専門スタッフが来てくれる「訪問」と、自分が施設に通うデイサービスなどの「通所」によるものがあります。
筆者は、平日は働きながら在宅介護を続けていたので日中は家にいません。ましてや実家ではなく自宅に親を呼び寄せていたので、自分の不在時に自宅に他人が入ることに、抵抗がありました。そうした事情から、親の介護中には通所サービスを利用していました。
今から10年以上前の話になりますが、筆者の親が利用していたデイサービスは、食事や入浴、排泄などの介助のほか、ゲーム、歌、体操などのレクリエーション活動、健康チェックが主流でした。
近年はデイサービスがかなり進化しています。ユニークな取り組みも増えていて、「あの頃、こんなデイサービスが近くにあったらよかったな」と切に感じます。利用者一人ひとりの「こんなことがしたい」というニーズを叶えるサービスもあります。
進化したデイサービス/種類別の特長やメリット
デイサービスでは、利用者が可能な限り自宅で暮らしながら、自身の能力を活かした日常生活を営めるように、必要なケアや機能訓練などを受けることができます。自宅に引きこもりがちになる利用者の社会的孤立を解消するとともに、介護を行う家族の身体的精神的負担も軽減されます。
筆者がリサーチした情報をもとに、魅力的なデイサービスを種類別にカテゴライズしてみました。タイプや種類別の特長やメリットを確認していきましょう。
【1】集まりや活動に加わる「参加型」
あらかじめ決めているプログラムをスケジュール通りに行って1日が終わる、デイサービスの基本系ともいえます。”やらされている感”が漂う受け身の内容だと、行きたくないと言い出したり、仮病を使って休んだりするようになるケースもあるようです。喜んで行ってもらうには、興味のあるものや自分が役立っていると思えるやりがい、楽しみを見つけられることが大切です。
・仕事/仕事をした報酬として施設内で使える通貨を受け取れる
施設内や地域の企業から依頼の簡易作業に取り組み、施設内で使える通貨を報酬として受けとる。通貨はトイレットペーパー、箱ティッシュなどの生活用品と交換できる。
・娯楽(麻雀、将棋、パチンコなど)/ 楽しんでゲームに参加できる
一般のデイサービスでは提供していない麻雀、囲碁・将棋、パチンコなどの機材が揃っている。施設内で使える通貨を使いカジノが楽しめるところもある。
・趣味、特技(音楽、絵画など)/自分の興味関心がある分野の活動ができる
合唱や楽器演奏、絵画、陶芸、手芸などの創作活動に取り組んでいる。スクール的な要素も含んでいるためカルチャーセンターに通うまでもないけど、という方々に人気がある。達成感や話の合う仲間もできやすい。
【2】結果が見える「成果型」
デイサービスで活動した結果、何かが変わったとか、完成したとか、活動の成果が見えると意欲が増します。仲間と一緒に活動することで、モチベーションも維持しやすいともいえます。
・リハビリ特化/体力維持しつつフィットネス感覚で通える
歩行距離や速度が改善するなど、身体で感じる変化や数字に表れると生活にも影響する。
・料理/皆で手を動かしながら調理して食べる楽しさもある。
皆で調理し、完成した料理を一緒に食べる楽しさは格別。一人暮らしのかたは一食分になるので経済的でもある。
・農業、園芸/畑仕事やガーデニングを通じ、育てる喜びと収穫を楽しめる
土に触れ、作物を育てる喜びを感じられる。花は観賞用として、野菜は料理にも使えるなど一石二鳥。
【3】自己決定ができる「自由型」
やりたくないのに体操や歌を他人に合わせてやらされるのは誰でもテンションは下がるもの。些細なことでも自分で選択できることがポイントです。
・メニュー選択制/レクリエーションやランチなど数種類から自分で選べる
レクリエーションであれば、習字かちぎり絵、音楽か体操、ランチであれば和食や洋食、御飯か麺など制限は多少あるが自分で選択できる。
・自由なリハビリ/ 時間やメニュー計画を個別に行える
理学療法士や作業療法士が常駐し、リハビリ計画を一緒に考え作成してくれる施設も多い。
【4】ワクワクを感じる「外出型」
一人で外出するには不安がある、という高齢者は多いもの。近所であってもリフレッシュや刺激になります。
・銭湯/天然温泉や香り湯、マッサージチェアが完備され癒しの時間を過ごせる
高齢者はお湯に浸かる機会は少なくなるもの、湯につかりマッサージチェアで一休み。温泉気分も味わえる。
・カフェ風/カフェの雰囲気とメニューを実現し自由な時間を過ごす
ハーブティや本格的なコーヒーなども揃っている。お気に入りのカフェに行く感覚で過ごせ人との交流もできる。猫カフェ風のデイサービスも注目を集めている。
・ショッピング/買い物や外食など、できそうでできない生活を補う
重たい荷物を運ぶのは大変になる、帰宅時に購入品も家まで届けてもらえるため安心。また自分では選ばないような飲食店に行けるかもという楽しみもある。
異業種からの参入にも注目
最近では、異業種から介護業界に参入する動きも加速しています。ドラッグストアを展開するウェルシアや総合スーパー大手のイオンリテールなどもデイサービス事業を展開しています。中でも昨今、出展を加速させているのが、イオンリテールが展開する半日型リハビリデイサービス「イオンスマイル」です。こちらは、買い物リハビリを取り入れているのがユニークです。
→小売業のノウハウ活かし地域貢献「買い物もリハビリに」北陸3県に「イオンスマイル」デイサービスを初出店
買い物によるリハビリは、ショッピングが好きな女性のニーズを満たすのではないでしょうか。また、運動リハビリもスポーツジム感覚で活用できそうです。デイサービスに抵抗を感じる人でも、イオンに買い物や運動をしに行くのであれば、参加しやすい。体力維持や自立のため」という目的意識のある男性にも支持されそうです。
筆者は買い物も運動も好きなので、自分だったらここに参加したいと感じました。
今後も自社の強みを活かし介護業界に進出する企業が増えることが予想されます。事業者側もデイサービスのプログラムを提供するにあたり、どのようなサービスにするのか、利用者のニーズを細かく分析する必要があるでしょう。
立地だけで選ばずプログラムの中身で選ぼう
デイサービスは多様化が進んでいます。本記事を参考に自分にぴったりのデイサービスを探してみてはいかがでしょうか。なお、デイサービスは、送迎対応などの都合で「近所だから」という理由で選んでしまいがちですが、「このプログラムに参加したい」など明確な目的があったほうが積極的に通ってもらいやすくなると思います。気に入ったプログラムがある場合は、施設に問い合わせて見学をしてみるのがおすすめです。
