《生活支援コーディネーターとは?》高齢者や地域の暮らしを支える存在「どんな役割なの?」「つながるには?」社会福祉士が解説
「ゴミ出しが億劫になってきた」「買い物に行くのがしんどい」。そんな高齢者や地域の困りごとに対し、活動を行っているのが「生活支援コーディネーター」だ。実際にどんな活動をしているのか、何を頼めるのか、具体的な事例をもとに、社会福祉士の渋澤和世さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
渋澤和世さん/在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
生活支援コーディネーターとは?
「生活支援コーディネーター」という職種を耳にしたことはありますか?
生活支援コーディネーターは、高齢者の生活をサポートする存在なのですが、ケアマネジャーや生活相談員との違いや、そもそも何をしている人なのか知らないかたも多いのではないでしょうか。まだまだ認知度の低い生活支援コーディネーターについて、その役割や仕事内容、必要な資格などについて解説していきます。
平成27年の介護保険法改正により、生活支援体制整備事業という新たな事業が創られました。これは、高齢者などがいつまでも住み慣れた地域での暮らしを続けられるよう、「ゴミ出しを手伝ってほしい」「庭の手入れが行き届かない」といった、行政だけのサービスでは解決できない困りごとについて、地域住民が相互に支え合う仕組みづくりを整備する事業のことです。この事業に関わるのが、生活支援コーディネーターです。
役割は3つの層に大別されている
生活支援コーディネーターは、「地域支えあい推進員」とも呼ばれ、この事業を推進するために設置された職種ともいえます。その活動は主に以下の3層の領域に大別され、果たす役割もそれぞれ異なります。
【第1層】市町村全域
【第2層】日常生活圏域(中学校区域等)
第1層・第2層のコーディネーターには以下の役割が期待されています。
・生活支援の担い手の養成やサービスの開発等の資源開発
・関係者のネットワーク化の推進
・地域の支援ニーズとサービス提供主体(民間企業・団体等・NPO等)のマッチング等
【第3層】サービス提供主体(民間企業・団体等・NPO等)
第3層は、サービス提供主体(民間企業・団体等・NPO等)に置かれ、利用者と提供者のマッチング(利用者へのサービス提供内容の調整)という役割に特化され、生活支援コーディネーターの本来の役割よりも一歩進んだものとなります。
生活支援コーディネーターは、高齢になっても住み慣れた地域で、自分らしく暮らすための支援や活動を行います。具体的には、地域にある様々な福祉資源の調査や高齢者の生活課題(困りごと)の把握、サービスの開発やその担い手の発掘・育成・支援、ネットワークづくり、ニーズと取り組みのマッチングなどを行っています。
参考: 厚生労働省「生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)に係る中央研修テキスト」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000084710.html
具体的な活動は? 成果はでている?
生活支援コーディネーターの役割や活動内容について、リサーチしてみました。具体例を見ていきましょう。
【ケース1】高齢者に働く場を支援
調理師の免許を持ち中華料理店に働いているAさん。立ち仕事が長時間難しいため店を辞めることにしました。料理は得意なので他で何かできることはないかと思っていました。
長時間ではなく、無理なく働ける範囲でAさんの得意な料理で活躍できる場はないだろうかと考えた生活支援コーディネーターは、地域カフェを運営しているNPO法人を紹介。Aさんは、調理ボランティアとして週2回、協力することになりました。
生活支援コーディネーターは、Aさんに何ができるかを考え、無理ない範囲で活躍できる場を選ぶなど、きめ細かくその人に合わせた支援を行いました。
【ケース2】地域の助け合いサロンを立ち上げた
住民の日常生活の困りごとを聞いてみると、「買い物、ゴミ出しに困っている」「外出が億劫になり、家にばかりいる」といった問題があり、解決方法を検討した結果、地域に気軽に寄れる助け合いのサロンを立ち上げることになりました。
生活支援コーディネーターは回覧板、掲示板でボランティアを募集。住民同士の交流を活性化し、参加を広げる活動もしていきます。
【ケース3】買い物が困難な地域で集いの場を設置
坂が多く高齢化も進んでいるある地域で、高齢者は坂を歩いて買い物に行くのが大変という声が多くありました。生活支援コーディネーターが地域をまわったところ、移動スーパーを展開したいというスーパーを発見。サービス付き高齢者住宅の駐車場を一時的に使わせてもらえることとなり、移動販売車が週2回来ることが決まりました。
この情報を地域に広く認知し、多くのかたが身近に買い物を楽しむとともに、新たな地域の集いの場になっています。
生活支援コーディネーターになるには?資格は必要?
厚労省の資料によると、生活支援コーディネーターの資格・要件について、以下の通り記されています。
地域における助け合いや生活支援・介護予防サービスの提供実績のある者、または中間支援を行う団体等であって、地域でコーディネート機能を適切に担うことができる者。
※特定の資格要件は定めないが、市民活動への理解があり、多様な理念をもつ地域のサービス提供主体と連絡調整できる立場の者であって、国や都道府県が実施する研修を修了した者が望ましい。
※コーディネーターが属する組織の活動の枠組みを超えた視点、地域の公益的活動の視点、公平中立な視点を有することが適当。
このように、法律で定められた必須の資格はありませんが、生活支援コーディネーターが働く場所は、主に地域包括支援センターや社会福祉協議会、地域に密着した介護事業所が多いようです。
第1層の生活支援コーディネーターは、市役所や役場の福祉関連部署に配置されることが多くあります。地域のボランティア活動や市民活動を経験され、諸機関との調整などが得意であれば自治体の会計年度職員や自治体の取り組みとしての募集があるかを探すのも一手です。
また、第2層の生活支援コーディネーターは、支援計画作成などの専門職としての仕事も兼務するため、保健師、看護師、介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士などの医療介護・福祉系の資格があるほうが採用時には有利になりそうです。
いずれの場合も、興味があるかたは生活支援コーディネーター向けの研修を自治体が開催していれば、参加してみるのも一つの方法です。「生活支援コーディネーター 研修」で検索してみましょう。
東京都/東京都社会福祉協議会「生活支援コーディネーター研修」
https://www.tcsw.tvac.or.jp/lsc-kensyuu/
神奈川県/社会福祉法人 神奈川県社会福祉協議会「生活支援コーディネーター研修等事業」
https://www.knsyk.jp/service/coordinator-kenshu
生活支援コーディネーターとつながるには?
生活支援コーディネーターは、地域住民の生活上の心配や困りごとに関わっています。超高齢化社会において、地域と住民をつなぐ橋渡しとしてなくてはならない存在ともいえます。
配属先は各自治体によって異なりますが、お住いのや「地域包括支援センター」や「社会福祉協議会」に問い合わせをすれば、紹介してもらうことができます。個人の困りごとや不安にも寄り添ってくれるので「こんなこと言ったら迷惑と思われそう」などと躊躇せず、ぜひ相談をしてみてください。